【押井守と神山健治が初対談!】AIが人格を持つ日は来るのか、攻殻機動隊を通して考える

  • 文:藤村はるな
  • 進行:藤田直哉
  • 写真:澤田健太
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かつて描いた未来に、我々はいま立っているのだろうか──。攻殻機動隊を代表する2作品を手掛けた、押井守と神山健治。意外にも、雑誌での対談は初となるふたりが語り合った。

日常のツールとして急速に浸透したAIは、過去に例を見ない早さで進展している。そんな世界をネットの普及前、80年代末に予見した『攻殻機動隊』を、デザイン、都市論、宗教学など多様な視点から紐解いた。“新たな古典”と呼べる奥深き作品世界へ、いざ、飛び込もう。さらに、『攻殻機動隊』とPenがスペシャルコラボした「笑い男」ステッカーが巻末に収録。スマイルマークに添えられる文字は劇中と異なる『Pen』オリジナルであり、本誌だけの特別仕様で蘇る限定アイテムにも注目だ。

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AIがAIを生成するようになる⁉︎

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ともに日本のアニメ界を牽引する存在である押井(左)と神山(右)。神山は、90年代に押井が若手クリエイター育成のために開催したプロジェクト「押井塾」出身者でもある。その後も、押井が脚本を手掛けた映画『人狼』で神山が演出を手掛けるなど交流もあったことから、ふたりは「師弟のような関係」とも呼ばれるが、このように対談する機会は少ない。

AIが日常生活に浸透した現代。攻殻機動隊の作品世界で先駆的にテクノロジーのあり方を描いた監督たちは、いまの社会をどのように見ているのだろうか。

そこで『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や『イノセンス』を手掛けた押井守と、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下『S.A.C.』)や『攻殻機動隊 SAC_2045』(以下『SAC_2045』)を世に放った神山健治の対談を実施。AIや身体論などを軸に議論した。

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押井 守⚫︎アニメーション監督。1951年、東京都生まれ。77年にアニメ業界へ。95年に発表した『GHO
ST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』 はビルボード誌で日本映像作品史上初の1位を獲得。2004年には同作の続編である『イノセンス』を公開。ほかにも『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『天使のたまご』『機動警察パトレイバー』など多数の名作を手掛け、日本アニメ界のレジェンドと呼ばれる。公開40周年を記念した『天使のたまご 4Kリマスター』も昨年11月から全国の劇場で順次公開され、大きな話題に。
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神山健治⚫︎アニメーション監督。1966年、埼玉県生まれ。背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。2002年『ミニパト』で監督デビューを果たす。同年に『S.A.C.』を放送開始。04年に『2nd GIG』、20年には『SAC_2045』を手掛けた。他にも『ひるね姫』や『東のエデン』などの名作を発表しながら、海外でも活躍する神山は、2021年には『スター・ウォーズ:ビジョンズ』から派生したオリジナルアニメーション『九人目のジェダイ』の総監督を担当。26年には『九人目のジェダイ』の長編シリーズをディズニープラスで独占配信予定。

——この数年におけるAIの進化は驚異的で、攻殻機動隊で描かれていた世界が現実のものになりつつあります。おふたりはAIの進化を、どう捉えていますか?

押井 神山はAI使ってる?

神山 少しは使うけど、仕事では使ってないかな……。AIのあり方が、僕らの予想したような方向には進んでいないですよね。

押井 AIがどんなかたちで進化すると思っていたの?

神山 AIが自我を確立して「人類を支配する」とか言い出す展開がもっと出てくるのかな、と。そういったSF的な展開が、我々の理想のひとつでもあったから。

押井 映画『ターミネーター』に登場する最大の敵、スカイネットみたいな話だよね。自我を持ったコンピューターが人類を支配し、滅ぼそうとする……という。

神山 そう。現時点でのAIは、僕らの予想に反して優秀な検索ツールに収束している気がする。

押井 いまのAIがやっていることって、結局はネット上にあるデータリソースの組み合わせに過ぎないからね。「かわいい女の子の画像をつくって」と頼んでも、条件次第では出力されたものがすべて同じ顔になる可能性もある。

神山 与えられた情報が同じである以上、結果が同じになる。それがツール化の問題ですよ。

押井 でも、今後AIが検索ツールを超えた存在になる可能性は十分にあると思うよ。数年前に人工知能の研究者と対談した時に、彼らの目的は「AIを人間の知能に近づけることではない」と言われたんだよね。むしろやりたいのは、人間とは異なる美意識や感情、ロジックを持つ知性を生み出すことだと。そう考えると、AIが人間とは違う思考回路を持つ存在になってもおかしくないよね。

——それは押井監督が『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で描いた国際的ハッカー、人形使いのような存在でしょうか?

押井 確かに。作中で彼は「自分はAIじゃない」と言っているけれど、〝人間とは違う思考回路を持ったAI〟に近いかも。

神山 僕は、いまのAIについては、まだまだ人形使いとは全然違うものだと思っていて。正直、僕がつまらないのはそこなんですよ。本当は人形使いみたいに「俺は生命体だ」「亡命を希望する」とか人間が予想もしないことを言い出してほしいんです。もちろん、AI同士でしかわからない言語をAIが使い始めれば、勝手に進化を遂げるだろうから、人間の手には負えない存在になることも織り込み済みで、現状のAIがああなっているんだとは思うけど。

押井 マシンラーニングのように、AIがAIを生成するようになればそんな未来もあるかもしれない。ただ、AI言語やロジックがわからない私たちには、その変化を認識できないだろうけど。

神山 確かに。AI側が人間を支配し始めても、人間の視点からはそれが支配だと理解できなくなる可能性もあるでしょうね。

——そこまでAIが進化したら、人形使いが宣言したように「生命体」と呼べるのでしょうか?

※対談の続きは、Pen 2026年3月号の『士郎正宗から押井守、新作アニメまで――攻殻機動隊を見よ』にて掲載しています

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