LGBTQ+のビジュアル表現。その頻度が高い地域ほど偏見が少ない?

  • 編集:穂上愛

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プライド月間である6月に入り、LGBTQ+の啓発イベントが世界各国で行われています。企業が自社のロゴをレインボーを使ったデザインに変えるキャンペーンなど、目にされている方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、LGBTQ+コミュニティがどのようなビジュアル表現をされているのか、その現在地とこれからについて考えてみたいと思います。

本題に入る前に、「LGBTQ+」という言葉について改めてお伝えしたいと思います。「LGBTQ+」とは、(L)レズビアン、(G)ゲイ、(B)バイセクシャル、(T)トランスジェンダー、 (Q)クィアの頭文字を取ったものです。
+は人々が自分の性的指向や性自認を説明するのにその他の様々な 言葉を使っているということを示すために加えられました。たとえばパンセクシャルやアセクシャル、ノンバイナリー、ジェンダークィア、クエスチョニングなど、表現はさらに多岐に渡り、「LGBTQIA+」や「LGBTQ2+」などと表されることもあります。

ゲッティイメージズでは昨年、アメリカでLGBTQ+が社会的に受け入れられるための様々な計画を立案し続けている団体GLAAD(グラード)とともに、「LGBTQ+ビジュアル・ストーリーテリング・ガイドブック」を作成しました。

このガイドブックは、ジェンダーの役割を理解するという基本的なお話や、LGBTQ+コミュニティの適切な表現へとつなげる実践法、用語解説など、LGBTQ+コミュニティのビジュアル表現を、よりリアルで偏見のないものを制作、そして選択できるよう手助けするためのものです。

ちなみに、このガイドブックの制作に携わった、GLAADのメンバーNick Adamsさんは、Netflixのドキュメンタリー作品『Disclosure (邦題:トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして)』にも出演されています。

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LGBTQ+コミュニティのビジュアル表現の頻度が高い地域ほど、偏見が少ない

私たちのチームでは、ビジュアル市場調査「VisualGPS」の一環としてLGBTQ+コミュニティのビジュアル表現に関する調査を世界26カ国、Z世代から団塊の世代まで、1万人の消費者を対象に行いました。

対象者への質問事項をいくつかご紹介すると

「CMやメディアでLGBTQ+の表現を目にすることはありますか? またどのような表現を目にしますか?」
「ノンバイナリーという言葉を知っていますか?」
「日々どのようなことに差別を感じますか?」
「ジェンダーは生まれたときに決められるものだと思いますか?」

など、さまざまな角度から質問をしています。

その結果、LGBTQ+コミュニティのビジュアル表現の頻度が高い地域ほど、偏見が少ない傾向にあることがわかりました。

アメリカや、ラテンアメリカの一部地域では、LGBTQ+コミュニティのビジュアル表現の頻度が高く、偏見の度合いが低い。ヨーロッパやアジアの一部地域では、頻度が低く、偏見の度合いが高いという結果が出ました。

性的指向を尋ねること自体が違法である地域はこの調査から除外されていますが、そのような地域では、偏見の度合いがさらに高いことも予測されます。

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LGBTQ+コミュニティの“リアルで自然な表現”とは?

ただし、LGBTQ+のビジュアル表現の頻度が高い地域においても、一般的に見られるビジュアルは狭く、ステレオタイプに限定されていることが多いことも今回の調査から明らかになりました。

実際の広告などにLGBTQ+が登場する場合に使用されるビジュアルが、どういったものかといえば、フェミニンな男性、マスキュリンな女性、レインボーフラッグといった、ステレオタイプに限定されていることが多いのが現状です。
このような表現は実際のコミュニティの一部を表しているとはいえ、よりリアルで自然な表現の選択肢も増やし、新しいストーリーを伝えることがますます重要になってきていると感じています。

JGalione,1356634774,GettyImages

LGBTQ+の男性がお母さんとお料理する様子です。ゲイの男性という事実を超えて、息子であり、お料理好きであるなど、複数のアイデンティに焦点が当てられていると言えます。

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Willie B. Thomas,1288668538,GettyImages

シニア層のカップルの週末のブランチの様子。日常の一コマが自然に表現されています。

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Hinterhaus Productions,1314040268,GettyImages

オレンジの洋服がとても素敵な方が、同僚たちに何か提案している様子。トランスジェンダーであるという事実を超えて、職場での役割が上手く表現されています。

どのビジュアルも、プライド月間といった1年に一回の特別な時だけに限定しない、性的指向と性自認の固定概念にとらわれない形で一人一人の日常が表現されていると言えます。

連載記事

遠藤由理

Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

遠藤由理

Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。