世はまさに和モノブーム真っ只中! スポーツのMIZUN...
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世はまさに和モノブーム真っ只中! スポーツのMIZUNOまで雪駄をつくった人気の広がりとは?

構成、文:高橋一史 写真:加藤佳男 | 

ミズノがカーボンテクノロジーの可能性を探るため取り組んだ新発想の雪駄、「SETTA C/6」。¥17,600(税込)/ミズノ(ミズノお客様相談センター TEL:0120-320-799)

サードウェーブコーヒーが台頭してコーヒースタンドが一気に増え出す以前の2011年1月、東京・表参道の路地裏に一軒の店が出現した。名を「オモテサンドウ コーヒー」といい、古民家の室内に正方形のコンパクトな屋台を設置し、テイクアウトのドリンクを提供する和洋折衷の店だった。流行発信地の表参道の先端スポットであり、さらにここには都市の異空間といえる静けさがあった。仕事で表参道に行ったときに立ち寄ると、いつもホッと心を和ませてくれたものだ。家屋の取り壊しのため閉店したのが15年12月だから、営業期間はわずか5年。にも関わらず海外観光ガイドにも載り、訪日客で溢れるほど賑わった。トレンドとしてのコーヒー人気はしだいに抹茶やほうじ茶ドリンクへと姿を変えていき、いまやどこを眺めても日本茶の名が目につく。時代はまさに和モノ、もしくは和洋折衷ブームといえるだろう。

ファッションのセレクトショップに和グッズや和モチーフが増えたのも、オモテサンドウ コーヒーの誕生と同じ時期だったように思う。16年に “ニッポン” をテーマにしたビームスジャパンが新宿にできた頃には、スケーターウェアを着て雪駄を履くようなミックススタイルも珍しくなくなった。ファッション感度の高い層が伝統を見直しはじめた風潮を受け、このPen Onlineの連載「着る/知る」も同年7月に浴衣の選び方や着る所作を探っている。いまも役立つ内容と自負しているので(自画自賛)、今号の記事の最後に掲載したリンクをのちほどクリックしていただけたら幸いだ。

和モノが現在人気の理由については後半にご登場いただく、業界最大手の着物メーカー、やまと社長の矢嶋孝行さんによる鋭い分析に譲る。ここではまずファッションアイテムとしてスポーツサンダル感覚で人気が高いモダンな雪駄を2型見ていこう。最初に紹介するのは、上写真のスタイリッシュな一足。なんとスポーツメーカーのミズノ(MIZUNO)がこの春夏に新発売した、快適な履き心地の雪駄なのである。

反り返った形が歩きやすさを生む。着地面はヒール補強つきのラバー素材だ。販売はミズノの直営店をはじめ、「ミタスニーカーズ」「ビームスジャパン 京都」など。好評につき完売の可能性あり。

奈良のサンダルメーカーが手掛ける「大和工房」とのコラボからこの「SETTA C/6」が生まれた。内部にカーボン繊維強化プラスチックを仕込んで従来品より耐久性を持たせたのがMIZUNO流の機能改良だ。歩こうとすると自然に前に足が踏み出て、地面への突っかかりも起きない。スニーカーとも異なる、独特な足運びの面白さがある。天板(フットベッド)に衝撃を吸収する低反発ウレタンを詰め、ソールにクッション力のあるコルクを配した構造は大和工房の得意技だ。

伝統の雪駄は鼻緒が中央にあり左右の区別がないのが特徴だが、その理由は定期的に左右を入れ替えて履き、ヒール部分のすり減りを均一にする工夫にあった。「SETTA C/6」の鼻緒は親指と人差指の位置にあり、自然と足が収まるよう設計されている。

雪駄のサイズ選びは踵の先端が外にはみ出る小さめサイズがセオリーで、その着こなしが “粋” とされている。ただしこの履き方は、前重心ですり足だった旧日本式の歩きかたに基づいたもの。大股で踵から着地する現代式だと、ヒール端の固い箇所で踵を痛めることがある。経験上からアドバイスするなら、足がすべて内部に収まるジャストサイズにするほうが安心だ。

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