伝説のお笑いコンビ「ローレル&ハーディ」の最後の珍道中...
文:細谷美香

Profile : 映画ライター。コメディや青春映画から日々の生きるエネルギーをもらっている。クセが強くて愛嬌がある俳優に惹かれる傾向あり。偏愛する俳優はニコラス・ケイジです。

伝説のお笑いコンビ「ローレル&ハーディ」の最後の珍道中に、思わずホロリとさせられる。

監督を務めたのは、『フィルス』で注目を集めたジョン・S・ベアード。
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018

第二次世界大戦前に活躍していたアメリカのお笑いコンビ、ローレル&ハーディ。日本では「極楽コンビ」という名前で呼ばれ人気があったというふたりの半生が映画になりました。彼らのネタや人生についてはよく知らないままの鑑賞でしたが、じんわりと心に染みるブロマンス! 誰も傷つけない往年の笑いとともに、彼らの晩年を描き出した作品です。

ローレル&ハーディは、サイレントからトーキー映画の黄金時代を築いたお笑いコンビ。時は過ぎて1953年、ふたりはイギリスの小さなホールを回るツアーをスタートさせますが空席が目立ち、お笑い界では過去の人だと痛感することに。わびしいホテルに宿泊しながら、ツアーを続けていきます。

ネタづくりを担当するローレルを演じるのは、現役のコメディアンでもあるイギリス人俳優、スティーヴ・クーガン。その相方オリバーは、アメリカの名脇役、ジョン・C・ライリーがファットスーツを身につけ演じ切りました。細身でシニカルなローレルと朗らかでクマのようなオリバーは、見た目も性格も対照的なコンビ。そんなふたりがステージで披露するパントマイム的な要素を取り入れたコントや軽やかなステップを踏むダンスには、心が浮き立つような楽しさがあふれています。

オリバーは膝のコンディションに不安を抱えたままツアーを続け、スタンは映画撮影の予定がキャンセルされたことを相方に言えずにいる。胸の内にそれぞれの思いと秘密を抱えたふたりは、激しい口論を繰り広げてしまうこともあります。それでもやっぱり、一緒にステージに立ちたいと思うふたり。最初はプロデューサーによって組まされたふたりでも、長年コンビを組んできた彼らにしか共有できない温度や景色があることが、ふとしたまなざしから伝わってくるかのよう。彼らを見続けてきた妻たちのエピソードも温かく笑いと涙を運んできてくれるハートウォーミングな作品です。

写真左がローレルを演じた、『あなたを抱きしめる日まで』などで知られるイギリス人俳優、スティーヴ・クーガン。その右はオリバーを演じたジョン・C・ライリー。
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018

私生活も仲が良かったと言うふたり。伝説のコンビを支える妻たちも登場します。
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018


『僕たちのラストステージ』

監督/ジョン・S・ベアード
出演/スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリーほか
2018年 イギリス・カナダ・アメリカ合作映画 1時間38分 
4月19日より新宿ピカデリーほかにて公開。
http://laststage-movie.com