ビジュアル最高の“東京にはない”京都カフェ3店を探訪

  • 写真・文:高橋一史

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前回のこのブログ(Pen Online コラムニスト)でもお話した通り、1泊2日の短期で京都市に取材出張に行ってきました。
取材対象が某コーヒー店だったもので、「この2日間の京都はカフェ巡りだ!」と決めまして。
東京から足を運ぶとなれば、ここにしかない体験を得たいとは誰もが願うこと。
「地元のお洒落さんが通う旬のコーヒーロースター」、みたいなのは後回しになるんです。
東京はそんなサードウェーブ系のコーヒー店がわんさかありますから。
トレンドで世の中が動きがちな東京にはない素敵さが京都にはあるはず。

そこで!
なんとか回れた8軒のうち、見栄えよく味よく居心地もいいカジュアルな3軒をここにお届けします。
実はあともう1軒、最高に楽しい店があるんですが、そちらは次回以降のブログで単独紹介しますね。
(知る人はよくご存知の、清水寺近くの例のヤツです)

★まん丸たい焼きの日本家屋
「あまいろ コーヒーとたい焼き」

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かわええ〜〜〜〜!!
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鬼瓦みたいにしっかりした立体造形に驚き隠せず。イラストもかわいすぎ。

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でっかいたこ焼き器みたいな金型。

「カフェとは呼びにくいし」と探訪候補から外しかけてたこの店に行き、結果大満足!
東京にも丸いたい焼きはあるようですが、グーグルで検索すると、ここのたい焼きが次々に出てきます。
行って目にして、なるほどと納得した美しさ。

そして食べたら……んまい!
「なんだこりゃうめーな」ですよ。
午前中から次々に常連っぽい大人がやって来ては何個も買っていく光景に納得が行きましたね。
見た目頼みじゃないんですね、このお菓子は。

歯がサクッと入ります。
周囲は固すぎずパリパリでもなく。
生地はパンケーキのようで、意外な食感と口溶け。
たい焼きや大判焼きって、“もっちり+ぐんにゃり”が一般的。
そのベタつきが苦手な私がこの店に行ったのは、見栄えを求めてのことでしたが予想外に舌鼓。

注文したのはカスタードで、このクリームも深みがあってうまくて!
高級感のある味です、生地もクリームも。

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カウンター+テーブル席がある古い日本家屋。天井は屋根がむき出し。
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のれんもかわいすぎる。なぜ天草四郎なのかは、店のルーツの熊本・天草にあるたい焼き店から来ているらしく。
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極細路地の先にさりげなく置かれた看板。京都らしい黒壁と絶妙に調和。

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この先に店があります。知らないとまず入らない長屋の奥。

写真だけ見ると、ストイックなお洒落系の印象ありますよね?
実際はぜんぜん庶民的、家庭的。
生活感のある店。
マジメな人がおいしいお菓子を淡々とつくってる印象。
最高です。
最寄り駅は四条駅。
あ、コーヒーの味はわりとフツーでしたね(笑)。

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★町家改装のお手本、一軒家に和む
「ブルーボトルコーヒー京都六角カフェ」

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小カップのマキアートを置いたテーブル。階段上の壁には見慣れた青いマークが。

地域の特性に合わせたローカライズをするチェーン店は、他の都市との違いがよくわかる存在。
ミニマルモダンな内装のブルーボトルコーヒーが、京都だと日本家屋を活用してると知ってこれは行かねばと。
大手チェーンは資本注入できますから、個人店より凝った店になるケースが多いですし。

訪れたのは2階建ての「京都六角カフェ」。
市内に大きな日本家屋の「京都カフェ」もありますが、スケジュールの都合もありこちらを選択。
最寄り駅は烏丸御池駅。

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キッチンが2階にある珍しいつくり。屋根の形むき出しの下でスタッフがドリンクをつくり客席に運びます。
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土壁むき出しの美しすぎる内装。この奥にも客席のある細長い通路が続いてます。椅子やテーブルを統一させない自由さがパーソナル気分。

すごくよかったです、ここ!
一言でいうと「味わい深い」。
ラグジュアリーな気取りも堂々とした顔つきもなく。
手は込んでいるけど食堂のように親しみやすく、日本家屋を活用した意味がよく伝わる店。
2階にいるとチェーン店であることが頭から消え去り、個人オーナーの喫茶店にいる気分に。
実は一流の建築事務所が手掛けてるんですが、そんな意識高い系の話は横に置いておきましょう、野暮ってもんです。

1階でオーダーして、狭い階段上がって2階でサーブされます。
席は細長い円形上にぐるりと2階を巡る独特の構造。
四角いドーナツ式の通路といえばいいんでしょうか。
私が座った席がもっとも広い空間。
ほかはよりコンパクトだから、個室感があります。
2人組がちょうどいい。

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2階建ての一軒家。明治から続く自転車屋の一角なので外壁に自転車のディスプレイが。

サードウェーブの象徴たるブルーボトルコーヒー。
日本上陸し東京に一軒増えただけでもメディアを騒がせた約7年前と比べると、店数が多くなりありがたみが薄れましたが、安定した上質な味なのは確か。
さらにこの京都六角カフェ、1階レジの女性スタッフと2階のバリスタ男性が、すごく印象よかったのです。
心がニコニコしてるのが伝わる感じ。
店のイメージがグンとアップ。
たまたまこの日がよかったのかもしれませんが。
コーヒーブーム以降においしい店が急増した今、また行きたくなるのはこんな店と改めて実感。



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★世界110店舗以上、でも東京に店なし!日本発
「アラビカ 京都 東山」

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店を手掛ける会社が代理店を務めるエスプレッソマシン「スレイヤー」の小型版は店のアイコンマークつき。
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茶色の木材と白空間がバランスよく調和。カウンターの角は丸く、スレイヤーのマシンも曲線が多くソフトな印象。

圧倒的に店舗数が多い中国をはじめ、クエートらのアラブ諸国、フランス、イギリス、アメリカにも店を構え世界17カ国展開するコーヒーチェーン「アラビカ 京都」。
「京都から世界へ」を掲げる通り本社は京都。
百貨店内を含め市内には4店舗あり、「%」のアイコンマークもキャッチーなのに東京進出しない、なんとも気になる存在。
自家農園や自家焙煎で味も追求してるらしく。

とはいえ、「テイクアウト系の店は東京にたくさんあるからなあ。時間が限られる今回は行かなくていいかも」と思いつつ、閉店間際に滑り込みました。
感想。
行ってよかった。
店内を満たすオリジナルデザインの徹底ぶりがよくて。
柔らかくかわいい空間で、男性的な内装が主流のコーヒー店とは目線が異なる「ありそうでない店」。
訪れたのは京都第1号店の「東山」。
法観寺につながる坂の途中です。

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スレイヤーの窓にはアラビカのロゴ。紙カップのスレーブが「%」だけで、文字がないのが実に洒落てる。強い主張のあるアノニマスデザイン。
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ディスペンサーにまでアイコンマークが。手広くグッズビジネスも行う店だからこそできるオリジナルの空間づくり。
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オーダーしたカフェラテ。クリーミーな甘みとコーヒーの深みを感じるいい味でした。
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正面ガラスの丸みも何気に凝ったつくり。

コロナ前は海外客の大行列店だったようです。
いまはこの地域に日本人観光客も少なく(2022年2月上旬現在)、店に来るのは若いカップルか女性客たち。
でも藤井大丸店を見に行ったら、平日に地元民らしき人たちで大賑わい。
味がちゃんとしてるからでしょう、年配者も多く若者にだけ支持される店ではないと知りました。

すぐにメディアが飛びつき飽きたらそっぽを向く東京(我が身を振り返って反省……)に出店しない姿勢も含め、大いに学んだアラビカ 京都でした。

★おまけ

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表面が剥がれた黒い焼き杉の板と2種類の石がブロック配置され、自生する雑草が生命の温もりを加える「人工+自然」のコンポジション。

この記事のタイトルにした「ビジュアル最高」が、通りの一角に普通に転がってる京都。
コラムニストの京都シリーズは、次回以降まだまだ続きます。

All Photos©KAZUSHI

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高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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