【2026年夏に見るべき展覧会3選】大英博物館の歌麿・北斎が里帰り。マリー・アントワネット“233年ぶり”の秘宝も

  • 編集:Pen編集部
Share:

2026年夏――。まだまだ続く暑さの中、一抹の清涼感を感じられる名展覧会が関東で多数開催されている。

南極の氷に触れる大南極展に、マリー・アントワネットのドレスやジュエリーを身近に感じられる展覧会、大英博物館から初里帰りした貴重な歌麿、北斎作品に、約150年ぶりに奇跡の再会を果たした襖絵…いま見るべき至宝が関東に勢ぞろいしている。

①【大英博物館の歌麿・北斎が日本へ】海を渡った江戸絵画が里帰り。東京都美術館で公開

9febd63fe5406d1f5226124003b526a6df6e2155 (1).jpeg左:狩野宗眼重信『秋冬花鳥図襖』 桃山時代末〜江戸時代初(17世紀初) 大英博物館蔵 
右:狩野宗眼重信『春景花鳥図襖』 桃山時代末〜江戸時代初(17世紀初) 個人蔵
宮越家とは青森県中泊町尾別に所在する、江戸時代から続く旧家。離れ「詩夢庵」とは、『春景花鳥図襖』などを購入した9代目・宮越正治が、夫人イハのために建てて贈ったもの。

1753年の創立以来、世界屈指のコレクションを誇ってきた大英博物館。その膨大な所蔵品の中から、日本美術の粋を集めた展覧会が東京都美術館で開かれている。約150年ぶりに再会を果たした襖絵をはじめ、歌麿や北斎による貴重な里帰り作品、そして知られざる絵師の逸品まで、見どころ満載の展示の魅力をお伝えしたい。

3つの国に分かれた襖絵が、約150年ぶりに奇跡の再会

日英米の3つの国に分かれていた襖絵が、約150年の時を経て再会を果たしている。それらはもともと談山神社(現・奈良県桜井市)に伝わっていたもので、桃山時代末から江戸時代にかけて狩野派の絵師が手がけたと考えられている。しかし明治に入り、廃仏毀釈のあおりを受けて一連の襖絵は神社を離れ、世界各地に分蔵。このうち『春景花鳥図襖』と『名所風俗図襖(三保松原・清見寺)』の2点は、1922年に青森県の宮越家が購入し、離れの「詩夢庵」に設えられた。

一方、もとは両面仕立てだった襖絵『秋冬花鳥図襖』と『琴棋書画仙人図襖』は、1930年代に表裏で切り離され、それぞれ大英博物館とシアトル美術館の所蔵となる。そして2024年、宮越家と大英博物館の所蔵する襖絵が、一連のものであったことが判明。今回、ロンドンとシアトルの遠く離れた地で受け継がれてきた襖絵が来日し、青森の襖絵と再び肩を並べる形で展示された。金銀に輝く画面で四季の情景を描いた『秋冬花鳥図襖』と『春景花鳥図襖』を前にすると、そのゴージャスな佇まいに思わず息をのんでしまう。

35f9fab0820543c33ab9ea9a42434ae7108151a2.jpeg
喜多川歌麿『文読む遊女』 文化元〜3年(1804〜1806)頃 大英博物館蔵 唇が笹色紅であることや、髷の大きさ、下あごの膨らみなどの特徴から、歌麿最晩年の作品と推定されている。

イギリスからの初里帰り作品も少なくないなか、ぜひ目にしておきたいのが、2011年に新たに発見された喜多川歌麿の『文読む遊女』だ。正装した遊女が文を読む姿を鮮やかな色彩で描いていて、世界に50点前後しか現存しないとされる歌麿の肉筆画のなかでも、最大級の一点に数えられる。一般に筆が衰えたとされる最晩年の作品でありながら、精緻な衣服の模様や生気に満ちた表情からは、歌麿の確かな画力もうかがえる。

葛飾北斎の『「万物絵本大全」版下絵』も見逃せない。版下絵とは、版画を彫るための原画のこと。もとは本の挿絵として描かれたが、出版が実現しなかったことで、103点がそのまま残された。長らく行方不明とされていたが、2020年に大英博物館がまとめて購入し、今回はそのうち8点が公開されている。内容は古代インドや中国の神話、動植物など多岐にわたり、未完に終わった構想が分かるだけでなく、晩年の北斎の制作を知るうえでも貴重な資料といえる。

※葛の字は正しくは、中が人の漢字となります。

東京都美術館開館100周年記念『大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画』をもっと知る

---fadeinPager---

②【マリー・アントワネット展の見どころ】233年ぶり世界初公開、王妃が故国へ託した「天然真珠の首飾り」

cda5cbb8ec65b9b33026651898e1e906f7c47595.jpeg
キルスティン・ダンストが着用したドレスなどが並んでいる。デザイナーのミレーナ・カノネロは、18世紀の雅宴画とコッポラからもらったマカロンの箱に着想を得て、時代考証と現代性を融合。若くスタイリッシュな王妃像を生み出すことに成功した。※「マリー・アントワネット・スタイル」展示風景(横浜美術館、2026年)

フランス国王ルイ16世の王妃として宮廷に君臨し、革命の激動のなか断頭台に散ったマリー・アントワネット。その生き様が刻んだスタイルの軌跡と、後世への影響をたどる展覧会が、横浜美術館にて開催されている。18世紀後半の宮廷ファッションから最新のオートクチュールまで、ドレスやジュエリー、家具調度品、絵画など約200点が並ぶ会場の見どころをお伝えしたい。

14歳でフランス王太子妃として輿入れしたアントワネットは、銀色に輝くウェディングドレスで華やかに宮廷へデビューすると、その装いは20年にわたり人々の注目を集めていく。当時のフランス宮廷では服飾に関する規定が厳格に定められていたが、彼女は堅苦しい慣習に挑み、伝統を新しいものへと変えていった。そして諸外国やパリの最新流行を取り入れると、斬新なスタイルが国内外で大きな人気を獲得した。

ローブ・ア・ラ・ポロネーズは、アントワネットが非公式の装いとして取り入れたスタイルのひとつで、ヴェルサイユでは宮廷女性たちの定番の一着となるほど流行する。また一際美しい天然真珠とダイヤの3連ネックレスは、アントワネット旧蔵の貴重なもの。自らの運命が変転しつつあることを悟った彼女は、宝飾コレクションを密かに故国オーストリアへ運ばせる。今回そのうちの1点であるネックレスが、王妃の死から233年を経て、世界で初めて公開された。

悪評の渦中で起きた、「首飾り事件」 

3220b3e353f1f7ad89c524d02e71c20e57064dc5.jpeg
通称「サザーランド・ダイヤモンド」 オリジナルのネックレス:フランス製 1780年代に加工 ヴィクトリア&アルバート博物館

1780年代、社会不安が高まるなか、アントワネットの人気は陰りを見せ、悪評の的となっていった。彼女の装いや生活スタイルもまた「贅沢の象徴」とされ、時に事実よりも想像が先行し、国に禍をもたらす元凶とまで見なされるようになった。その渦中で起きたのが「首飾り事件」である。廷臣ロアン枢機卿が王妃の名を騙る詐欺師に欺かれ、高額なダイヤの首飾りを巡って多額の借金を負った。アントワネット自身は事件に無関係であったものの、王妃を浪費家とみなす悪評をさらに広める結果となった。

この首飾りの一部と伝わる、通称「サザーランド・ダイヤモンド」が眩いばかりの輝きを放っている。渦中の首飾りは騒動のさなかに盗まれ、売却のためにイギリスへと渡った。インドのゴルコンダ産とされる石は、中央の一粒だけでも約15カラット。歴代のサザーランド公爵夫人が継承し、ヴィクトリア女王からジョージ6世の時代まで約100年にわたり、形を変えながら戴冠式の際に身につけられてきた。

『マリー・アントワネット・スタイル』をもっと知る

---fadeinPager---

③ 【火星の隕石に触れる】南極の氷、ペンギン、南極飯まで…体験型『大南極展』が開催中|日本科学未来館

458b1e32322860d222a8a24645c590f9845bb031.jpeg
特別展『大南極展』会場風景より、手前には「宗谷」や「ふじ」、それに現在の新「しらせ」など、歴代の日本の南極観測船の模型が展示されている。

1956年、「宗谷」に乗った第1次南極地域観測隊が観測を開始してから70年。日本が南極で積み重ねてきた歩みと成果を、貴重な資料や標本、映像、そして体験型の展示を通して紹介する展覧会が、東京・お台場の日本科学未来館で開催されている。子どもから大人まで思わず夢中になる、その見どころを紹介したい。

南極の氷に触れ、アイスコアで地球の歴史を知る

7b58e888567e714c56949d647fa2ea8499ddaf68.jpeg
『ドームふじアイスコア』展示風景 34万年前の空気を閉じ込めた深層アイスコアの実物。普段は研究所に大切に保管されているため、外で公開されるのは極めて珍しい。

「ミッションシート」を受け取り、複数の「隊長スポット」を巡って南極観測・研究にまつわる課題に取り組み、達成すると「特別南極観測隊員」に認定される本展。まず本物の南極の氷を手で触れてから、会場へと進んでいきたい。「氷の大陸」とも呼ばれる南極を覆う氷は、もともと大陸に降り積もった雪。それが数万年という長い年月をかけて押し固められて出来ている。溶けてプチプチと音を立てて飛び出すのは、まさに太古の空気だ。

ひんやりと冷たい氷で南極を体感したら、広大な観測エリアへ。ここでも「深層アイスコア」と呼ばれる南極の氷をぜひ見ておきたい。過去の空気や火山灰まで閉じ込められた氷は、地球の歴史を刻む貴重な年表。南極内陸部のドームふじ観測拠点では、これまで2回、約34万年前と約72万年前の深層アイスコアを採取することに成功した。そして3回目となる現在は、推定約2735メートルに及ぶ氷床の底、実に100万年以上前の氷を目指して掘り進められている。

特別展『大南極展』をもっと知る

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。