Vol.39 J39
Vol.39
Vol.39 J39
J39

ボーエ・モーエンセン

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

ピープルチェアとも呼ばれる「J39」は、ボーエ・モーエンセンが「デンマーク市民のための高品質で低価格の椅子をつくる」というミッションに応えて、5年の歳月をかけデザインしたもの。シンプルで堅牢なデザインはいかにもモーエンセンらしく、70年以上経ったいまも人々から愛され続けています。

すっとまっすぐに伸びる脚部にシンプルな一枚の背もたれ、座面にはペーパーコードを採用。工業生産による効率性と手作業の温もりがバランスよく融合しています。こちらはオーク材のソープ仕上げモデル。サイズはW480×D430×H770×SH465mm

20歳で家具マイスターの資格を得て、親友のハンス・J・ウェグナーらとともにデンマークにおける近代家具デザインの黄金時代を作り上げたボーエ・モーエンセン。1942年、デンマークの生活レベル向上を目指す組織であるFDB(デンマーク生活協同組合連合会)に家具部門「FDBモブラー」が立ち上がると、彼はプロダクトデザインマネジャーを引き受けます。50年の退職まで人々のための家具を多くデザインし、デンマークの人々の日常生活に寄与しました。

その一つで、モーエンセンのダイニングチェアを代表する名作として知られるのが1947年に誕生した「J39」です。いまも個人邸から公共の場まで広く使われ、デンマークでもっとも売れている椅子の一つと言われます。高品質で低価格であるだけでなく、簡素なデザインとペーパーコードによる座面によるチェアは、特別な知識がなくても組み立てができるため、発表当初は人々の雇用も生み出しました。まさに「ピープルチェア」と呼ばれる所以です。現在はフレデリシア ファニチャーが生産、販売をしています。

生涯を通じて歴史ある家具から自分のデザインを発展させたモーエンセン。「J39」は、師匠であるコーア・クリントが教会のためにデザインした「チャーチチェア」の構造を簡略化して再解釈したもので、アメリカのシェーカー家具からも着想を得たといいます。そして「J39」自体も、親友のウェグナーやジャスパー・モリソンら、ほかのデザイナーにインスピレーションを与えていったのです。

ペーパーコードのカラーと一体化するソープ仕上げの白い木肌も魅力的です。オイル仕上げや塗装したモデルも。

後ろから見ると、前方に向かって少し広がる座面。レストランやダイニングシーンなどで並ぶ姿を見ると、背面の潔い直線により縦のラインが強調されて空間にリズムが生まれます。

Vol.39 J39