7月20日に、FIFA 女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージーランド大会が開幕しました。「なでしこジャパン」をはじめ、各国の女性アスリートの活躍が期待されています。一方で、開幕に向けては、日本で試合の放映権がなかなか決まらなかったり、賞金総額の男女差が大きいことが話題になったりと、スポーツ界におけるジェンダーによる差が改めて浮き彫りになっているように思います。
また、女性アスリートのビジュアル撮影という点では、盗撮や性的な要素を強調した形での撮影、そういった画像のネット上での拡散といった女性アスリートを侮辱するような行為が度々起きてきました。スポーツ界やアスリートからも撲滅に向けた声が上げられ、7月13日には、そのような行為を処罰する法律「撮影罪」(性的姿態等撮影罪)も施行されたところです。
今回は、スポーツ界におけるインクルーシブなビジュアル表現について考えていきます。
■スポーツ界における⻑年の男女差、広がる「平等」意識
⻑年、スポーツ界は男性主体のものであるというステレオタイプがあり、女性と比較するとより男性スポーツの人気が高かったり、アスリート周辺のコーチや関係者も男性ばかりだったりと偏りが見られていました。
さらにアスリートへの報酬についても格差があり、例えばW杯でいうと、前回大会での賞金総額について、男女で400億円以上の差があることなどが明らかになり、今回の女子W杯では、全選手に賞金を分配するなどの措置を講じていて、FIFAのインファンティーノ会長も、今後男女の分配金を等しくすることを目標に掲げています。
「男性の方が女性より体力がある」といったステレオタイプを背景に、スポーツ界では⻑年、男性優位で考えられ、機会や報酬にも関わるようなジェンダーによる格差が根強かったと言えるでしょう。
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■7割以上が「女性アスリートのリアルな姿」をビジュアルに求めている
スポーツ界においては、男性優位で考えられてきた中で、実際にスポーツを観戦する側の人々の意識はどうなのでしょうか。
VisualGPSの調査結果によると、グローバルでは消費者の7割以上が、「女性アスリートを、美しさや魅力ではなく、技術や運動能力に焦点を当てたリアルな姿で表現してほしい」と求めていることがわかっています。
日本の消費者の7割以上についても、「アスリートは性別に関係なく、パフォーマンスとスポーツ、スポーツ組織への総合的な貢献度に基づいて報酬を受けるべきである」としていて、消費者の女性スポーツ、アスリートに対する平等への意識は高いと言えます。
このように多くの人々はスポーツにおける男女差をなくすべきだと感じています。大多数の消費者が、「スポーツ界はインクルーシブな環境を作る責任がある」と考えていて、様々なバックグランドを持つアスリートやサポート陣に対して、インクルーシブな環境づくりを求めています。
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■アスリートは気合いで乗り切る?メンタルヘルスの重要性を認識
ここで少し視点を変え、スポーツ界におけるインクルーシブなビジュアル描写という観点から、メンタルヘルスの重要性についても触れたいと思います。
世界的な大会で活躍するトップアスリートのメンタルヘルスについては、これまであまり取り上げられてきませんでしたがここ数年、メンタルヘルスを理由に試合後の記者会見を辞退したり、重要な試合を棄権したりするといったアスリートも見られるようになっています。「国を代表しているのだから」とネガティブに捉える声があるのも事実ですが、「自分自身の健康を優先させる」という行動で、当たり前に見られて良いのではないでしょうか。
実際にVisualGPSの調査でも、大多数の人々が、「スポーツ界はメンタルヘルスの重要性を認識し、アスリートがもっと声を上げることや、スポーツリーグ、エージェント、コーチ、オーナー、ファンを含むスポーツ界全体のリテラシーの向上、教育、アスリートのサポート体制の充実に努めるべきだ」と考えていることが分かりました。
現代のスポーツを取り巻く環境は常に変化しており、そのような世界に身を置くアスリートたちがメンタルヘルスについてオープンに語り始めたのは理に適った反応であると言えるのではないでしょうか。
<後編に続く>
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Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。