Pen最新号「ルイ・ヴィトンとヴァージル・アブロー」の中で、書きたかっ...

Pen最新号「ルイ・ヴィトンとヴァージル・アブロー」の中で、書きたかったけれど書けなかった本の話

Pen最新号「ルイ・ヴィトンとヴァージル・アブロー」の中で、書きたかったけれど書けなかった本の話

ここ2ヶ月書けて読んだ、いや積んだ書籍や古い雑誌です。

 先週、ようやく8月1日売りの『Pen』が発売されました。言うまでもありませんが、「ルイ・ヴィトンとヴァージル・アブロー」の大特集です。嬉しいことに私も何ページかお手伝いさせていただき、仕事場にここ何ヶ月、ずっと積まれていた資料を整理・片付けしているところです。

 今回の特集では、私はどちらかというと、メゾンの歴史などを担当させていただきました。こういう類の仕事が来ると、資料を集めることから始めるのがいつものやり方です。すでに持っている書籍や雑誌で何か対象とするブランドに相応しい記事を見つけ、それぞれのページに付箋を付けることからまずスタート。某通販大手会社のサイトで、片っ端から気になる本などをポチッとし、本などが届くとページをめくりながらまた付箋を貼る日々が続きます。読むというよりはいくつかのキーワードを頭の中に刻み込み、それらのキーワードが出るページを見つけるような作業です。

 これは取材などにも同じことが言えるのですが、取材して書いたことと、書けなかったことと、あえて書かなかったことがいろいろとあります。たぶんいちばん面白いと思われるのは「あえて書かなかったこと」だと思います。でもそれはもちろん書きません。たまにお酒が入って口が軽くなったときに友人などに話してしまうことはあるかもしれませんが、書かないと決めたものはそう簡単に書いてはいけません。

 今回のその「あえて書かなかったこと」ではなく、「書けなかったこと」について、少し書きたいと思います。面白いかどうかはわかりませんが、、、


Pen最新号「ルイ・ヴィトンとヴァージル・アブロー」の中で、書きたかったけれど書けなかった本の話

『牡蠣とトランク』(畠山重篤著 パトリック-ルイ・ヴィトン画 WAC刊)2015年発行

 今回のルイ・ヴィトン特集で集めた本の中に、『牡蠣とトランク』というブルーの本があります。通販サイトでは中身は読めません。この意外性のあるタイトルに惹かれて手に入れたものです。

 著者は畠山重篤さんという方で、挿絵をルイ・ヴィトン創業家、5代目当主のパトリック-ルイ・ヴィトンさんが描かれています。

 本に書かれているのは、2011年3月21日に起こった東日本大震災と、その復興を早くから支援したルイ・ヴィトンの話です。畠山さんは牡蠣を養殖する漁師で、もちろん被災者。言うまでもなくありませんが、畠山さんが愛した海はこの地震で「沈黙の海」と化して、牡蠣は死滅してしまったそうです。

 実はルイ・ヴィトンの支援は震災発生から日も浅い頃から始まったと書かれています。突然メールが届き、支援がスタートし、翌年には気仙沼までパトリック-ルイ・ヴィトンさんが来日し、復興する養殖筏を畠山さんと一緒に見て回った話が出ています。巻頭に書かれたパトリックさんの絵のなかの数枚はそのときのものでしょう。

 本の中には、パリで食べられている牡蠣のルーツが宮城県にあることも書かれています。まったく知りませんでした。初めてパリに行ったとき、「せっかくパリに来たんだから」と知り合いに連れて行ってもらったレストランで食べたのが各種の牡蠣などが大きなプレートに盛られた「フリュードメール」。フランス語で「海の果物」。大きな牡蠣を美味しい、美味しいといただきましたが、あのルーツが宮城県だったとは。

 4月に縁あって同じく震災にあった南三陸に取材に行きましたが、そのときに被災された年配の女性から「牡蠣の美味しさは、湾を囲む森や木にあるんです」という話を聞きましたが、森と牡蠣づくりの話もこの本に出てきました。それでいち早くルイ・ヴィトンは支援を申し出たのです。

 「この木が大きくなると、いいトランクになりますよ」

 「私はいい牡蠣を想像しましたよ」

いい話じゃないですか。何とか『Pen』の記事に組み込もうとしましたが、うまくはいかず、この本の話は生かされませんでした。いや、この本以外にも書けなかった話、あえて書かなかった話はたくさんありましたが、、、

 もし『Pen』で、ルイ・ヴィトンの話をもう少し知りたいと思われましたら、ぜひこの本もお読み頂ければ嬉しいです。

次号予告

ファッションについて 語るときに あの人の語ること。