180年の伝統と革新。稀代のウイスキーメーカーが手掛ける、グレンモーレンジィ オリジナル12年【ウイスキーの肖像 vol.3】

  • 写真:正村僚麻
  • 文:西田嘉孝
Share:

スコットランドの北ハイランドに位置するテインの街で、1843年に創業したグレンモーレンジィ蒸留所。もともとジンの蒸留に使われていたというキリンのように首の長いポットスチルは業界で最も背が高く、より軽くピュアなアルコール蒸気だけを分離して得ることができる。

創業時から変わらない、唯一無二のポットスチルを使ったグレンモーレンジィのウイスキーづくり。歴史を継承しながらもそれを大きく進化させてきたのが、世界屈指のウイスキークリエイターとして知られるビル・ラムズデン博士だ。

MHISWF120427_high.width-1920x-prop.jpg
高さ5.14メートル(全長は約8メートル)にもなるポットスチル。その形状などは、創業当時のまま継承されている。

グレンモーレンジィはもともとバーボン樽熟成へのこだわりで知られる蒸留所だが、ビル博士はシェリー樽やワイン樽でのウッドフィニッシュ(一定期間の熟成を経たウイスキー原酒を異なる樽に詰め替えて後熟させ、さまざまな香味を付与する手法)にも早くから着手。他にも、材となるオークの産地や乾燥方法を細かく指定したオリジナルのバーボン樽である「デザイナーズカスク」の開発など、クリエイティブな発想でウイスキーの世界に数々の革新をもたらしてきた。

そんなビル博士が率いるグレンモーレンジィのフラッグシップが「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」。長くブランドの象徴として存在した「オリジナル 10年」の個性を継承しながらバージョンアップさせ、2024年に登場したばかりの新定番だ。

MHISWF120408_high.width-1920x-prop.jpg
グレンモーレンジィは、こだわりのバーボン樽やシェリー樽、各種ワイン樽から日本原産のオークであるミズナラ樽まで、バラエティ豊かな樽を熟成に使用。数々の画期的なシングルモルトをリリースする。

ビル博士がグレンモーレンジィ蒸留所で働く前、1984年に初めて飲んで感動したシングルモルトが10年熟成のグレンモーレンジィだった。蒸留所で働くようになってからもその味わいの記憶は鮮明だったそうで、ビル博士は常に“最初の味わいの記憶”に忠実なウイスキーづくりを目指してきたという。「オリジナル 12年」は、グレンモーレンジィとともに30年以上の歳月を歩んできたビル博士にとっての、ひとつの答え合わせのようなものだ。

テイスティングノート

GLENMORANGIE_tn.jpg

香りでまず感じるのは、オレンジや洋梨などのフルーツ、華やかなフローラルさやバニラのような、これまでのグレンモーレンジィが体現してきたクラシックなスタイル。飲めば口当たりはシルキーでなめらか。甘く熟した桃や蜂蜜、ハーブやスパイスのエッセンスも感じられ、より濃密で複雑な味わいとなっている。

スムースな飲み口やバランスのよさも健在。ストレートはもちろんロックやハイボールなど飲み方を選ばずに楽しめる、初心者からウイスキー通にまで広くお薦めしたい一本だ。

グレンモーレンジィ オリジナル 12年

www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/sp



Photograph by

正村僚麻

1994年、岐阜県生まれ。日本大学芸術学部写真学科出身。飛知和正淳、小暮和音に師事し、現在はフリーランスとして活動。ファッションと音楽を中心に人物、商品、映像撮影など幅広いジャンルで活躍する。
Instagram:@vietnamfinebreak38


Text by

西田嘉孝

ウイスキージャーナリスト。ウイスキー専門誌『Whisky Galore』 やPenをはじめとするライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。