【ウイスキー入門】グレングラント12年の魅力とは。フルーティで華やかな味わいを生んだ蒸留所の歴史

  • 写真:小野田 忍
  • 文:西田嘉孝
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スペイサイドエリアのローゼスの町で、1840年に創業したグレングラント。法律家であり政治家でもあった兄・ジェームスと、穀物商だった弟・ジョンのグラント兄弟が創業した蒸留所だ。ジェームスはスペイサイドでの鉄道開通にも貢献し、ウイスキーの大量輸送や地域の蒸留所建設に大きな影響を与えた人物。一方のジョンはほかの蒸留所で修行するなど、技術者としてグレングラントのウイスキーづくりを支えた。

そんな兄弟から1873年に蒸留所を引き継ぎ発展させたのが、ジェームスと同じ名の息子、通称“メジャー・グラント”だ。彼の時代に導入された設備や理念が、現在のグレングラントの味わいのベースとなっている。

メジャーが目指したのは、当時のハイランド地方(スコットランド北部)の多くの蒸溜所でつくられていた、ピーティでヘビーなタイプとは一線を画す、フルーティで華やかな味わいのウイスキー。そうした香味を実現するため、ユニークな形状の細長いポットスチルを自ら考案。さらには、すべてのスチルに精留器を取り付けるという画期的なアイデアで、現在のグレングラントに通じる軽やかでエレガントな酒質を実現した。

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その名が蒸溜所名にもなっているグラント兄弟。兄ジェームスと弟ジョンは地元の名士として地域の人々に広く知られ、兄弟の姿はかつて製品のラベルにも描かれた。
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エレガントな酒質やフルーティさが際立つ風味を生むユニークな形状のポットスチル。ネック部分から伸びるラインアームから繋がる円筒形の銅管が水冷式の精留器だ。

現在も蒸留所では、“ブラックバーン”と呼ばれるグラント川から引く水での仕込みや、木桶での短時間発酵、唯一無二のポットスチルでの蒸留など、伝統を踏襲したウイスキーづくりが行われる。加えて、冒険家でもあったメジャーが世界各地から植物を持ち帰り整備した、蒸留所内の美しい庭園「ガーデン・オブ・スプレンダーズ」からのインスピレーションも、グレングラントのフレーバーを生み出す要因のひとつとなっている。

そんなグレングラントのフラッグシップが「グレングラント12年」。その特長はリンゴなどの赤い果実を思わせるフルーティなアロマ。甘く華やかな香りや洗練された味わい、そしてスムースな飲み口といった、グレングラントの真骨頂ともいうべき軽やかさと複雑さのバランスが取れた香味が堪能できる。

テイスティングノート

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日本でもファンの多いグレングラントだが、特にイタリアでは長きにわたりダントツの人気を誇るシングルモルトでもあり、現在はカンパリ社が蒸留所を所有する。

最近、ラムカスクでフィニッシュされた製品もリリースされたが、原則としてアメリカンオークのバーボン樽とシェリー樽、バーボン樽を一回り大きなサイズに組み替えたホグスヘッド樽を熟成に使用。ピーテッド麦芽を使用せず、ノンピート麦芽での仕込みだけを行うのもグレングラントのこだわりだ。

ノンエイジの「アルポラリス」や「10年」「12年」「15年」「18年」といったスタンダード品から、「21年」「25年」「30年」といった数量限定の長期熟成品まで、豊富なラインナップが揃うのもグレングラントの魅力。熟成年数や樽による製品ごとの個性の違いを、バーや自宅で飲み比べてみるのも一興だ。

グレングラント

CAMPARI JAPAN TEL:03-6455-5810



Photograph by

小野田 忍

1984年生まれ、愛知県出身。名古屋ファション専門学校を卒業した後、東京を拠点にスタイリストとして活動。2010年にフォトグラファーに転向し、現在は合同会社 丗(SANJU)にて、ファッション、広告撮影を中心に活動中。
Instagram:@shinobu_onoda

連載「ウイスキーの肖像」

 

西田嘉孝

ウイスキージャーナリスト

ウイスキー専門誌『Whisky Galore』 やPenをはじめとするライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。

西田嘉孝

ウイスキージャーナリスト

ウイスキー専門誌『Whisky Galore』 やPenをはじめとするライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。