【TOKYO ART BOOK FAIR 2025完全ガイド】主催マネージャーが語るアートブックフェアの見どころと楽しみ方

  • 編集&文:谷田部 凱
  • 協力:東京アートブックフェア
Share:

12月11日からいよいよ始まる、アジア最大級のアートブックフェア「TOKYO ART BOOK FAIR」。今年はさらに規模を拡大し、2週にわたって開催される。数万人が足を運ぶ通称“TABF”の魅力を紐解いた。

自由かつ多彩な表現をかたちにしたアートブックがいま、面白い。本特集では、数々の傑作をたどりながら、つくり手たちの言葉を紐解き、さまざまなアートブックに出合える書店やフェアまで網羅した。自分だけの一冊を見つけ、奥深いアートブックの世界をともに語り尽くそう。

『アートブックを語ろう』
Pen 2026年1月号
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら


2万人が集う「アートブックの祭典」
FB-8_s-TABF24_0120.png

今年15回目を迎えるTABF。世界から人が集まるフェアへと成長した。(以下、特に記載のない写真は2024年の様子)© Hajime Kato

アジア最大級のアートブックフェアとして知られる「TOKYO ART BOOK FAIR」、通称TABF。初回の2009年は約4千人、そして昨年は2万人超が参加するなど、近年めざましい盛り上がりを見せている。出展者と来場者の増加を受けて規模を拡大し、今年は初の試みとして2週にわたっての開催となる。各週約280組、合計約560組の出展者による独創的なアートブックが一堂に集結する、まさに「アートブックの祭典」だ。フェアの創設メンバーであり、プロジェクトマネージャーの東直子はこう語る。

A.JPG
東直子⚫︎1981年、熊本県出身。編集者として活動し、2009年の第1回「TABF」の立ち上げに参画。以来、プロジェクトマネージャーとして、出展者の選定、企画設計、国際協働プログラムなどを統括。地域発のアートブックフェアや国内外問わず出版にまつわる展示やイベントの企画制作などを手掛け、本と人が触れ合う場を広げている。

「アートブックとの偶然の出会いもTABFの醍醐味ですが、『想像より規模が大きく回りきれなかった』という声もよく耳にします。事前にどんなエリアがあるか、どんな人が出展しているか下調べして来場するのがお薦めです」

お目当てのクリエイターと直に対話できるのが、こうしたフェアの大きな魅力。今年は週ごとに出展者が総入れ替えとなるので、事前のチェックは欠かせない。

「出展者も、『本について話したい』という気持ちが強いので、『素敵な本ですね』『どうつくったんですか?』と気軽に声をかけてみると、会話が広がるはずです」

より深くアートブックの世界を楽しむ仕掛けも用意されている。たとえば、印刷会社や用紙メーカーなどのブースが並び、本づくりの裏側が垣間見える「PRINTER エリア」は世界のフェアでも特徴的だという。アートブックづくりのエキスパートたちが、出展者や来場者の本づくりへの質問に熱く答える姿が例年見られるそうだ。  

名称未設定のデザイン.jpgwew.jpg
アジアのアートブックフェアとしても先駆けとなったTABF。世界で活躍する著名なアーティストやデザイナーをはじめ、国内外の特色ある出版社、そして個人制作のZINEを手掛ける出展者まで多彩な人々がブースを設け魅力的な本が並ぶ。© Hajime Kato

「半数以上が海外からの出展者というのも、TABFの特色です。実際に、会場ではさまざまな言語が飛び交っています。各ブースに国名を掲示しているので、それが会話のきっかけになればうれしいですし、国ごとの特徴を探すのも楽しいですよ」

TABFの魅力は本を手に取る体験にとどまらない。本にまつわるトークショーやライブ、分野を横断して活動するユニット「エルパック」がキュレーションする飲食エリアも充実。さらに会場を起点に清澄白河の街を自転車で巡る参加型の企画も行われ、街全体がひとつのフェスティバルとして盛り上がる。本を介して人と出会い、街とつながり、新たな視点を持ち帰る。そんな出会いをぜひ楽しんでほしい。

FB-1_TABF_2009_01.jpg
2009年のTABF初開催の様子。初回は表参道の「GYRE(ジャイル)」と原宿の「Vacant(バカント)」の2会場で行われ、大盛況で幕を閉じた。
FB-2_s-TABF24_0123.jpgFB-3_s-TABF24_0997.jpg
上:TABFはさまざまな場所での開催を経て、2019年から継続して東京都現代美術館で開催されている。 下:来場者は毎年約2万人を超え、クリエイターや出版社、国内外からの来場者まで、グローバルな空間で会場は熱気に包まれる。© Hajime Kato

 

---fadeinPager---

押さえておきたい5つのエリア
PEN202601_FULL-46.jpg

エリアマップ 東京都現代美術館の2フロアで展開されるTABF。5つの主要エリアのほか、サンクンラウンジではトークやワークショップ、ライブなどが開催され、アウトドアラウンジにはフードショップが立ち並ぶ。

①ENTRANCEエリア(1F)
FB-9_s-TABF24_0103.jpg

TABFの“入り口”は、アートブックと触れ合う出発点。© Hajime Kato

会場に入ってまず目に入るのが、「ENTRANCEエリア」。国内外の人気出版社やアーティストのブースが所狭しと並び、アートブックの魅力を直感的に感じられる空間だ。ここでは気軽に立ち寄って新しい作品集やZINEを手に取ることができる。初めて訪れる人にも安心感があり、まさにTABF全体の雰囲気を象徴する“入り口”といえる。初来場の人はまずここで、魅力的なアートブックと心ゆくまで触れ合うのがお薦めだ。気になる本や出展者を見つけたら、気軽に声をかけてみよう。

②PRINTERエリア(1F)
FB-11_s-TABF24_0531.jpg

印刷から製本まで、本づくりの裏側を体感する。© Hajime Kato

印刷所や製本所、用紙、加工メーカーなどが出展する「PRINTERエリア」。このエリアの特徴は、来場者が実際に本づくりのプロセスに触れられること。紙の種類やインクの発色、製本の仕上げなど、普段は出版社や工場でしか見られない見本が展示されるだけでなく工程の一部をプロの解説つきで体験できる。これから自分で本づくりに挑戦してみようと思っている人はもちろん、表現をさらに磨きたい人にもお薦めだ。TABFが先駆けて設けたこのエリアは、ほかのフェアにはあまり見られない特徴的な存在で毎年高い人気を誇る。

③ZINE’S MATEエリア(B2)
FB-10.jpg

新たな才能に出会える、TABFの原点を継承する場。© Hajime Kato

TABFの創立当初の名称「ジーンズメイト東京アートブックフェア」。その名を受け継ぐ「ZINE’S MATEエリア」は、TABFの原点ともいえる企画だ。初めて出展する参加者を中心に構成されており、自費出版のZINEをはじめ、アーティストやインディペンデントレーベルの創意工夫が凝らされたアートブックが集まる。「TABFの精神『誰もが本を通じて表現できる』を象徴するセクションで、出展者の熱量が高いエリアです」と東。アートブックの未来を拓く次なる才能に出会える場であり、創作意欲をかき立てられる場でもある。

④PLAYGROUND(B2)
FB-14_s-TABF24_0058.jpg

初めてのアートブック体験で、子どもの創造力を養う。© Hajime Kato

子どもと一緒に楽しめるプログラムを集めた「PLAYGROUND」。2022年に、子どもたちがアート性の高い絵本と触れ合える読書空間「キッズ リーディングルーム」を設けて好評を博し、親子連れのリピーターが増加したことをきっかけに拡充されたエリアだ。ゲストカントリーや日本の絵本との出合い、そして読み聞かせイベントはもちろん、アーティストらによるワークショップなど多彩な催しが開催され、創造性や表現力を育む場となっている。託児サービスも利用できるので子ども連れはチェックしたい。

FB-13_s-TABF24_2019.jpg
FB-12_s-TABF24_1615.jpg
左:想像力を引き出すアーティストによるワークショップを多数開催。 右:エリア内に「アートブックベンディングマシーン」を設置。コインを入れると、プレイフルな音楽が流れ、ランダムに絵本が出てくる仕掛けになっており、ワクワクする本との出合いを届けてくれる。© Hajime Kato

⑤EXHIBITION SPACEエリア(B2)
FB-15_s-TABF24_0576.jpg

世界で活躍する、著名なクリエイターたちと出会う。© Hajime Kato

「EXHIBITION SPACEエリア」は国際的に活動する出版レーベルやアーティスト、ギャラリーが数多く出展し、アートブックの最前線に触れられる場所だ。ここでは、世界的に知られる作家の新作や限定版、さらに希少な原画なども並び、本にサインする著名作家の姿がふと目に留まることもある。作品の背景にあるストーリーや創作哲学を、直接作家から聞ける貴重な機会にもなる。アートブックを通じた国際的な交流が生まれる場であり、アートブック出版の可能性を探るプラットフォームにもなっている。

FB-16_s-TABF24_2107.jpg
例年、ゲストカントリーとして招待される国のブースも立ち並ぶ。2025年はイタリア。あらかじめ出展者の公式サイトを見て展示内容をチェックしておきたい。© Hajime Kato

TOKYO ART BOOK FAIR 2025

■開催期間
【第1週】
12/11 12時〜19時(最終入場18時30分)
12/12〜14 11時〜18時(最終入場17時30分)

【第2週】
12/19 12時〜19時(最終入場18時30分)
12/20〜21 11時〜18時(最終入場17時30分)

■開催場所
東京都現代美術館 東京都江東区三好4-1-1 

■入場料
一般 日時指定オンラインチケット¥1,165(手数料込み)、当日券¥1,200、小学生以下無料
https://tokyoartbookfair.com

関連記事

Pen1128売_表紙_RGB.jpg
『アートブックを語ろう』 ¥990

Pen 2025年12月号
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら