ワンオペ育児は女性だけ? 世界でも低水準の日本のジェンダーギャップを解消するビジュアルとは【前編】

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    3月8日は国際女性デーです。以前に比べると一般の認知も広がってきている一方で、経済・教育・政治参加などの分野で世界各国の男女間の不均衡を示す指標である国連のジェンダーギャップ報告書によると、現在146か国中116位、主要先進国の中で最低ランクの日本は、まだまだそのギャップを埋めていく必要があると思います。

    今回は国際女性デーに合わせて、女性を描くビジュアルにフォーカスし、家庭や子育て、仕事など様々なライフスタイルの中で、ジェンダーギャップを解消するビジュアルについて考えていきます。

    ワンオペ育児は女性だけ?

    はじめに、日本での子育てシーンに注目して考えていきましょう。厚生労働省によると、2022年に国内で生まれた子どもの数は、1899年の統計開始以来、初めて80万人を割り、79万9728人でした。待ったなしの少子化対策で、岸田首相も「異次元の少子化対策」と明言し、子育て支援の充実を目指しています。男女問わず、育児休暇の在り方についても関心が高まっています。 

    さて、みなさんは「子育て」と聞いてどんなビジュアルを想像するでしょうか?今みなさんの頭の中に描いた子育てのビジュアルに、ステレオタイプはなかったでしょうか?

    ゲッティイメージズ/iStock (以下ゲッティイメージズ)のサイト上で、子育てシーンを描いた人気の高いビジュアル傾向を見てみると、女性が描かれているビジュアルが、男性が描かれているものよりも2倍多く選ばれています。さらに、1人の親が子どもの世話をする、いわゆる「ワンオペ育児」のシーンについては、女性が登場するビジュアルは男性が登場するものよりも3倍多く選ばれていることが分かりました。一方グローバルの結果では、女性が男性の2倍多く選ばれていて、ワンオペ育児=女性というステレオタイプは、日本では特に根強いことが感じられるのではないでしょうか。

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    1372515971, Westend61, Getty Images

    ビジネスシーンでのリーダーは男性ばかり?

    次に、ビジネスシーンで人気のビジュアルに目を向けてみましょう。みなさんは「ビジネス」「リーダーシップ」と聞いて、どんなビジュアルを想像するでしょうか? ゲッティイメージズのサイト上では、ビジネスの場でリーダーシップを発揮している様子を描いたビジュアルについては、男性が女性より2倍多く選ばれています。グローバルで見ると、この差は1.4倍となっていて、ここでも若干ではありますが「リーダー的役割=男性」というステレオタイプも、日本では根強いことが感じられるのではないでしょうか。

    さらに職業別に見てみると、20代半ばから30代半ばの女性が企業のアシスタント的な役割で描かれたビジュアルが人気で、特に看護師のビジュアルでは顕著で、女性が描かれているビジュアルの使用率が男性よりも、なんと30倍も多くなっています。「補佐的役割=女性」といったステレオタイプもいまだに根強く、ビジュアル選択にも反映されていることが分かります。

    実際に、2013年から2019年までの調査結果によると、日本の労働人口に占める女性の割合は40%以上で推移しており、世界平均を上回っていますが、管理職に占める女性の割合はわずか15%で、世界平均の23%を下回っているのが現状です。

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    先進国でも低水準のジェンダーギャップ

    ジェンダーギャップ報告書でも、日本では政治家や企業の役員など指導的立場にある女性が少なく、ジェンダー不平等が大きな問題とされています。

    ひとつの理由として、日本の企業文化が長年の慣習を変えることにまだまだ抵抗感がある点。例えば、社員の有給休暇についても、会社によっては取得しくい現状があるようです。

    また男性が「一家の大黒柱」として家族を養うという考え方も根強く、男性育休に対する企業の理解が進んでいないことも理由の一つとして考えられます。世界でもトップクラスの育休制度と言われているにも関わらず、男性の育休取得率は1割程度(2021年度、厚生労働省)にとどまっています。

    まだまだステレオタイプを反映したビジュアル表現の人気が高いことも、低水準のジェンダーギャップと相関関係があるかもしれません。

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    1392169723,recep-bg,GettyImages

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    アイスランドの事例が興味深くここで記しておきます。アイスランドのグズニ・ヨハネソン大統領は、これまでに5回の育児休暇を取得したことで知られています。アイスランドの「ジェンダーギャップ指数」は13年連続1位、男性の育休取得率も8割だそうです。女性の議員や閣僚も4割を占め、上場企業の役員は男女どちらも4割超です。あるインタビューで、ヨハンソン大統領が下記のようなコメントをしていました。

    男女平等とは、公平、正義、経済的進歩、そして幸福のことであり、男女平等を進めることは長い目で見れば経済的にも実用的で有益です。アイスランドの例は、正しい方向に進めば、誰もが利益を得ることができると示しています。そうすることで、誰もが熱心に、効率的に働くようになるでしょうし、もし女性が男性と同じように働く機会を得ることができれば、一部の男性は長時間労働をしなくてもよくなるかもしれません。法律と社会の変化の組み合わせが必要なのです。これは公平性の問題であり、男性が不自由になるわけでも特権を失うわけでも、男性が弱くなるということでもありません。

    各国の事情は異なるにしても、大変参考になる事例だと思います。

    <後編に続く>

    連載記事

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。