腕時計の黎明期に登場したメゾンのヘリテージを復刻する流れや、20世紀半ばのレトロデザインへのオマージュは、スポーツウォッチでも顕著だ。クラシックとスポーツという相反する要素の融合は、新しい選択肢となる。
<新素材>
オリジナルの意匠を継承しながらも、機能面では大幅に改良。新素材を纏ってアップデートされた新作を紹介しよう。
RADO(ラドー)
キャプテン クック ハイテク セラミック ダイバー
1962年に誕生した傑作ダイバーズウォッチをハイテクセラミックでリメイク。ダイバーズの国際規格ISO6425に準拠し、機能面もアップデートした。大きなアロー型時針とボックス型サファイアクリスタル風防がレトロな雰囲気を醸す。12時位置の錨マークは時計の傾きによって回転する。
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BLANCPAIN(ブランパン)
フィフティ ファゾムス バチスカーフ
1956年発表のダイバーズウォッチをルーツとするコレクションの新作。ケースにサテン仕上げのグレード23チタンを採用している。SSよりも軽量であり、耐衝撃性や耐圧性、耐食性などに優れている。約5日間のロングパワーを誇る自社製ムーブメントを搭載。
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CITIZEN PROMASTER(シチズン プロマスター)
メカニカル ダイバー200m
1977年発売の「チャレンジダイバー」のデザインを継承しながらも、強化耐磁仕様の最新ムーブメントを搭載。ケース素材も軽量で傷に強いスーパーチタニウムを採用し、ケース厚を薄くすることで装着感も向上した。ケースに埋め込まれたような、逆回転防止機構付き回転ベゼルも印象的だ。
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SINN(ジン)
103.TI.AR
1961年に旧西ドイツで創業したジンの最初の時計は、航空機のコックピットクロックだった。その経験から製作されたパイロットウォッチを復刻。ケースは軽量で耐食性や衝撃靱性に優れた純チタン製で、ケース内部をほぼ無水環境にして風防の曇りを防止するArドライテクノロジーを採用した。
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<レトロ・ダイバーズ>
現在の原型となる本格的なダイバーズウォッチが登場したのは1950年代。当時の面影を残すデザインがいま新鮮だ。
BREITLING(ブライトリング)
スーパーオーシャン オートマチック 44
1960年代に製作されたユニークなダイバーズクロノグラフ「スローモーション」にインスパイアされた新作。分表示の視認性にこだわったオリジナルのデザインを継承しており、ダイヤル外周に配置された大きな分/秒表示リングが特徴だ。分針に取り付けられた四角いシンボルも魅力。
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SEIKO PROSPEX(セイコー プロスペックス)
SBDX049
1968年発売の毎秒10振動のハイビートダイバーズを現代的にアップデート。ケースやベゼルなどに、世界最高レベルの腐食耐性を備えたセイコー独自の素材を採用した。
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TISSOT(ティソ)
シースター 2000 プロフェッショナル
1950年代に発表された「ティソ シースター」を継承するコレクションの最新作。飽和潜水に対応した自動ヘリウムエスケープバルブも装備する、600m防水対応の本格的ダイバーズだ。潜水時間などを計測する逆回転防止ベゼルはセラミックをインサート。傷がつきにくく、色艶が永続する。
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<2つ目>
初期のクロノグラフは12時間積算計がなく、秒針と分積算計をインダイヤルとして備えた「2つ目」が一般的だった。
TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ ジャパンリミテッドエディション
1963年に誕生した傑作クロノグラフを継承する日本限定モデル。2つ目風にデザインされたインダイヤルは30分積算計と12時間積算計で、6時位置にスモールセコンドを置く。日本古来の甲冑に施された黒と金をダイヤルで表現。
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ZENITH(ゼニス)
パイロット タイプ20 クロノグラフ シルバー
ゼニスは航空機の黎明期からパイロットウォッチを製作してきた。航空機のボディを連想させるダイヤルには、1904年に商標登録した「PILOT」を記載。ゼニスのパイロットクロノでは初となるスターリングシルバー製のケースで、毎秒10振動の「エル・プリメロ」を搭載する。
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CARL F. BUCHERER(カール F. ブヘラ)
マネロ フライバック 40mm
2016年発表のフライバック機構付きクロノグラフの新作。計測途中でもリセットボタンを押せば、センターのクロノグラフ秒針が瞬時にゼロに戻って再計測を開始する。シルバーダイヤルに映えるグリーンの2つ目のインダイヤルが印象的。
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MONTBLANC(モンブラン)
モンブラン スターレガシー ニコラ・リューセック クロノグラフ
クロノグラフの語源となったとも言われる計測装置を発明したニコラ・リューセック(1781〜1866)の名前と技術を継承する、モノプッシャークロノグラフ。ダイヤル下部の針は水平に固定し、その両側のディスクが回転して60秒と30分を計測する。
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<パイロット>
IWC(アイ・ダブリュー・シー)
ビッグ・パイロット・ウォッチ 43・トップガン
航空機の黎明期、20世紀初頭から操縦士用の時計が製作されてきた。歴史あるブランドに許されたヘリテージデザインだ。
航空機の計器を想起させる視認性に優れたダイヤルデザインと、手袋のままでも操作できる大きな円錐形リューズを特徴とするコレクションの新作。1940年代の飛行監視要員用時計にインスピレーションを得ている。米海軍戦闘機兵器学校=トップガンがモデル名の由来で、最先端素材を纏う。
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LONGINES(ロンジン)
ロンジン スピリット ズールー タイム
1925年にロンジン初の第2時間帯表示付き腕時計が誕生した。そのダイヤルにあった、協定世界時(UTC)=ズールータイムを意味する「Zフラッグ」からインスピレーションを受けたのが、こちらの新作。回転ベゼルの24時間計を矢印付き指針が示すため、これを回せば第3の時間帯も表示可能だ。
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ORIS(オリス)
プロパイロットX キャリバー400
1世紀以上に及ぶオリスのパイロットウォッチの歴史を反映したコインエッジベゼルのチタンケースに、最新の自社製ムーブメントを搭載。約5日間のロングパワーのほか、シリコン製のガンギ車やアンクルなどによって抜群の耐磁性を誇る。10年のオーバーホール期間も魅力。
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<ミリタリー>
兵士が戦場で命を託す軍用時計は、堅牢性や高い精度が求められてきた。その実用性やデザインは根強い人気を誇る。
TUDOR(チューダー)
レンジャー
2022年、英国海軍による北グリーンランド遠征探検から70周年を迎えた。この冒険精神を体現する新作ツールウォッチだ。1960年代に製作されたモデルをルーツとして視認性や堅牢性を追求した。マットなサテン仕上げのケースが硬派な印象だ。大きな矢印型の時針も特徴的。
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PANERAI(パネライ)
ルミノール ビテンポ
第2次世界大戦中に、イタリア海軍特殊潜水部隊が標準装備していたダイバーズウォッチをルーツとするGMTモデル。セルリアンブルーの針が第2時間帯を示す。5時位置のパワーリザーブインジケーターの針も同色に彩る。
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EDOX(エドックス)
スカイダイバー デイト オートマティック リミテッドエディション
スイス軍パラシュート部隊のために、1973年に製作されたミリタリーウォッチを復刻した限定モデル。分経過を計測できる、セラミック製の逆回転防止機構付き回転ベゼルを搭載する。ベージュの蓄光式蛍光塗料と味わいのあるストラップがヴィンテージな雰囲気を醸す。
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HAMILTON(ハミルトン)
カーキ パイロット パイオニア メカ
1970年代に英国空軍に供給されたアビエーションウォッチ(航空時計)を忠実に復刻した。軍用時計の伝統を受け継ぐ、高精度なムーブメントを搭載。ボックス型のミネラルガラス風防に加え、小径のケースと一体化したラグやNATOストラップの組み合わせが往時のイメージを想起させる。
※この記事はPen 2022年12月号「腕時計、クラシック主義」より再編集した記事です。