腕時計の本流本筋であるドレスウォッチは、機械式時計の入門として安心して使える王道であり、時計愛好家が最後に到達する至高の一本でもある。最初と最後に選びたい、お薦めのドレスウォッチを紹介する。
最初に選ぶ、万能ドレスウォッチ
1. TAG HEUER(タグ・ホイヤー) タグ・ホイヤー カレラ キャリバー5 デイト
1963年にスポーツクロノグラフとして誕生した「カレラ」。その高い視認性を誇る大きなダイヤルと細いベゼル、着用感を高める長めのラグは、3針モデルに転じるとドレッシーに映える。スポーツウォッチの機能性と名門ブランドらしい落ち着いた佇まいを融合させた万能な一本だ。
---fadeinPager---
2. BAUME & MERCIER(ボーム&メルシエ) クリフトン ボーマティック 10692
3. BELL & ROSS(ベル&ロス) BR V1-92 ブラック スティール
2. 1830年に創業したスイス屈指の名門らしい、品格があるドレスウォッチ。ロングパワーリザーブと耐磁性能、そしてCOSC認定クロノメーターの高精度を誇る自社製ムーブメント「ボーマティック」を搭載し、性能面も完璧だ。
3. カーブする風防やマット仕上げのケースなどには、1940年代頃のパイロットウォッチを思わせるレトロさがあるが、94年に工業デザイナーが立ち上げたパリのブランドだけに、洒脱さも十分。タイムレスなデザインなのでいつまでも愛し抜けるのだ。
---fadeinPager---
4. HAMILTON(ハミルトン) アメリカンクラシック イントラマティック オート
5. FREDERIQUE CONSTANT(フレデリック・コンスタント) クラシック マニュファクチュール
4. アメリカの鉄道時計の名門としても知られるハミルトン。スイス製の高品質なつくりとアメリカンスタイルを巧みに融合させた、時代を超えたヘリテージデザインはシーンを選ばない。長時間駆動&高耐磁の専用ムーブメントを搭載する。
5. 「手の届くラグジュアリー」をコンセプトに掲げ、自社製ムーブメント搭載モデルながら、これ見よがしな雰囲気は皆無。小さなローマンインデックスやブレゲ針など、クラシカルなデザインを愛でたい。
---fadeinPager---
6. LONGINES(ロンジン) ロンジン マスターコレクション
創業190周年を迎えたロンジンは、近代的な時計製造工場をいち早く設立したスイス屈指の実力派で、タイムレスなドレスウォッチでも定評がある。美しいサンレイ仕上げのシルバーダイヤルに、ローマンインデックスの鮮やかなブルーが映える。高精度かつロングパワーリザーブも魅力だ。
---fadeinPager---
最後に還る、“上がり”のドレスウォッチ
7. PIAGET(ピアジェ) アルティプラノ
1957年に厚さ2㎜という薄型ムーブメント「Cal.9P」を発表して以降、一貫して薄型ウォッチを製作してきたピアジェ。そのエレガントな時計たちは、ファッションにこだわるセレブリティからも愛されてきた。「アルティプラノ」はその伝統を受け継ぐコレクション。このモデルに搭載するムーブメントは、手巻き式の「Cal.430P」で、その厚みは2.1㎜。そのためケース全体の厚みもわずか6.4㎜しかなく、手首にすっと馴染む。2針ノンデイトの知的な佇まいは、ドレスアップした腕によく似合う。
---fadeinPager---
8. VAN CLEEF & ARPELS(ヴァン クリーフ&アーペル) ピエール アーペル ウォッチ
気品あふれる紳士であった創業一家のピエール・アーペルが、1949年にデザインした男性用のドレスウォッチは、T型のラグ(セントラルアタッチメント)を採用することで、まるで時計が浮いているかのような詩的な世界をつくり出した。このスタイルを継承するドレスウォッチは、ピアジェの薄型ムーブメントを用いており、ケースはやや大ぶりでも薄くて美しい。名門ジュエラーの美意識が凝縮された時計を選ぶのは粋人の証し。パーティなど特別な場で華やぐはずだ。
---fadeinPager---
9. HARRY WINSTON(ハリー・ウィンストン) HW ミッドナイト・オートマティック 42mm
「キング・オブ・ダイヤモンド」と称されるニューヨーク発祥のハイジュエラーだが、時計づくりも本気。ジュネーブ郊外にファクトリーを構え、創造性に富んだ時計の数々で高評価を得ている。ドレスウォッチでありながら、実用ウォッチで使われることが多いアラビア数字のインデックスや大きなケースを用いて、他にはない個性を表現している。ベゼルにはニューヨーク本店のアーチを模したデザインを取り入れるなど、手首に可憐な遊び心を添える。
---fadeinPager---
10. GRAND SEIKO(グランドセイコー) 初代グランドセイコー デザイン復刻モデル SBGW258
1960年に生まれたグランドセイコーは、当時の日本時計の最高峰技術を結集させたマイルストーン。現在は世界中の時計愛好家が一目置くグローバルブランドとなったが、その原点を現代の技術によって復刻させたのが、このドレスウォッチだ。やわらかなカーブを描くケースは優美であり、キレのある針やインデックスはきらりと光って視認性を高める。審美性と実用性を兼ね備えており、愛でる楽しさと使う嬉しさを享受できるだろう。日本の誇りが詰まった一本だ。
---fadeinPager---
11. VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン) トラディショナル・マニュアルワインディング
スイス時計の中核都市であるジュネーブに、古くから伝わる伝統的な時計技術を継承していることを証明する「ジュネーブ・シール」を取得するクラシカルなドレスウォッチ。シャープなドーフィン針や視認性を高めるレイルウェイ模様のミニッツトラックなど、実用性という点でも抜かりはない。シースルーバックからはコート・ド・ジュネーブという筋目仕上げを施した自社製ムーブメント「Cal.4400 AS」を鑑賞可能。一生モノを超え、孫子の代へと受け継いでいきたい時計だ。
---fadeinPager---
12. A. LANGE & SÖHNE(A.ランゲ&ゾーネ) 1815
ザクセン王国の宮廷時計師だったF.A.ランゲが、1845年にグラスヒュッテに開いた時計工房がルーツ。彼と弟子たちは、統一規格をつくり、パーツを共有して高品質時計を製造して名声を得る。冷戦時は東ドイツ政府によって国営化されたが、東西ドイツの再統合後に復興。創業者の生誕年を冠したこのモデルは、アラビア数字インデックスを使用して、視認性と実用性でも抜きん出た存在に。ムーブメントに対する徹底的な手仕事にも定評があり、テンプ受けの彫金仕上げも一見の価値あり。
※この記事はPen 2022年12月号「腕時計、クラシック主義」より再編集した記事です。