【ウイスキー入門】海と“霧の島”が生み育んだ、「タリスカー10年」の魅力と歴史

  • 写真:小野田 忍
  • 文:西田嘉孝
Share:

スコットランドのインナーへブリディズ諸島最北にして最大の島であるスカイ島。別名ミストアイランド(霧の島)とも呼ばれ、厳しくも美しい自然環境に恵まれた島はスコットランド随一の観光地としても有名だ。そんなスカイ島で、長年にわたり育まれてきた名酒が「タリスカー」だ。 

島の西岸にマッカスキル兄弟が蒸留所を創業したのは1830年のこと。当時、島にはいくつかの蒸留所があったが相次いで閉鎖され、19世紀後半にはタリスカーがスカイ島唯一の蒸留所となった(現在は2つ)。この頃、蒸留所を引き継いだのがアレクサンダー・グレゴリー・アランとロデリック・ケンプで、彼らの手によって現在のタリスカーの味わいに繋がる礎が築かれていく。

長くジョニーウォーカーの原酒として知られてきたタリスカーが、シングルモルトとして脚光を浴びたのは20世紀後半のこと。契機となったのが、その後に蒸留所を所有したユナイテッド・ディスティラリー社(UD社、後のディアジオ社)のクラシックモルトのひとつとして、1988年に発売された「タリスカー10年」だ。

クラシックモルトとは、UD社が所有する蒸留所からスコッチの各生産地域を代表する6蒸留所を選び、それぞれのシングルモルトを発売するという当時としては画期的なシリーズ。世界的なシングルモルトブームの火付け役となった同シリーズにおいて、アイランズを代表する一本としてリリースされたことで、タリスカーの実力は広く知られることとなった。

5338547_BD_Talisker_Distillery Images_1533.jpg
奥に見えるふたつが初留釜。蒸気が通るU字型のラインアームによって多くの環流(気化した成分が液体になれず戻ること)が起こり、軽やかなフレーバーが生まれる。
5515092_Talisker_0833 (1).jpg
現代では珍しくなったワームタブ方式のコンデンサ(凝縮器)。水を張った桶の中に通した蛇管でアルコール蒸気を冷やし、液体へと戻す仕組みだ。

「タリスカー10年」は、現在も変わらずディアジオ社のクラシックモルトのひとつとしてリリースされる。ボトルに刻まれる“made by sea”の文字の通り、その特徴はなんといっても海を思わせるフレーバー。舌を刺激する黒胡椒のようなスパイシーさが象徴的なパワフルな味わいの中には、柑橘などのフルーティな香味も感じられる。

伝統的な木桶での長めの発酵やピーテッド麦芽の使用に加え、初留釜から伸びるラインアームがU字型になっているのも大きな特徴。スピリッツの回収時により多くの環流が生まれ、銅との接触が増えることで軽やかな酒質となる。一方で、アルコール蒸気を液体に戻す役目をする冷却には、ヘビーなタイプの酒質を生むワームタブを使用。これらの相反する手法でのウイスキーづくりも、アランとケンプの時代から受け継がれるものだ。

テイスティングノート

whisky_TALISKER10_tasting-note.jpg

細かく刻んだ45.8%というアルコール度数でのボトリングも、タリスカーのこだわり。黒胡椒などのスパイスと芳醇なフルーツ、そしてスモーキーさが相まったその味わいは、肉料理との相性がよく、海辺のバーベキューなどの“おとも”にも最適だ。

そんな「タリスカー10年」に黒胡椒を振って仕上げる“スパイシーハイボール”が、日本ではスモーキーなウイスキー好きたちの定番に。ストレートやロックで味わった後は、ぜひそちらもお試しあれ。

タリスカー

https://talisker-online.jp



Photograph by

小野田 忍

1984年生まれ、愛知県出身。名古屋ファション専門学校を卒業した後、東京を拠点にスタイリストとして活動。2010年にフォトグラファーに転向し、現在は合同会社 丗(SANJU)にて、ファッション、広告撮影を中心に活動中。
Instagram:@shinobu_onoda

連載「ウイスキーの肖像」

 

西田嘉孝

ウイスキージャーナリスト

ウイスキー専門誌『Whisky Galore』 やPenをはじめとするライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。

西田嘉孝

ウイスキージャーナリスト

ウイスキー専門誌『Whisky Galore』 やPenをはじめとするライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。