工業製品としての凛とした雰囲気を備えた、真っ白なスニーカーを発見。

工業製品としての凛とした雰囲気を備えた、真っ白なスニーカーを発見。

工業製品としての凛とした雰囲気を備えた、真っ白なスニーカーを発見。

外羽根のデザインで、プレーントウのデザイン。私が革靴で買うのはこのタイプがほとんど。それが白に変わった感じ。型押しの白なので、汚れも付きにくいし、これなら毎日のように履ける。

スニーカ好きの私ですが、最近、ずっと同じスニーカーを履いてきた。スイスのシューズブランドで「オン(on)」のランニングタイプで、「Cloud」というモデル。このモデルの履き心地が気に入って、日々歩いたり、生活したりするのに絶好。シューレースがゴム製で、靴紐をほどくことなく、靴が脱げ履きが可能。この「Cloud」を色違いで5足揃えたので、これさえあればほかの靴はいらないかな、と思える日々を過ごしてきた。


そんなときに出会ったのが、真っ白なスニーカー。フランスで1882年に創業された老舗「ルコックスポルティフ」の新作だ。実はこのスニーカーをデザインしたのは、『Pen』でも取材したことがある靴職人、五宝賢太郎さんだ。五宝さんはオーダーメイドの革靴から、スニーカーまでつくれる靴業界では稀有な人物。その彼がフランスの老舗と組んで一からデザインした靴だけにこれは履かないわけにはいかない。


五宝さんがデザインしたのは同ブランドのなかでも「クラフテッドスニーカー」と名付けられたライン。スーツにスニーカーを合わせることもいまや一般化したが、週末に履くようなスポーティなスニーカーではなく、もっとシンプルなデザイン。これならば合わせる服を選ばないし、週7日だって履けるだろう。五宝さんは「オフィサーシューズ」とイメージしていると語っているが、オフィサーシューズは、軍隊などで将校などに提供する革靴で、外羽根のデザインの物が多い。このモデルは色が白だからスニーカー然としているが、これを黒にしたら(実際、ソールまで真っ黒なモデルもある)、そんな雰囲気が漂うかもしれない。五宝さんは「フランスのオフィサーシューズのデザインにちなんで靴紐を通す穴を4つに」と話す。こういうところも靴を熟知する五宝さんらしい配慮。


しかし、このスニーカーを見て、私がすぐに思い出したのは「オールデン」のある靴だ。以前、靴デザイナーを取材したときに、彼が持っていたのが同ブランドの医療矯正用の白い靴。この技術が後々生かされ、「オールデン」から「モデファイドラスト」と呼ばれる独特の木型が生まれるのだが、その原点ともいえる白い靴に佇まいが似ている。20数年前に、アメリカのワークブーツメーカー「レッドウィング」を20年くらい前に取材したが、当時、アメリカで大量に生産されていた、帯電することがないITメーカー向けの白い靴にも似ている。工業製品といったら語弊があるかもしれないが、ファッション的な靴にはない凛とした雰囲気を漂わせているのだ。そこが一眼で気に入ったのだ。

工業製品としての凛とした雰囲気を備えた、真っ白なスニーカーを発見。

EVA素材を使ったソールで、同じ素材に見えるが、前と後ろでは、反発力が違う。ソール自体のデザインも独特だ。

工業製品としての凛とした雰囲気を備えた、真っ白なスニーカーを発見。

踵の盛り上げりは単なるデザインではなく、機能的なデザイン。試着したら踵のホールド感はかなりのもの。踵の内側はスエードが使われており、踵が擦れて痛くなることもないだろう。

五宝さんがこのスニーカーで取り組んだのが、スポーツメーカーのつくるスニーカーに、どれだけドレスシューズ的なセンスとテクニックを持ち込めかということだ。


ソールの側面が波状に上がっているが、これはデザインというよりも機能。「サイドリガー」と呼ばれているが、これで足のブレを防いでくれ、安定性がアップする。横に体重が逃げていかないので、前にしっかり蹴ることができるし、疲れにくいという。これはいい。


踵部分は盛り上がった形状を持つが、「ヒールクリップ」という踵部分を抑える形状で踵をフィットさせることに成功している。これからは革靴づくりの発想とは違うところだが、実は大学で人間工学を学んだ五宝さんは「いろいろな人の足を見てきて、踵の骨が歪んでいる人が多い」と話す。それで今回のモデルでは革靴で一般的に使われるヒールカップではなく、クリップ型のヒールカウンターを用意して、踵を固定しようと考えたのだ。


しかし革靴とのいちばんの違いはソールだろう。前半分は高反発性を備え、半分は低反発のEVA素材が使われており、履きやすさをアップしている。こんな芸当は革靴のソールではなかなか出来ない。


スポーツブランドが培った技術と革靴からスニーカーまで、靴職人としてさまざまな靴や足を研究してきた五宝さんの知識と技が生かされているモデル。実際、この原稿を書きながら、部屋の中で試し履きをしているが、履き心地がいいし、ソフト。眺めていると、デザインが極めてシンプルだから、年齢を問わず、服装の趣味嗜好に関係なく履くことができる。


五宝さんは「履いていて発見したのですが、この靴とソール、本当に滑りにくいんです」と。これも素晴らしい機能。実際、私は雨などが降った路面で何度も転びそうになったことがある。履きやすさと履き心地、フィット感、そしてさまざまな機能、これからの靴はこうでなくてはと思う要素が上手く盛り込まれている。さすがである。


今年の”締めのスニーカー”は、五宝さんの渾身の作品、この真っ白なモデルで決定!


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