「ブルガリ ホテル 東京」でニコ・ロミートの新メニュー試食会が開催された。
しかも、イタリアからニコ・ロミート本人が来日。日本の「イル・リストランテ ニコ・ロミート」を率いるシェフたちとともに考案した日本限定メニューまで登場するという、なんとも胸アツな会だったわけ。
会場には日本を代表するシェフたちも集結。スーパースターたちのランチ会にこっそり潜入してきました!
これは“東京のニコ・ロミート”なのだ
世界的なスターシェフが来日、というだけでも十分に華やか。でも、この日の面白さはそこじゃない。ニコ・ロミートの哲学をベースに、日本のイル・リストランテ ニコ・ロミートチームがこの土地、この食材、この感覚に合わせてどう表現するのか。そこに、この日の面白さがあった。
ただ本国の味を再現する、ではない。
ただ日本の旬を置けばいい、でもない。
そのあいだの、絶妙に美味しいところを攻めてくる感じ。
しかもそれを、ブルガリ ホテルというラグジュアリーな舞台で楽しめるわけだから、どんなメニューがこのイル・リストランテ ニコ・ロミートで楽しめるのか期待値は上がる一方だったの。

アルデンテが気持ちいい、和牛ソースのリングイネ
特に印象に残ったのが、和牛ラグーのリングイネ。トマト、ケイパー、オリーブ、オレガノを合わせた構成。
まず香りがいい。
すごく、いい。
和牛のコクが前に出ているのに、トマトの酸味とケイパー、オリーブの塩気が全体をきれいに引き締めていて、重たさに転ばない。
そこにオレガノの香りがふわっと重なることで、ひと口ごとに立体感が生まれる。こういう、食べ進めるほどに生意気ながらも「あ、ちゃんと考え抜かれてる」と感じるパスタ、好き。
このひと皿は、ただ和牛の上質さを見せるだけではなく、レジデントヘッドシェフ、マウロ・アロイシオの幼少期の記憶を出発点にしているというのも面白い。ナポリの郷土料理「カルネ・アッラ・ピッツァイオーラ」の親しみやすさを、ニコ・ロミートの技法でぐっと洗練されたかたちに引き上げている感じ。あぁ、好き。
そしてなにより、アルデンテの加減が気持ちよかった。
ソースの力強さを受け止めながらも、パスタそのものの芯がきちんと残っていて、口の中での表情が単調にならない。香り、旨味、食感。その全部がちゃんと並走してくる。

伊勢海老に、ほうれんそうとそばの実。そこへ唐辛子、という驚き
もうひと皿、記憶に残ったのが、伊勢海老の軽い煮込み。合わせるのは、ほうれんそうとそばの実、そして唐辛子。
この組み合わせ、日本ではあまり出会わない気がする。
でも、それが面白かった。
伊勢海老の持つ甘みと旨味に、ほうれんそうの青さ、そばの実の香ばしさが加わることで、ひと皿の中にちょっとした陰影が生まれる。
さらに唐辛子が入ることで、全体がぼやけず、味わいがすっと立ち上がる。辛さで押すわけではなく、輪郭を与えるための唐辛子、という感じ。
こういう“意外だけど、食べると腑に落ちる”組み合わせに出会うと、ちょっと嬉しくなる。

この日の会には、日本を代表するシェフたちも参加していたので、わたしはボロが出ないようにできるだけ口数少なく過ごしていたわけですが、シェフたちの素直な感想や疑問がこれまた貴重で面白かった。
ニコ・ロミート本人の存在感はもちろん大きいんだけど、でも同時に、この東京のチームが積み上げているものも、確実に皿の上に表れているようで、今回の試食会は、そんなことを感じられた時間だったの。
ブルガリ ホテル 東京の「イル・リストランテ ニコ・ロミート」は、もはや単なる“海外の有名シェフ監修の店”ではない。東京で、東京だからこそ成立するニコ・ロミートの表現が、少しずつしっかりと輪郭を持ちはじめている。そんなことを思いながら、わたしはパスタの余韻を、しつこく反芻していたのでした。

おいしいものがあれば西へ東へ、世界中を駆けまわるFoodie、Keisui。ミシュランと並ぶ食のコンペティション「世界のベストレストラン 50」の公式デジタルアンバサダーで、世界で15人しかいない「TasteHunters」に唯一の日本人として就任。Instagram: @keisui