ジャガー・ルクルトの名作「レベルソ」に宿る、100年を超えて継承されるアールデコのデザイン

  • 写真:渡邉宏基(LATERNE), 宇田川 淳
  • 文:柴田 充
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なめらかでやわらかな肌触りのミラネーゼブレスレットを纏った2025年の新作「レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド」。「レベルソ」は初期からさまざまなバリエーションがつくられており、スモールセコンドもそのひとつ。

ジャガー・ルクルトの「レベルソ」が初代から継承するデザインは、決して一過性ではなく、タイムレスな魅力を放つ。機能的でありながら装飾的。変化を感じさせず、進化する。それが「レベルソ」だ。

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初代の意匠を受け継ぐ、モノフェイスの「トリビュート」モデル

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レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド/「レベルソ・トリビュート」のシリーズは、ドーフィン針やバーインデックスといった初代のデザインを再現する。ケースと同色で統一した文字盤は、グレイン仕上げでクラシックテイストを演出。手巻き、18KPGケース&ブレスレット、ケースサイズ45.6×27.4㎜、パワーリザーブ約42時間、3気圧防水。¥6,600,000

衝撃から文字盤を守るという機能性から生まれた「レベルソ」が、これほどの長きにわたって愛され続ける理由のひとつにデザインがあることは言うまでもない。それはアールデコ様式に基づく。

1925年のパリ万国博覧会からアールデコの名は広まり、世界を席巻した。機械文明の美的表現に則り、幾何学模様や流線形、金属の美しさによる装飾美術は、本来、バウハウス的な無機質な機能主義とは対照的だが、それを機能美へと昇華したエレガンスが「レベルソ」のデザインには宿る。オリジナルのデザインを現代に受け継ぐ「レベルソ・トリビュート」からもそれは見て取れるだろう。

直線的なケースからストラップにシームレスな曲線を描くフォルムは当初「キュビズムのトノー型」と呼ばれたほど。ケースの上下に施されたゴドロン模様は、ニューヨークに伝播し、摩天楼に群居する建築装飾を思わせる。だがそれも本来は、反転ケースの継ぎ目を目立たなくさせるための技巧であり、機能と渾然一体となった「レベルソ」のデザインの深遠だ。

マスターピースと呼ばれるデザインは、外観が変化しているように見えることなく変化し発展するというパラドックスが成立する。この進化で「レベルソ」は不動の地位を確立したのだ。

レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンドの詳細はこちら

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シンプルな2針かスモールセコンドの3針か、バリエーションも豊富な「モノフェイス」


初代のオリジナルにより近い、小ぶりな2針をモダンに解釈

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レベルソ・トリビュート・モノフェイス/手巻き、SSケース、ケースサイズ40.1×24.4㎜、パワーリザーブ約42時間、カーフストラップ、3気圧防水。各¥1,425,600

初代オリジナルのデザインコードを踏襲し、小ぶりなケースにシンプルな2針の美しさが際立つ。サンレイブラッシュ仕上げのブルー文字盤(写真左)とオパーリン仕上げのシルバーグレー文字盤(写真右)に、いずれもストラップは100年以上の歴史を持つアルゼンチンの高級手づくりポロブーツメーカー、カーサ・ファリアーノが監修する。

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1931年に発表された「レベルソ」の初期モデル。ブラック文字盤にレイルウェイのミニッツトラック、剣型の針とペンシル型のインデックスを備え、「REVERSO」 のロゴが掲げられている。そのスタイルはいまもほぼ変わらない。



優美なアールデコを想起させる、カラー文字盤を鮮やかに再現

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レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド/手巻き、ケースサイズ45.6×27.4㎜、パワーリザーブ約42時間、カーフストラップ、3気圧防水。上:18KPGケース、交換可能な同色のキャンバス×カーフストラップが付属。各¥3,784,000 下:SSケース。各¥1,698,400

ジャガー・ルクルトは初代レベルソの発表からわずか1年の間に、多彩なデザインやサイズのバリエーションをはじめ、当時としては斬新なカラーラッカー仕上げの文字盤をあしらったモデルもカスタマイズの選択肢として発表していた。エレガントな往時のアールデコの装飾美を想起させる、鮮やかなカラー文字盤をスモールセコンド仕様で再現し、白文字盤を除き、カーサ・ファリアーノがデザインした同色のストラップで統一する。

レベルソ・トリビュート・モノフェイスの詳細はこちら

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エングレービングで描く、オリジナリティあふれる世界に“ひとつ”の物語

「レベルソ」の大きな特徴が反転式のケースで、モノフェイスの裏面は自由なキャンバスとなる。裏面に豊かな発想で刻まれたエングレービングは、「レベルソ」を世界に1本の自分だけの時計に変える。それは世代を超えて、大切な人へと想いをつなげていく。

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エングレービングはジャガー・ルクルトの熟練した職人たちが手掛ける。イニシャル、日付、数字、干支などが定型モチーフとして用意されている。

スポーツユースに限らない「レベルソ」の魅力に最初に気付いたのも、インドでポロ競技に興じた将校たちだったのかもしれない。本来は文字盤を守るための、反転した無垢のケース面は、イニシャルや紋章、記念日を刻むには最適で、インド王宮を訪問する際にも身に着けられるよう、彼らはそこにクラブの記章を記したという。そんなスポーツジェントルマンらしいエピソードも残っている。

メゾンによる卓越したエングレービングを施すパーソナライゼーションの伝統は現在も継承され、愛好者も多い。そこでは、イニシャルや日付、メッセージ、アートワークといった内容を、用意したフォントやパターンのほか、顧客が指定するモチーフでのフルオーダーも受け入れる。メゾンの熟練職人による世界に1本の時計だ。

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既成のデザイン以外にも、顧客からのパーソナライゼーションの要望に沿って、メティエラール工房による手彫りエングレービングでも対応。詳細はジャガー・ルクルトのブティックにて相談を。

今回特別に、実際にパーソナライゼーションをオーダーした「レベルソ」のオーナーたちに愛用の時計を紹介してもらった。

そこから浮かび上がってくるのは、一人ひとりの思い出深い出来事や家族への深い愛情であり、それはいつまでも変わることはない。そしてその想いとともに、「レベルソ」も世代を越えて受け継がれる。恒久の時を刻み続けるとともに、かけがえのない大切な物語をそこに刻むのである。

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実際にオーダーされた、個性あふれるパーソナライゼーション

Case①
家系について思いを巡らせ、大切な我が子へと残すために 

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「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」に、家紋をエングレービングした。オーナーは、両親を亡くし、長男であることから家系について考え、趣味でもある時計にそれを刻むことを思い立ったという。実は写真のブルー以外にグリーン文字盤の同モデルも所有しており、これにも同じ家紋を刻む。ふたりいる息子に残し伝えるためだ。


Case②
ふたりの愛の誓いの瞬間を、記憶とともにいつまでも残す

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刻まれているのは、グアムの海を背景に、結婚式を挙げたクリスタルチャペルの前に立つ妻とオーナー自身の姿。3カ月後に挙式を控えていた当時、「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」の購入と同時にエングレービングを入れようと急いだのを思いとどまったことで、挙式での実際の光景が残せたと満足する。いまも心の拠りどころだ。


Case③
大切な似顔絵とメッセージを、そのままのタッチで刻む

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妻から「レベルソ・クラシック・スモールセコンド」をプレゼントされた際、5歳になった息子が父の日に描いてくれた似顔絵を「ずっと残したい」という想いからエングレービングを依頼したという。忙しい日々の中、つかの間の休憩で裏面に刻まれた絵を見ると、ささやかではあってもなによりも大切な家族の幸せを感じるとオーナーは語る。


Case④
兄妹が描いたメッセージに、成長の喜びをかみしめる

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夫婦でペアづかいする「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」と「レベルソ・クラシック・モノフェイス」には、子どもたちからの父親への誕生日メッセージとイラストを刻む。成長の喜びをいつまでも残したいとの想いを込めたもので、兄妹が協力して描いたことを思い出し、見る度に力が湧くという。

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ジャガー・ルクルト

TEL:0120-79-1833
www.jaeger-lecoultre.com