『孤独のグルメ』第11話の聖地巡礼レビュー。過去に行ったことのあるお店が登場したときの楽しさ

  • 文:絶対に終電を逃さない女

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Ⓒテレビ東京

『孤独のグルメ Season9』第11話の「巣鴨の老舗モンゴル料理」という予告を見てすぐにピンと来た。ちょうど5年前、友人と行った「シリンゴル」だ。ちなみにSeason3の第5話に登場した東中野のアフガニスタン料理店「キャラヴァンサライ包」にも、昔その友人と行ったことがある。その時は放送されてから2年経っていたようだが、お互い何も知らないまま食事を楽しみ、今年たまたま再放送を見て『孤独のグルメ』に出ていたことを知ったのだった。どちらも友人が探してくれたお店で、しかもその友人と2人きりで会ったことはその2回しかない。友人のセンスの良さと引きの強さに感服するとともに、そこから数年後、巡り巡って『孤独のグルメ Season9』のレビューを書く仕事をすることになるなんて想像だにしなかったなあ、としみじみする。

しかし、「シリンゴル」は座敷のゲル風の天井がオシャレで美味しかった記憶はあるものの、何を食べたかはほとんど覚えていない。ということで、行ってみることにした。

巣鴨駅から店に向かう道すがら、そうそう、ここを通って行ったんだ、と眠っていた記憶が呼び起こされる。柔らかな光を放ち、夜の閑静な住宅街に溶け込みつつも、しっかり存在感もあるバランスが絶妙な外観。

店内には五郎と同じものを食べている聖地巡礼らしき人がちらほら。通されたテーブルの上には、五郎が「モンゴルの甘くないドーナツみたいなもの」と説明を受けたお通しのボルツク。友人と「これなんだろう? わかんないけど美味しいね」などと言いながら食べたのを思い出して懐かしい気分になる。

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本格的モンゴル料理を味わう

今回は五郎が食べた中から、「チャンサンマハ」は食べた気がするので、「シリンゴルサンド」と「羊肉ボーズ(蒸しまん)」を頼んでみた。「肉と野菜、投打が噛み合った野球チームのようだ」と五郎が評した、羊肉版北京ダックのような「シリンゴルサンド」。野球のことはよくわからないのでピンと来ていなかったが、食べてみると納得だ。羊肉の臭みもまったくなく、五郎も褒めた甘味噌がすべての具材と合っている。見た目以上に皮がしっかりしていて食べ応えがあり、本格派の雰囲気を感じる。

小籠包に似た「羊肉ボーズ」も、やはり皮の密度が高く弾力があり、力強い。その皮を破ると、五郎が「ナイアガラ」と例えた熱い肉汁が溢れ出てくる。ぎっしり詰まった羊肉は噛むたびに旨味が染み出てきて、何個でも食べられそうな気がしてくる。

最後は五郎が食べていない、「ピータン羊肉粥」を選んでみた。白粥に細く切ったピータンと羊肉が入っていて食べやすく、これまでの全体的にどっしりとした力強い印象とは打って変わって、包み込んでくれるような優しい味わい。そのギャップにグッとくる。メニューの説明に「お好みに合わせて岩塩を入れて下さい」とあったので、岩塩を削って入れてみる。味の変化を楽しめるだけでなく、この作業も何気に楽しい。自らナイフで肉を削いだり岩塩を削ったりすることで、野性味あふれる非日常感を味わえるのも、「シリンゴル」の魅力の一つなのだと思う。

店を出た後、友人に「昔一緒に行ったモンゴル料理屋が『孤独のグルメ』に出てたよ」と連絡してみた。「肉を切ってる時に腕時計可愛いねって褒めてくれたのが嬉しかった」と返ってきて、そういえばそんなこともあったなあと、忘れかけていた小さな思い出が蘇ってきて嬉しくなった。これまで出演したお店に行ってみる聖地巡礼をしてきたが、過去に行ったことのあるお店がたまたま舞台になった場合、こうして懐かしむこともできる。ドラマ『孤独のグルメ』にはそういう楽しみ方もあるのだと知った。

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次回放送は9月24日(金)深夜0時12分からスタート!Ⓒテレビ東京

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。
Twitter: @YPFiGtH
note: https://note.mu/syudengirl

連載記事

【第一話】『孤独のグルメ』の最新シーズンが始まったので、(事前)聖地巡礼をしてみた
【第二話】『孤独のグルメ』第2話の聖地巡礼レビュー。井之頭五郎に「攻めの姿勢」の大切さを学ぶ
【第三話】『孤独のグルメ』第3話の聖地巡礼レビュー。東麻布で外国料理店のもつ“力”を感じる
【第四話】『孤独のグルメ』第4話の聖地巡礼レビュー。井之頭五郎の「デカちゃん」ぶりを思い知らされる
【第五話】新型コロナに感染した人間が、『孤独のグルメ』を見て思うこと
【第六話】『孤独のグルメ』第6話の聖地巡礼レビュー。半月ぶりの外食は「普段使いしたい」店で
【第七話】『孤独のグルメ』第7話の舞台は「貴州火鍋」。五郎の桁違いの体力に理解が追いつかない
【第八話】『孤独のグルメ』第8話の聖地巡礼レビュー。名物店主と焼きまんじゅうを高崎の街で味わう
【第九話】『孤独のグルメ』の聖地巡礼を続けてきて、気づいたこと
【第十話】『孤独のグルメ』第10話レビュー。五郎が"孤独のグルメ"を志向する理由を考える