京都の老舗3大コーヒー本店&最新店を、片道徒歩5分で歩き巡る

  • 写真・文:高橋一史

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日本家屋ふうの右側も、昭和レトロな左側もともに「イノダコーヒ本店」。京都市中心部の繁華街。

最新の総務省統計局の家計調査によると(2019年〜21年平均)、コーヒーに使う金額とグラム数はいつものごとく京都市が全国1位。
カフェ文化が定着した歴史には、大学のような学問の場が多く周辺に人が集ったことが理由のようです。
そのサロン的な場がしだいに民衆の暮らしに広がっていったのでしょう。

その京都で3大コーヒーと呼ばれる老舗があります。

イノダコーヒ。
小川珈琲。
前田珈琲。

全国のスーパーに豆が並んでたり、東京にも店があったりのメジャーどころ。
伝統を守るイノダ、革新に挑戦する小川、庶民の前田、という印象なのですが、京都の人だと捉え方が違うかもしれません。

イノダと前田(各本店)、小川(最新のお洒落店)が、ちょこっと歩くだけでハシゴできる距離にあるって知ってました?
「イノダコーヒ本店」から「小川珈琲 堺町錦店」までは同じ路地沿いで徒歩数分、
小川珈琲 堺町錦店から「前田珈琲 室町本店」までは約5分……大通り渡るからもう少しかかるでしょうか。
短時間で楽しめる、“京都コーヒーコンプリートエリア”です。

7月短期の京都取材出張で店に入ったのはイノダコーヒ本店。
半年前の22年1月にがっつりとオープニング取材した小川珈琲 堺町錦店は、スケジュールの都合で今回はスルー。
前田珈琲 室町本店も、「まあいいや」ってことで(?)。

それでは、濃い深煎りで知られる京都を代表する味のイノダコーヒをとくとご覧くださいませ。

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2000年に再築された、イノダコーヒ本店

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暑い夏は冷たい水がウマい!妙においしく感じたイノダの一杯。

古いようで実は新しい、それがイノダコーヒ本店。
(音引きしない『コーヒ』が名称)
創業時の木造店舗を増築していた店舗が、火災で消失したのが1999年(半焼のようです)。
2000年に2階フロアを設けた本館、昔の姿を再現した旧館、博物館のような小部屋とともに新規オープン。
施工されてまだ約20年の空間なんですね。

かつての建物の名残りがどこかは判断つきませんでしたが、ここが京都の暮らしに根付く喫茶店なのは間違いなし。

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平日18時の閉店間際の本館。朝食目当ての客で朝に込むようですが、遅い時間はまばら。

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00年の建て替え時に増設された2階。クラシックな劇場っぽいですね。

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併設されたお隣が往年の姿を再現した旧館。ここをまたぐ通路がユニーク。

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本館、旧館の通路から中庭に出られます。なぜかここはレンガ造りで、重厚な看板まで設置。

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通路に連なってる水の出るライオン。かつてのイノダコーヒ本店はどんな構造だったんだ!?

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ハイソな気分の中庭。春や秋は外で過ごすのもよさそうです。

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イノダコーヒで「アラビアの真珠」を頼まない手はありません。¥650(税込)

京都の伝統を物語る、アイコニックなブレンド「アラビアの真珠」。
あらかじめミルクと砂糖を入れてサーブするのがここのスタイルなのですが(常連客の声を反映させた結果のよう)、現在は客に入れるか尋ねます。
わたしは砂糖抜きでオーダー。

一口すすると、サードウェーブ系もスタバもなかった頃のコーヒーの記憶が蘇りました。
「モカコーヒーをベースに、香り、コク、酸味を絶妙なバランスに仕上げたヨーロピアンタイプの深煎りブレンド」と説明される味。
ふだんシングルオリジン浅煎りばかり飲んでる舌には、コクや苦味が強く感じられて。

「酸味が強いことで有名」との昔の記述を見かけることがありますが、浅煎りがポピュラーな現代人のコーヒー感だと酸味は感じにくいと思うのですがどうでしょう??
ミルク入りで丁度いい濃さ。
コーヒーの基準値がこれという人は、ほかで飲んでもイノダコーヒに戻ってくるのでしょう。

価格は数年で少しずつ値上がりしたようですね。
イノダコーヒは京都駅直結の地下街ポルタにも店舗があり(京都内に6店舗)、東京大丸、横浜高島屋、広島にも店が。
アラビアの真珠の豆はネット購入できますし、味だけなら他店舗でもいいのでしょうが初体験を本店にしてよかったです。
これで東京大丸に行ったとしても本店が目に浮かび、京都の記憶とともに二重三重に愉しめますから。

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外装を町家風につくったのは21世紀の新築のさいの工夫。

「接客がいい」とも評されるイノダコーヒ本店。
ホテル的なかっちりとした態度、または“手慣れてる”感じでした。
イマどきコーヒースタンドのカジュアルな接客に慣れてる身からすると古風だったものの、「高級喫茶店ってこんなだったな」と再び懐かしい思いが。
わずか20分の滞在で、日本の喫茶文化に思いを馳せたひとときでした。

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大通りから路地を曲がった、前田珈琲 室町本店

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親しみやすい庶民的な外装。人の出入りが多く人気店と実感。

前田珈琲 室町本店の店の前に行きました。
車の往来が多い烏丸通りをクイッと横に曲がった利便性のいい場所。
ただグーグル地図のクチコミレビュー見たら、わたしが求めてる居心地のよさを得られない予感が。
いつかそのうち入ろうと考えてます。

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圧倒的にモダン、小川珈琲 堺町錦店

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グンを抜く都会的な佇まい。22年冬にオープンした小川珈琲の最新店舗。

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オリジナルの道具を使ったネルドリップで京都の伝統を未来につなぐ試み。

クールでシャープな近代的カフェ。
写真の印象からして違いますよね、ここ。
アポ入れ取材の本気モードで撮りましたし。
ブログ撮影は、皆さまにお伝えすべき情報が最優先。
仕事撮影は……クオリティも情報も両立がマスト。

Pen Onlineの記事、
【小川珈琲の最先端に立つ新店が京都市内にオープン!「100年続ける」深い決意を現地で体感した】
に掲載したものです。

町家を改装した店ですが、日本家屋の印象は薄く。
近くにある「ブルーボトルコーヒー京都六角カフェ」や、清水寺近くの「スターバックスコーヒー京都二寧坂ヤサカ茶屋店」らの、“味わい系和モダン改装”と比べたらぜんぜん。

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こちらも今回の京都訪問では時間がなくて立ち寄れず。
小川珈琲は東京に「オガワコーヒーラボラトリー」の名の新業態店舗を2軒設けるほど、新時代へのアプローチに積極的なコーヒー店。↓
【京都・小川珈琲が下北沢に出店。客が挽いて淹れる、コーヒー道の極みをご堪能あれ!】

堺町錦店では新開発した食パンも販売し、パン食の京都文化へのリスペクトを示してます。

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夜の堺町錦店。オープン日直前の様子。

老舗の3大コーヒーを徒歩で軽く巡れちゃう京都。
観光客だって地元の人に混じってコーヒーカルチャーを体感できる心楽しい時間です。

All Photos©KAZUSHI

KAZUSHI instagram
www.instagram.com/kazushikazu/?hl=ja

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高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。