人々の共感を得られる、インクルーシブな「男らしさ」を表現したビジュアルとは? 時代とともに変化する「男性像」【後編】

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    1223596623, Susumu Yoshioka, Getty Images

    ■「男らしさ」は歴史と文化の影響を受ける

    日本における男らしさは、歴史と文化に深く浸透しており、社会規範の変化や世界のトレンドに対応して進化し続けていると言えます。日本の男らしさが歴史と文化にどう影響しているのか、時代を象徴する「男らしさ」とともに振り返ります。

    明治維新以前(~1868年)

    侍:日本文化における伝統的な男らしさ

    侍は、勇気、名誉、自己鍛錬の資質を体現する伝統的な男らしさです。武術に長け、個人の利益よりも忠誠と名誉を重視する厳格な道徳規範を守っていました。主君に奉仕し、最大限の忠誠を誓う姿は、今日でも日本文化に色濃く影響を残しています。

    第二次世界大戦以降~1970年代

    サラリーマン:ストイックで献身的。日本の労働文化における伝統的な男らしさ

    第二次世界大戦後の好景気の中で生まれたサラリーマンも、日本における伝統的な男らしさの一つです。会社に貢献し、家族を養うために長時間働くホワイトカラー労働者で、ストイックで規律正しく、個人的な欲望よりも義務と責任を優先します。会社に忠実で、勤勉で献身的、理想的な会社員を体現しています。

    昭和~平成中期(1980年代~1990年代)

    オタクの台頭:日本のポップカルチャー現象に見られる現代の男らしさ

    日本における現代の男らしさは、ポップカルチャーや世界的なトレンドの影響を強く受けています。「オタク」は1980年代に登場し、アニメや漫画、ゲームに熱中する若い男性です。内向的で、社会的に不器用、自分の趣味に夢中といった姿で描かれることが多い存在です。オタク文化は日本のポップカルチャーにとって重要で、アニメ、マンガ、ゲームなどの世界的なトレンドに影響を与えています。

    平成後期~令和(2000年代以降~)

    草食系男子:進化する日本の性別役割分担に見る現代の男らしさ

    もうひとつの現代的なタイプは2000年代以降に登場した「草食系男子」です。恋愛やキャリアアップといったことにあまり興味がなく、ファッションや美容、個人的な趣味に没頭する姿が特徴です。そのため草食系男子は、伝統的な性別の役割分担にもあまり共感を抱かない傾向にあるため、日本の社会的規範の変化を反映しています。

    2010年代以降~

    ハンズオンパパ:日本の企業社会と家庭生活における男らしさを再定義

    近年、社会・経済の変化に対応した新しい男らしさが登場しています。例えば、「イクメン」は、子育てに積極的で、環境に配慮した現代的な会社員を象徴します。子育てに積極的な父親であり、日本社会でその存在感を増しています。

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    1363790368, visualspace, Getty Images

    伝統的な男らしさのイメージが日本文化に定着している一方で、現代の男らしさは日本の社会や大衆文化を形成する上でますます重要になってきていることが分かるのではないでしょうか。

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    ■ゲッティイメージズでの検索ワード、「男性スキンケア」が急上昇 

    世界最大級のストックフォトサイト「ゲッティイメージズ」で、過去1年間、日本での「男性」に関する検索ワードを分析しました。
    すると、「男性」の検索数が減少、「スーツの男性」は微増である一方で、「男性スキンケア」が110%と大幅に増加しました。男性の身だしなみとパーソナルケア製品への関心の高まりがうかがえます。さらに、「ジェンダーレス」に関しては、560%と大幅に増加していることから、ジェンダーアイデンティティやノンバイナリーといった概念への興味が高まっていることも分かります。

    ゲッティイメージズで過去1年間に検索されたワード 

    「男性」(-5%)
    「日本のビジネスマン」(+21%)
    「スーツの男性」(+2%)
    「男性スキンケア」(+110%)
    「ジェンダーレス」 (+560%)

    ※()カッコ内は、2021年12月~2022年12月までの増加率

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    1444395205, Koh Sze Kiat, Getty Images

    ■人々が共感できる“親近感のある”ビジュアルが重要

    VisualGPSの調査によると、「日本の男性の約2人に1人が、体型、年齢、人種・民族などに基づく差別に遭遇したことがある」と回答しています。実際に、日本の男性の6割程度は、「メディアや広告の中に、自分に似た“共感できる男性”が十分に表現されていない」と感じていて、世界平均と比較しても高い傾向にあることが分かっています。

    では、日本の男性が「共感できる」男性のビジュアルとはどのようなものなのでしょうか。

    インクルーシブでジェンダーステレオタイプのない「男らしさ」を表現するために、ワークライフバランスや働きやすい職場環境のほか、男性が育児や家事など、家庭生活に積極的に参加する姿などをビジュアル化することがとても大切になってきます。さらには多様な体型やスタイルを受け入れ、男性のセルフケアや心の健康を強調することもまた必要ではないでしょうか。

    最新のVisualGPSの調査では、企業やブランドのビジュアルの中に、「共感を持てる人物が、親近感のある生活を送っている姿が描かれていると購買意欲につながる」という結果も出ています。ビジュアルコミュニケーションにおいて、ステレオタイプにとらわれず、多様な声を反映し、さまざまな背景や経験を伝えることが、男性に限らずすべての人にとってインクルーシブで公平な未来を育むために重要です。 

    1397040111, Erdark, Getty Images

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    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。