上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

小林古径記念美術館の全景。奥の庭園に移築された小林古径邸がある。photo: 小林古径記念美術館

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

建物の前には雁木のような通路が長く延びる。photo: 小林古径記念美術館

10月3日にオープンした小林古径記念美術館を見るために、新潟県の上越市へ。北陸新幹線を上越妙高の駅で降り、タクシーで10分弱で到着。以前から上越市立総合博物と施設を一体化した形で運営されていたが、向かい側の敷地に分離独立する形で、今回、リニューアルが行われたものである。建物は敷地の幅いっぱいに長く延びる。そして手前には建物に沿って屋根付きの通路が。これは豪雪地帯ならではのデザインで、上越市の商店街で見られる雁木(がんぎ)にも似ている。建物を設計したのは、長野の宮本忠長建築設計事務所。「長野市立博物館」や小布施の「信州小布施 北斎館」などを手がけた、地域を代表する設計事務所だ。

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

小林古径の作品を常設展示している古径記念室。photo: Tatsuo Iso

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

ワークショップ、工作教室、講演会などの会場となる二ノ丸ホール。photo: Tatsuo Iso

小林古径は文化勲章も受賞した日本画の大家だ。チケットを買って中へ入ると、すぐに古径記念室がある。濃紺色の空間に小林古径の日本画が映える。この美術館では、ここ上越市に生まれた小林古径をはじめとして、地元ゆかりの美術家の作品を集めている。奥の企画展示室では開館記念展として『じょうえつ美術のチカラ』を開催中。上越は太平洋戦争で疎開してき美術家たちが交流を図ったり、新潟大学教育学部芸能科が置かれて美術家を育成したりと、美術の文化的土壌に恵まれたところなのであった。廊下を進んでいくと、二ノ丸ホールへ突き当たる。講演会などの催しに使われる部屋だが、普段は高田城址公園の景色を楽しめる休憩スペースとなっている。

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

国登録有形文化財の小林古径邸。吉田五十八の設計で1934年に完成したものを東京都大田区から移築した。photo: 小林古径記念美術館

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

美術館の廊下からガラス越しに小林古径邸を眺めることもできる。photo: 小林古径記念美術館

長い建物の端までたどり着いたが、これで展示が終わりではない。僕のような建築好きには、ここまでが前菜で、この後にメインが控えている。外に出ると、そこには小林古径の自邸があるのだ。この住宅は近代数寄屋建築の達人として名高い吉田五十八による設計で、1934年、東京の南馬込に完成。それをこの場所へ移築し、2001年から公開しているものだ。国の登録有形文化財にもなっている。庭から眺めると、なるほど、この古径邸を見るのに邪魔にならないよう、後ろの美術館は低く延びた形で設計されたのだな、と納得する。

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

25畳敷の広さで2面に大きな開口を持つ小林古径画室のアトリエ。photo: Tatsuo Iso

上越市にオープンした、小林古径記念美術館。吉田五十八の近代数寄屋建築も必見!

小林古径邸にある小間の茶室のような書斎。photo: Tatsuo Iso

隣に建っている画室は、移築ではなく写真や図面から復原したものだが、古径が絵画を制作していた畳敷きの広いアトリエがしっかりと再現されているのがうれしい。大きな開口部の雨戸、網戸、ガラス戸、障子をすべて戸袋に引き込んで見えなくしてしまう工夫など、吉田がのちに確立する洗練された和風建築の手法が、この建物で早くも現れていることがわかる。美術を鑑賞するだけでなく、建築を味わうためにも出かける価値がある美術館だ。

小林古径記念美術館

住所:新潟県上越市本城町7-1(高田城址公園内)
TEL:025-523-8680
開館時間:9時〜17時まで ※12〜3月は10時〜16時
休館日:月曜、祝日の翌日、年末年始、展示替期間 ※11月3日までは無休
料金:一般¥510
※開館記念展「じょうえつ美術のチカラ」は2021年3月21日まで開催
https://www.city.joetsu.niigata.jp/site/kokei/