京都・小川珈琲が下北沢に出店。客が挽いて淹れる、コーヒー道の極みをご堪能あれ!

  • 写真・文:高橋一史

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バリスタの指導のもと、客が自ら様々な器具を使い豆挽きや抽出体験ができる「オガワコーヒーラボラトリー下北沢」。

コーヒー探求への道が開く

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小田急線の下北沢駅と東北沢駅の中間に位置する、新商業施設「リロード」内にオープン。

京都でコーヒーづくりをする1952年創業の老舗、小川珈琲が「オガワコーヒーラボラトリー」の名で、東京・桜新町に初出店したのは2020年8月のこと。1年後となる21年7月30日(金)に、下北沢に待望の2号店が誕生した。コンセプチュアルな発想がより鮮明になり、ラボラトリーの名にふさわしいコーヒー豆とのつき合い方を学べる場になっている。カフェとしても利用できるが、豆を購入して家庭で味わう層がおもなターゲットだ。

オガワコーヒーラボラトリー下北沢を最大限に楽しめるのは、おそらく以下のような人。

・家のコーヒーを店の味に限りなく近づけたい。
・購入をためらう高価な器具をお試しで使いたい。
・好みの味をとことん追求したい
・自分の生活スタイルに合う淹れ方や器具を発見したい。
・長く愛せる豆と出合いたい。
・プロのバリスタと深く話したい。

この店が特別なのは、豆を挽き、淹れてからカップに移すまでの工程をすべてお客自身が行えること。小川珈琲の審美眼で厳選された器具を自由に使える。そのとき助けになるのが知識豊富なバリスタの意見だ。店内では美容室のようにマンツーマンで最初から最後までひとりのバリスタが対応する。さまざまな器具を試して自身に合う製品を見つけよう。忙しい人、淹れる量が多い人は挽くのに電動ミルが合っているだろうし、同じ豆でも抽出がドリップ(プワオーバー)かエアロプレスかでも味わいが異なる。好みを明確に言葉に表せなくても、バリスタと相談するうちに方向性が見えてくる。ここでは家で飲むためのベストな淹れ方を発見できるのだ。もちろんすべてバリスタ任せで美味しい一杯を提供してもらってもいい。好みの豆を探す目的だけならそれがいちばんだろう。

店内では大半の器具は販売せず、あくまでも“体験” の提供に徹している。気に入ったものをすぐ買えないのは不便なようだが、器具の公平性が保たれ客にとって信用できるシステムである。

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バリスタとのコミュニケーションがこの店の鍵。コーヒー文化を広めて定着させる発信の場だ。

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シングルオリジン11種、ブレンド10種、不定期で入れ替わる希少な約4種の豆が壁の扉内に収納されている。

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コーヒー店と思えないほどのミニマルな佇まい。床は今後変更される予定。

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来店して体験するプロセス

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使用できる器具の一部。左からドリップ用のカリタ「HA101」圧縮空気で抽出する「エアロプレス」、ドリップ用のフェロー「スタッグXF」、フェローの電気ケトル「スタッグEKG」。ほかにもフレンチプレス、アメリカンプレス、サイフォン、ネルドリップ、電動コーヒーメーカーなどあらゆる抽出器具が揃っている。

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フェローの電動ミル「オーデ」はコンパクトながら性能は業務用並み。オールブラックのボディでどんなキッチンインテリアとも調和する。

体験プロセスは、メニュー表を見ながらコーヒー豆を選ぶことからはじまる。体験で使うための豆を購入して(原則100gから)、自ら淹れるのがこの店の基本的なコーヒー体験だ。「器具使用料」は回数制限なしで¥300(税込)。一杯分が20gだから100gなら5回(5杯)器具を使えるが料金は加算されない。要するに一度の来店でのコーヒー体験は、豆代+¥300と考えておけばいいだろう。

その豆をバリスタに託して淹れてもらう場合は、器具使用料の代わりに「バリスタ抽出料」¥400(税込)がかかる。生豆の焙煎体験も可能で、焙煎器具を使うには別途「THE ROAST使用料」¥500(税込)が必要だ。なお豆が余った時は「リザーブシステム」により店に預けることになる。次回来店したとき別のプロセスを試したり、自分で淹れることで通常のドリンク料金より低価格で飲むこともできるシステムだ。この日の豆がそのまま保管されるのではなく、同一品種のそのグラム数が持ち越されるだけだから、日数を経ても鮮度の心配はいらない。なおその豆を自宅や会社で飲むため持ち帰るのはOKだが、再度店に持っていき次回以降の体験に使うことは不可だ。

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一杯分の豆、約20gを軽量してミルに注ぐのも客が行える。家で作業したときの手間もリアルに体感できるのだ。

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筒を押し込んで抽出するエアロプレスにトライ。豆の個性を引き出したまろやかな味わいで安定した抽出ができるため、スペシャルティコーヒーを扱う店では人気が高いアイテムだ。

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バリスタとのコーヒー談義こそ、オガワコーヒーラボラトリー下北沢の真骨頂。

豆が決まったら、まず挽く方法をバリスタと相談する。現在は8種類の器具が用意されており、手回しミルでも電動より高価な高性能品もある。挽いた豆の淹れ方はドリップ(プワオーバー)、エアロプレス、フレンチプレス、サイフォンなど驚くほどバリエーション豊かなので好きなものを試そう。

豆を購入しなくても、約25種の豆と3種の抽出方法(エスプレッソ、プワオーバー、エアロプレス)を組み合わせてバリスタにオーダーすれば、一般のカフェと同様にカップに入ったコーヒーが提供される。

バリスタは、なぜ淹れる直前に豆を挽くべきなのか、湯の温度の違いでどう味が変わるのかといった初歩的な質問にも丁寧に答えてくれるはずだ。せっかく上質な豆と向き合うのだから、対話して最高の味を引き出す術を手に入れよう。

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リードバリスタを務めるアメリカ出身のテレル・ベネディクト・ロイド(通称ベン)さん。英会話教師の経験があり日本語が堪能。桜新町の東京1号店での勤務を経て下北沢に移った。

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ベンさんがつくったカプチーノ。両手には花のタトゥーが。左手は日本の象徴の桜で、カップを差し出すとき客に華を添えるために彫ったそう。

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購入できる豆はすべてデミタスカップでの試飲が可能。このサービスがある店は数少ないので豆探しに大いに活用したい。バリスタが抽出してくれ、有料で豆ごとに金額が変わる。

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店が完成するまで

6月22日(火) 施工

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鉄骨の骨組みができ、横長のカウンターがすでに設置されている。

7月27日(火) オープン直前

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オープンを間近に控え、完成へと近づいた店内。客の入りに応じてカウンターの上に豆や器具が並ぶ。

7月20日(火) スタッフ研修

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左端の女性は京都から指導にきた、「ワールド ラテアート チャンピオンシップ 2013」優勝の実績を持つ小川珈琲所属のバリスタ、吉川寿子さん。彼女がつくったコーヒーを下北沢のスタッフがじっくりと味わった。

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スピーディにつくられるラテアートの過程を食い入るように見つめるスタッフたち。世界チャンピオンから学べる絶好の機会だ。

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吉川さんの手によるエレガントな美しいカプチーノ。すぐに気泡が浮いてしまうため、短時間で正確につくるのがコツのようだ。

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店のオープンを控えて研鑽を積んできた若いバリスタたちも、抽出のエキスパートである吉川さんが笑顔で話すアドバイスに聞き入っていた。

“体験型ビーンズサロン”をテーマにしたオガワコーヒーラボラトリー下北沢は、クリエイティブディレクターに南貴之さん、建築デザイナーに関祐介さんを迎えた創造的な店だ。店内で購入できる厳選された雑貨類のなかには、ブックショップ「ポスト」の中島佑介さんがセレクトした書物もある。

小川珈琲が出店を決めた下北沢はいま、小田急電鉄の旗振りで再開発の真っ只中。ただし単なる商業化でなく、地域住民とのローカルなつながりや彼らが望む豊かな生活を提供する方向性を目指している。個人商店や演劇・音楽の劇場が育んできた街のカルチャーを、未来へ推し進めるべく歩んでいるのだ。

朝に一杯をテイクアウトして職場に向かったり、昼の気分転換に訪れるコーヒーショップはまさしく地域のシンボル。ただこれまで下北沢エリアには、スペシャルティコーヒーを扱う本物志向の店はわずかしかなかった。小川珈琲の出店で街のコーヒーカルチャー全体が盛り上がれば、遠くから訪れる人だけでなく地域住民にとっても最高の贈り物になるだろう。

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OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢

東京都世田谷区北沢3-19-20 リロード1-1
営業:8時〜20時(ラストオーダー 19時30分)
年中無休
TEL:03-6407-0194

www.oc-ogawa.co.jp/ocl-shimokitazawa/

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  • 写真・文:高橋一史

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高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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