【新旧名車を比較! Vol.5】アルファロメオ・ジュリア TI & アルファロメオ・ジュリア ヴェローチェ

  • 写真:小林俊樹
  • 文:サトータケシ

Share:

手をかけて育てる楽しみのある「ちょっと古いクルマ」と、歴史とともに培われた技術力によって進化した「長く愛せる新車」。どちらも甲乙付けがたい魅力があふれているのは、よりよいクルマを目指して自動車エンジニアが注いだ情熱があるからこそ。新旧2台のクルマから、その情熱を感じてください。vol.5はアルファロメオ・ジュリア TIとアルファロメオ・ジュリア ヴェローチェが登場!


イタリアの名門が継承する、 “感動を与える”DNA

左は「2017年式 アルファロメオ・ジュリア ヴェローチェ 」、右は「1962年式 アルファロメオ・ジュリア TI 」。盾型のエンブレムが備わるのがアルファロメオの伝統。ミラノ市章とヴィスコンティ家の家紋を組み合わせたものです。車両協力:左/FCAジャパン TEL:0120-779-159 www.alfaromeo-jp.com 右/ガレージ33 TEL:042-468-7433 http://garage33.jp

星の数ほどある自動車のネーミングのなかで、個人的に最も惹かれるのは1954年に登場したアルファロメオ・ジュリエッタです。社名とシェイクスピアの恋愛悲劇のタイトルを掛けるあたりが洒落ています。そしてジュリエッタの姉という位置づけで62年に発表されたのがジュリアです(ジュリエッタは“小さいジュリア”の意)。

ジュリアは、この時代の最先端を行くモデルでした。高度なDOHCエンジンは5速マニュアルトランスミッションと組み合わされ、デビュー時はドラム式だったブレーキもまもなく4輪ディスクブレーキに移行。サスペンションはレーシングモデル譲りの高度な形式で、つまり現代のスポーティモデルとなんら遜色のないメカニズムを半世紀も前に搭載していたのです。

このモデルのヒットにより、アルファロメオは年産1万数千台の規模から10万台を超す量産メーカーに成長。素性のよさが認められたジュリアは、モータースポーツでも活躍しました。

現在のアルファロメオのフラッグシップモデル。同社のセダンとしては25年ぶりにFR(フロントエンジン後輪駆動)を採用した、ファン待望の1台です。

かの自動車王も認めた、最先端を行くブランド

同時代の日本車がOHVエンジンと3速マニュアルトランスミッションの組み合わせだったことを思えば、DOHCと5速のジュリアは未来のクルマだったと言っても過言ではありません。フォード・モータースの創設者で自動車王と呼ばれたヘンリー・フォードは、「私はアルファロメオを見かけるたびに帽子を脱ぐ」と語ったという逸話が残っていますが、それほどの名門なのです。
貴重な62年式ジュリアを、わずかな距離でもドライブすると、55年も前のモデルなのに自動車として完成していることに驚かされます。エンジンに気難しいところはなく、乗り心地も快適と言えます。高性能というより高度に洗練されているという表現がふさわしく、冷たくて固い機械ではなく、体温のある生き物のような印象を受けました。こうしたフィーリングを体感した後でデザインを眺めると、当時のイタリアで「醜いジュリア」や「弁当箱」と揶揄されたスタイリングも、愛嬌たっぷりに見えてくるから不思議です。


ジュリアが人気を博した理由は、ファミリーカーとして使える実用性とスポーティさを両立したから。確かに室内空間は広いです。

1962年式 アルファロメオ・ジュリア TI
●サイズ(全長×全幅×全高):4160×1560×1430mm
●ホイールベース:2510mm
●エンジン形式:直列4気筒DOHC
●排気量:1590cc
●最高出力:92PS/6500rpm
●駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
●中古車価格:200万円~

いつの時代のモデルも、アルファロメオは人の感性に訴えかけてくる。

翻って最新のジュリアには、抜きん出て新しいメカニズムは使われていません。つまりスペックに目新しさはないのです。けれども、走り出して驚きました。
カシミアのように繊細な乗り心地なのに、狙った通りにコーナーをクリアする足まわりは、猫科の肉食獣のようにしなやかで強靱です。回転を上げるにつれパワーが盛り上がり、楽器のようなサウンドが鼓膜を震わせるエンジンは、ドライバーの心を昂ぶらせます。

タイムを計れば、新型ジュリアより高性能のスポーツセダンはいくらでもあるでしょう。けれども、ドライブしてこれほど官能的な気分になるモデルは少ないです。50年以上の時を隔てた2台であるけれど、いつの時代もアルファロメオは人の感性に訴えかけてきます。

新型ジュリアに感じた洗練と官能の理由を、「伝統」のひと言で片付けるのは心許ないです。けれども新旧2台のジュリアに接すると、このブランドには感動を与えるDNAが確かに存在していると思わざるを得ないのです。

運転席側に傾けられたセンターコンソールから、主役はドライバーだとわかります。自動ブレーキなど運転支援機能を標準装備。

2017年式 アルファロメオ・ジュリア ヴェローチェ
●サイズ(全長×全幅×全高):4655×1865×1435mm
●ホイールベース:2820mm
●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
●排気量:1995cc
●最高出力:280PS/5250rpm
●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
●価格:¥4,460,000~¥11,320,000


…以上、【新旧名車を比較!vol.5】でした。こちらの記事は、2017年Pen10/15号「いまならどちらを選びますか? ちょっと古いクルマ、長く愛せる新車。」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから

関連記事
【新旧名車を比較! Vol.1】BMW イセッタ & BMW i3
【新旧名車を比較! Vol.2】ホンダ・シビックRS & ホンダ・フィットRS
【新旧名車を比較! Vol.3】トヨタRAV4 & トヨタC-HR
【新旧名車を比較! Vol.4】ユーノス・ロードスター & マツダ・ロードスターRF