手をかけて育てる楽しみのある「ちょっと古いクルマ」と、歴史とともに培われた技術力によって進化した「長く愛せる新車」。どちらも甲乙付けがたい魅力があふれているのは、よりよいクルマを目指して自動車エンジニアが注いだ情熱があるからこそ。新旧2台のクルマから、その情熱を感じてください。Vol.1はBMW イセッタとBMW i3の登場です。
クルマの姿を描き直す、BMWが生み出した革新的なスモールモデル
誰をも笑顔にするユーモラスなこのクルマが、BMWの歴史の中で重要な役回りを担っていたと言うと、にわかには信じられない方もいらっしゃるでしょう。イタリアで設計されたイソ・イセッタを、1955年からライセンス生産したのがこのBMWイセッタ。当時、高級車ばかりをラインアップしていたBMWは販売不振が続き、安価なモデルを求める声に応えて白羽の矢を立てられたのがイセッタでした。もくろみは見事的中し、最初のモデルである250は55年だけでおよそ1万台が生産されました。翌年には排気量をアップした300が追加され、さらに57年には2列シートを備えた大型の600も登場。イセッタはBMWの救世主となったのです。
豊かなアイデアで、モータリゼーションの推進に大貢献。
BMWイセッタのユニークさは、愛らしいフォルムだけではありません。ドアはボディ側面に存在せず、フロント部分がウインドシールドもろとも大きく開き、そこから乗り降りを行います。ベンチシートには少々窮屈ですが、大人2名が乗り込めました。エンジンはシートより後方に置かれ、狭い間隔でレイアウトされた後輪を駆動。そのフォルムからバブルカーとも呼ばれる小さなクルマたちは大戦後に数多く存在しましたが、巧妙なパッケージングと豊かなアイデアで利便性を極め、モータリゼーションの推進に大きく貢献しました。
常識にとらわれない、柔軟な発想が進化を生む。
そして、世の中が求めるものを敏感にとらえ、クルマのあるべき姿を描き直してみせたという点においては、2013年に登場したBMWi3も同じです。全長4mほどのコンパクトな電気自動車(EV)で、アルミ合金フレームに駆動コンポーネントを組み込み、その上へカーボン素材のCFRPボディを被せる「ライフドライブ」という新しい構造を採用。さらに天然素材やリサイクル素材をシートをはじめインテリアなどに積極的に盛り込むなど、環境への配慮を徹底したクルマです。
i3の革新性を最も強く印象づけるのはそのつくり方です。生産を行うドイツ・ライプツィヒ工場は高効率化で消費電力を従来の半分に削減。さらに風力発電を備え、再生可能エネルギーで電力のすべてを賄っています。走行中にCO2を排出しないEVは、生産過程でもCO2削減に力を注ぐ……。サステナブルな社会の実現に向け、BMW i3は一歩先を走っているのです。
…以上、継承される個性と美しさを兼ね備えた、新旧名車を徹底比較!でした。こちらの記事は、2017年Pen10/15号「いまならどちらを選びますか? ちょっと古いクルマ、長く愛せる新車。」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから
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