写真や絵、文章、装丁で、クリエイターの思いや表現を伝えるアートブック。実は、芸能界にはこうしたアートブックの愛好家が多い。井桁弘恵、片桐 仁、luka、アートやデザインに造詣が深い3人から、自身が愛してやまないお薦めの一冊を聞いた。
自由かつ多彩な表現をかたちにしたアートブックがいま、面白い。本特集では、数々の傑作をたどりながら、つくり手たちの言葉を紐解き、さまざまなアートブックに出合える書店やフェアまで網羅した。自分だけの一冊を見つけ、奥深いアートブックの世界をともに語り尽くそう。
『アートブックを語ろう』
Pen 2026年1月号
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写真で知る、世界各地の「生死」の在り方
話題作に多数出演中の女優・井桁弘恵。フィルムカメラ愛好家でもある彼女が選んだのは、「メメント・モリ」をテーマにした写真集。
「恵比寿にある東京都写真美術館で購入。さまざまな国、地域での生と死がまざまざと写し出されていて衝撃を受けました。この本を読み返す自分のタイミングによって、生死とはなにかという受け取り方が変わりそうな気がします」
一方、癒やされたい時に開くのが、スヌーピーとオーストラリアのロットネスト島で購入したクォッカ・ワラビーの写真集。
「スヌーピーは撮影中に偶然入った古書店で購入しました。年季は入っているけれども、日本語のフォントや絵のタッチから時代性を感じられます。あと、クォッカ・ワラビーの写真は眺めるだけで、ポジティブな気分になれますね」
1. 『スヌーピーブックス』24・25チャールズ・M・シュルツ 著、谷川俊太郎 訳、KADOKAWA
2. 『メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか』浜崎加織 編、東京都写真美術館
3. 『ザ・クオッカズ・ガイド・トゥー・ハピネス』アレックス・カーンズ 著、ABCブックス
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ジオラマ、土偶、SFなどの造形美に浸る
粘土アート展を開催するなど作家としても活動する片桐仁。今回、彼が挙げたアートブックは、造形への深い愛が伝わるものばかり。
「まずはリアルクリーチャー造形の第一人者、竹谷隆之さんによるジオラマ写真集。北海道のミュータントと漁師のカネヒサ爺さんが戦うSF小説とともにつくられた前代未聞の本です。あと、縄文好きとしては小川忠博さんの『土偶美術館』もお薦め。土偶は色がなく縄を転がした跡などが見えづらいですが、独自の照明技術と撮影方法で見えることを知りました」
そして発売日に本屋へ走ったのが、『ファイブスター物語』の大判B4サイズのデザイン&解説集だ。
「本屋さんの袋に入らず抱えて帰りました。原作者・永野護先生の頭の中をのぞいた気になれて、これ一冊で何日も楽しめます」
1.『漁師の角度 完全増補改訂版』竹谷隆之 著、講談社
2.『土偶美術館』小川忠博 写真、原田昌幸 監修、平凡社
3.『F.F.S. DESIGNS 7 ASH DECORATION』永野護 著、KADOKAWA
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いましかない瞬間から、インスピレーションを得る
写真という媒体を通じて己の感性を磨き続けるのが写真家/モデルのluka。彼女が選んだのは、個性豊かな3冊の写真集だった。
「アートブックは、写真制作のインスピレーションを得るために開くことが多いです。チャド・ムーアの『メモリア』は、その瞬間の光や空気、被写体との距離感がリアルなのにどこか夢のよう。いましかない瞬間をどう写すかを考えるとき、手に取ります。写真家の中野道さんの写真集『あかつき』は、なにげない日常の中にある美しい瞬間を思い出させてくれます」
加賀まりこの写真集『プライベート/私生活』は、本から流れ出る当時の空気感に惹かれた。
「メイクや服装、仕草も素敵で、ポートレートの参考になります。いつかこんな風に一人の人物を追った写真集をつくってみたいです」
1.『メモリア』チャド・ムーア 著、アニエス・ベー&パシフィック
2.『あかつき』中野道 著
3.『プライベート/私生活』立木義浩 著、毎日新聞社
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