パテック フィリップが時計で描く、世界の美。“希少な手仕事”の展覧会が開催

  • 文:柴田 充
Share:
今回のハイライトのひとつとして注目を集めたドームテーブルクロック。アマゾンの森の奥深くで戯れる、色鮮やかなコンゴウインコを描いている。

この春、ジュネーブのパテック フィリップ本店サロンで「希少なハンドクラフト2026」展が開催された。並んだのは、傑出した手仕事で装飾された、芸術品ともいえる65本の新作時計。その一部を紹介する。

時計伝統の継承者として、希少な技法を守り続ける

4_cff961a41137abe349e402a7c2155061805f29c8.jpg
会場は、1853年に本社として開業した歴史的建築を受け継ぐ、ジュネーブ市街のパテック フィリップ本店サロン。

世界最大級の国際時計見本市で賑わう春のジュネーブ。同じ時期、市街地にあるパテック フィリップ本店サロンでは「希少なハンドクラフト2026」展が催された。

会場には、エナメル、木象嵌、ギョーシェ装飾、手彫金、ジェムセッティングなど、熟練の手による工芸装飾を施した65点の新作時計が展示され、世界から集まった時計愛好家が熱い視線を注ぐ。今年は、世界各地の自然や文化、歴史に着想を得た幅広いテーマを展開。モチーフは自然、文化、歴史に加え、ギターやダンサーもあり、写実派からジャポニズムなど多彩な描写も目を飽きさせない。

4世紀以上受け継がれる装飾技法を研鑽した逸品は腕時計や懐中時計、ドームテーブルクロックと多岐にわたり芸術品として表情豊かに輝く。希少な手仕事を時計づくりに息づかせることこそ、時計伝統の継承者たるパテック フィリップの本懐なのだ。

Penが注目した、リストウォッチ3選

1. 世界地図

1_PP_5531G-010_SDT_Print High Res TIFF.jpg
世界地図自動巻き、18KWGケース、ケース径40.2㎜、パワーリザーブ約48時間、カーフストラップ、シースルーバック、世界限定数本。¥134,320,000

今年の作品群を象徴する世界地図を、手彫金とシャンルヴェエナメルでセンターサークルに表現した、ワールドタイムとミニッツリピーター搭載の一本。まず海底の深さを精巧な手彫金でかたちづくり、青の半透明釉薬を施す。さらに3色の透明釉薬を用い、中央海嶺と海溝のコントラストを演出した。これを約780℃で10〜15回焼成を重ねた後、彫金師の手仕上げで大陸の緻密な起伏を浮かび上がらせた。

a_PP_5531G-010_DET_Original.jpg
南十字星から着想を得たスケルトンの時針。シャープな菱型の分針は羅針盤を思わせる。

 

---fadeinPager---

2. エレキ・ギター

2__PP_5278_50R-011_SDT_Print High Res TIFF.jpg
エレキ・ギター/自動巻き、18KRGケース、ケース径42㎜、パワーリザーブ約48時間、シースルーバック、カーフストラップ、世界限定数本。¥113,970,000

伝統装飾にはクラシカルな図柄が多いが、ミニッツリピーター搭載の「カラトラバ」に施されたのはギブソンのエレキギター「レスポール」だ。17種類の色、質感、木目の異なる木から336枚のピースとさらに小さな18個のインレイを切り出し、マルケトリで仕上げた。一部には実機と同じ木材を用い、陰影とともに立体感を演出。1950年代以降、音楽の世界を変えた名機をたたえる逸品だ。

 

3. フエゴ火山

3_PP_5738_50G-044_SDT_Print High Res TIFF.jpg
フエゴ火山/自動巻き、18KWGケース、ケース径34.5×39.5㎜、パワーリザーブ約48時間、アリゲーターストラップ、世界限定数本。¥23,400,000

黄金分割から生まれた美しいプロポーションの「ゴールデン・エリプス」の文字盤には、グアテマラのフエゴ火山の壮大な噴火がクロワゾネエナメルで描かれている。金線で火山や月の輪郭をつくり、半透明の釉薬の下に金箔を埋め込むパイヨネエナメルでマグマを表現するとともに、5色のエナメル細密画で満月を正確に描き出す。文字盤は770℃で10回の焼成を必要とした。

---fadeinPager---

Penが注目した、ポケットウォッチ3選

1. フラメンコ

5_PP_992_198J-001_DOS_Print High Res TIFF.jpg
フラメンコ/手巻き、18KYGケース、ケース径44.1㎜、パワーリザーブ約50時間、世界限定1本。¥122,110,000

今回のハイライトとして注目を集めたのが、スペイン語でフラメンコの踊り手を意味するバイラオーラを描いた懐中時計だ。ケースバックには、ギョーシェ装飾のソレイユモチーフでスポットライトを表現し、金線で枠取りした踊り手や聴衆の図柄に13色の釉薬を用いた。さらに手にした扇子には5色の釉薬によるエナメル細密画を施す。これらには760〜780℃で合計20回の焼成を重ねている。

6_PP_992_198J-001_SDT_Print High Res TIFF.jpg
文字盤には、円形の波状模様のギョーシェ装飾に赤い半透明のフランケエナメル技法が施されている。

 

 

2. トワル・ド・ジュイ

7_PP_995_146J-001_DOS_Print High Res TIFF.jpg
トワル・ド・ジュイ/手巻き、18KYGケース、ケース径45㎜、パワーリザーブ約50時間、世界限定1本。¥99,720,000

18世紀にフランスで誕生した伝統的なテキスタイルデザイン「トワル・ド・ジュイ」から着想を得て、ジャングルに佇む虎の情景を、単色刷りを思わせるエナメル細密画で表現。まず輪郭を描き、白エナメルで象嵌する。その上にバイオレット・ブルーのエナメルで背景や虎を細密な色の濃淡で表現し、仕上げには透明釉薬で装飾を保護して色を強める。780〜830℃の高温で11回の焼成工程を経る。

 

 

3. 真珠

8_PP_999_100G-001_DOS_Print High Res TIFF.jpg
真珠/手巻き、18KWGケース、ケース径48.7㎜、パワーリザーブ約36時間、世界限定1本。¥172,990,000

過去のパールとダイヤモンド装飾の懐中時計に着想を得た、ジェムセッティングの華やかさが際立つ一品。まず彫金師がデザインのモチーフを彫り、エナメル職人が渦巻きの輪郭を金線でつくる。そのくぼみを透明と不透明の2色の釉薬で埋め、800〜805℃で10回焼成。最後にジェムセッターがサファイアとダイヤモンドのグラデーション、サイズの異なるハーフパールで優美な躍動感を演出した。

希少なハンドクラフトの詳細はこちら

---fadeinPager---

Penが注目した、ドームテーブルクロック3選

1. コンゴウインコ

11_PP_22000M-001_SDT_Print High Res TIFF.jpg
コンゴウインコ/手巻き、高さ213.5㎜×幅128㎜、世界限定1点。¥427,380,000

アマゾンの森の奥深くで戯れる色鮮やかなコンゴウインコのドームテーブルクロック。鳥の輪郭や羽毛、ストレリチアの草花を金線で描き、48色の釉薬によるクロワゾネエナメルと4色のエナメル細密画で生命感を宿した。アワーサークルにはダイヤモンドのスノーセッティングを施し、ブラックスピネルやサファイアなどのインデックスを配す。ケースも虹を思わせる貴石で縁取られる。

12_PP_22000M-001_DET_Original.jpg
コンゴウインコはエナメル細密画で描かれ、自然な極彩色が黒の背景に浮かび上がる。

 

 

2. 帝国の着物

10_PP_10048M-001_SDT_Print High Res TIFF.jpg
帝国の着物/手巻き、高さ152.35㎜×幅92.6㎜、世界限定数点。¥39,690,000

日本の国宝である明治時代の着物に着想を得て、月光を浴び、水面に飛び上がる鯉や風にゆれるしだれ柳を描いた。まず図柄を金線で枠取り、12色の釉薬を用いたクロワゾネエナメルと5色のエナメル細密画で美しい紫色のグラデーションとなめらかな着物のニュアンスを表現。さらにパイヨネエナメル技法で切り抜いた金箔を埋め込み、やわらかな月明かりのコントラストを演出した。

 

 

3. シャムワニ

9_PP_20214M-001_SDT_Print High Res TIFF.jpg
シャムワニ/手巻き、高さ213.5㎜×幅128㎜、世界限定1点。¥45,790,000

描かれているのは、夜、睡蓮の間を泳ぐシャムワニ。絶滅の危機に瀕する爬虫類へのトリビュートとして描いた。白磁で知られるフランス・リモージュ地方発祥の白リモージュによるグリザイユエナメルを施し、ミッドナイトブルーの半透明エナメルをベースに微細な筆と針でワニの動きが水面につくる波紋を表現。花の中央には金粉を添え、静謐なモノトーンの世界に光を宿した。

パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター

TEL:03-3255-8109
www.patek.com

関連記事