Vol.34 PH28
Vol.34

PH28

ピエール・ジャンヌレ

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

ル・コルビュジエが都市計画を行ったインド北部の都市、チャンディガール。彼のビジネスパートナーであったピエール・ジャンヌレは、この街のためにいくつもの家具をデザインしました。時代の移り変わりでやがて多くが廃棄されますが、フランスの著名なギャラリストによってジャンヌレの再評価が進むと、オリジナルの家具は世界中のオークションハウスを賑わせる存在へ変わりました。

現在はインド政府が輸出を制限し、国の文化財として保存を進めるまでになったジャンヌレの家具。それを現代に引き継ぐべく発足した再生プロジェクトの復刻品が今年、日本でも本格的に販売されるようになりました。

インドの工房ファントム・ハンズは2015年から、チャンディガール建造時と同じ伝統的な手工芸を用いてジャンヌレの家具の復刻を始めました。いまでは入手が難しいチーク材は築100年以上の建物に使われていた古材を再利用したもの。サイズはW520×D585×H780×SH435mm

ピエール・ジャンヌレは9歳離れた年上の従兄弟であるル・コルビュジエとともに事務所を設立し、彼の重要なオフィスパートナーとして知られる建築家です。1947年に入り、インドで新たに建造が進められることとなったチャンディガールの計画にル・コルビュジエが参画することとなり、彼はジャンヌレを現地のチーフアーキテクトとすることを条件に引き受けます。

こうしてジャンヌレはインドに移り住み、都市空間から建築物、それに共鳴する家具までを総合的にデザインしていきます。家具メーカーのない当時のインドで同時期に大量の家具を必要としたため、ジャンヌレは現地で入手可能な素材を用い、設計図面と大まかな指示のみで製作可能な家具を考案。そのためオリジナルの家具は複数の工房でさまざまな職人の手によって製作され、一点一点異なる作品が生まれることとなったのです。

チャンディガールの都市計画から半世紀以上が経った2015年、インドの工房「ファントム・ハンズ」の働きかけで各地の専門職人が集い、プロジェクト・チャンディガールが始動します。いわゆる工業製品としての復刻ではなく、当時と変わらないインドの手工芸に基づき、当時製作を担っていた職人の継承者たちによりオリジナルに忠実な復刻の生産が行われるようになりました。死後、遺灰をチャンディガールの湖に散骨するように望むほどに同地を愛したジャンヌレ。インドの近代建築に大きく寄与した彼のデザインがいま再び、インドの手工芸を世界に伝えようとしているのです。

「PH28」は逆V字の脚が特徴的な一脚。ファントム・ハンズではオリジナルの図面が残っているプロダクトのみを忠実に復刻しています。

オリジナルは1955年頃にデザインされました。シャルロット・ペリアン、ジャン・プルーヴェらと親しく、数々のプロジェクトをともにしたジャンヌレの家具は彼らのデザインとも好相性です。

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