ジャガー・ルクルトのアイコン、「レベルソ」誕生の歴史と進化を紐解く

  • 文:柴田 充
Share:
1931年に誕生した「レベルソ」。スイスの名門、ジャガー・ルクルトの数あるコレクションの中でも、メゾンを代表するアイコンだ。

ジャガー・ルクルトの「レベルソ」は1931年の誕生から1世紀近くを経てもなお、いまもその魅力に磨きをかける。連綿と続く系譜は、常に革新と技術の研鑽が注がれてきた。グランドメゾンのアイコンと呼ぶにふさわしい、「レベルソ」の歴史から最新モデルまで全3回に分けて紹介しよう。

【関連記事】
中編:ジャガー・ルクルトの名作「レベルソ」に宿る、100年を超えて継承されるアールデコのデザイン
後編:ジャガー・ルクルトが誇る、ふたつの顔をもつ「レベルソ」の卓越性

1833年創業の「The Watchmaker of Watchmakers」としての真価

JLC_03_MANUFACTURE24_VALLEE__Adobe98-8Bits--MASTER.jpg
JLC_02_MANUFACTURE24_MANUFACTURE__Adobe98-8Bits--MASTERlow.jpg
スイス北西のジュラ山脈、標高1000mにあるジュウ渓谷のル・サンティエは、かつてフランスの宗教迫害から逃れ移住した多くのユグノー派が開拓した。創業者アントワーヌの祖先もそのひとり。いまも変わらぬ自然のなかにジャガー・ルクルトのメゾンはある。

 「レベルソ」がブランドの枠を越え、時計史に燦然と輝くマスターピースであることに異論はないだろう。1931年の誕生以来、基本のコンセプトやデザインを崩すことなく、進化を続ける。それは、まさにグランドメゾンとしてのジャガー・ルクルトの真価を明確に映し出すのだ。

スイスのジュウ渓谷、ル・サンティエ村で小さな金属製品を専門とする鍛冶職人を父に持つアントワーヌ・ルクルトは、そこで磨いた技術をもとに時計職人として1833年に自らのアトリエを開いた。ミクロン単位の計測ができる世界初の測定器「ミリオノメーター」など革新的な発明と卓越した技術でその名を広め、やがて小さな工房をジュウ渓谷初のマニュファクチュールに築き上げた。

メゾンはいまもなおこの地を離れることなく、時計づくりを続けている。190年以上の歴史において、430以上の特許と1400以上の自社キャリバー、180の技巧を擁し、ウォッチメーカーの中のウォッチメーカーとしてアイデンティティを確立している。

レベルソの詳細はこちら

---fadeinPager---

真のマニュファクチュールを貫く、ジャガー・ルクルトの強み


①180もの技巧を継ぐ、クラフツマンシップ精神

JLC_04_2025_Q7122480_REVERSO_MINUTE_REPEATER_SAVOIRFAIRE2_ADOBE98_16_9.jpg
自社一貫製造を貫くマニュファクチュールに求められる技術は幅広い。設計や製造も視野に入れたデザインをはじめ、素材の特性を活かした設計、先端技術を注ぐパーツ製造から精緻な組み立て、調整。さらに伝統的な装飾技法は多岐にわたり、高級時計の完成に必要な180種の卓越した技巧をマニュファクチュールに集結し、一本の時計に凝縮するのだ。


②430以上の特許と1400以上のキャリバーを所有

JLC_05_2025-q7122480-reverso-minute-repeater-savoirfaire5-adobe98-16-9.jpg
メゾンがこれまで取得した発明の特許は、なんと430種以上に及ぶ。豊かな創造力と常にチャレンジを続ける精神に加え、その技術を駆使した自社キャリバーは既に1400種を超える。いずれも独自の機能やデザインを併せ持ち、オリジナリティを追求した時計を生み出すためには不可欠であり、それこそがマニュファクチュールの真価なのである。

レベルソの詳細はこちら

---fadeinPager---

1931年誕生の「レベルソ」を紐解く、4つのキーワード


①モダニティ

JLC_06_Reverso_1931_FN.jpg
マシンエイジの1930年代、機械が象徴するスピード感やダイナミズムの中で生活様式も変化した。時計も懐中時計から腕時計に主役の座は変わり、なかでも一般的な時計にはない「レベルソ」の機能美は熱い注目を集めた。


②アールデコのエレガンス

JLC_09_1920_jaeger-lecoultre-reversotributesmallseconds-pg-blackdial-metiersgeste-16.9.jpg
初代のオリジナルから継承する、幾何学模様や直線的フォルム、すっきりとしたラインが強調されたアールデコの様式美を踏襲する。先を絞った三角形のラグやケースの上下に入ったゴドロンのストライプ装飾に不変のエレガンスが漂う。


③スポーツのDNA

JLC_08_POLO_16.9.jpg
「狂騒の20年代」を経て、紳士たちの関心はスポーツへと向けられ、それは社交の場にもなった。ポロ競技もそのひとつ。彼らは、先進的な発想を持ち、競技中でも時計を身に着けていた。アクティブな機能性は「レベルソ」のDNAとして宿る。


④画期的な革新性

JLC_07_jlc-reverso-hybris-mechanica-calibre-185-mainvisual-b.jpg
1994年に登場した「レベルソ・デュオ」は、それまで無垢だったケースの裏側に文字盤を備え、第2時間帯表示の付加機能を備えた。これを端緒に、2021年には台座の表裏も含めた世界初の4つの文字盤を備えた超複雑機構も実現している。

レベルソの詳細はこちら

---fadeinPager---

グランドメゾンが生んだ、時代を超えて愛される不朽のアイコン「レベルソ」

「レベルソ」の誕生は、1930年にメゾンに持ち込まれたひとつの案件がきっかけとなった。インドでのポロの試合に参加した英国陸軍将校が競技中に時計のガラスと文字盤を破損してしまい、その依頼から、開発がスタート。解決策として、長方形のケースを反転して裏側にすることで衝撃から守るという画期的な構造が発案されたのだった。翌年にはパリ特許局でその構造について特許を取得し、早くも同年31年に「レベルソ」は誕生したのである。

当初こそポロ競技用のスポーツウォッチとして開発されたものの、革新的な反転ケースの可能性はそれにとどまることはなかった。スポーツを出自にしたアクティブな機能性に加え、全盛期だった芸術運動のアールデコの様式を取り入れたデザインは、モダニティとエレガンスを漂わせた。

このスタイリッシュな魅力は、時計としての実用性に加え、装飾品としての新たな扉を開く。反転したケースの裏側はクリエイティビティのキャンバスとなり、エナメルやエングレービング、ジェムセッティングといった繊細なクラフツマンシップが注がれたのだ。まさに手首のアートである。

さらなる進化を促したのは、やはりマニュファクチュールの真髄たる技術開発力だった。装飾に代わり、もうひとつの文字盤として新たな機能をそこに加えたのだ。

偉大なヘリテージを受け継ぎ、進化を止めることはない。それこそが「レベルソ」がメゾンのアイコンたるゆえんである。

レベルソの詳細はこちら

【記事の続きはこちら】
中編:ジャガー・ルクルトの名作「レベルソ」に宿る、100年を超えて継承されるアールデコのデザイン
後編:ジャガー・ルクルトが誇る、ふたつの顔をもつ「レベルソ」の卓越性

ジャガールクルト

TEL:0120-79-1833
www.jaeger-lecoultre.com