ニューバランスやオニツカタイガーなどの定番スニーカーに、合わせるべき腕時計とは? Pen Onlineの連載「靴と腕時計」から抜粋して紹介する。
1. オメガ「シーマスター ダイバー300M」
ニューバランスの名作「990」シリーズ。初代「990」は1982年、「1000点満点なら990点」という衝撃的なコピーと共に登場した。時間とコストを度外視して当時の最高を追求した開発姿勢は、40年以上の時を経た第6世代「Made in USA 990v6」にも色濃く受け継がれている。本作では、デザインと機能の大胆な刷新が行われた。象徴的だったミッドフットサドルをあえて排除し、ピッグスエードとシンセティックレザーのオーバーレイを踵から爪先へ流れるように配置することで、かつてないスピード感のあるルックスを獲得した。ソールユニットには、高反発な「FuelCellミッドソール」を990番台として初採用。お馴染みのENCAP構造と組み合わせることで、マイルドなクッション性と安定性を両立させている。
そして忘れてはならないのが、ニューバランスの象徴である「グレー」だ。アスファルトの色に馴染み、汚れを目立たせない実用色として採用されたこの色は、いまやタウンユースの定番カラーとなっている。
---fadeinPager---
2. グランドセイコー「SLGC009」
オニツカタイガーを代表するコレクションである「メキシコ66」は、1961年の「リンバーアップ」と、象徴的なストライプが初採用された66年の「リンバー」をルーツに持つ。そのレトロな佇まいを色濃く残しながら、現代の技術で履き心地を再構築したのが今回選んだ「メキシコ 66 SD VIN」だ。
特筆すべきは、クラシックな薄底スタイルからは想像できない機能性。ミッドソールのヒールウェッジにはクッション材「アンプリフォーム」を、中敷きには「オーソライト」を搭載。見た目はあくまでヴィンテージ風だが、足入れは驚くほど現代的でやわらかい。
そしてモデル名にある「VIN(ヴィンテージ)」が示す質感と、今作のキーカラーである「クレイキャニオン(褐色)」にも注目。上質なレザーに施された独自のヴィンテージ加工は、乾いた大地を思わせる赤茶色の陰影を際立たせ、新品のスニーカーにはない深みとこなれ感を与えてくれる。
この足元に合わせたいのは、グランドセイコーの「SLGC009」。ブランド初のメカニカルクロノグラフ「テンタグラフ」のラインアップに加わった、「スポーツコレクション」の最高峰である。毎秒10振動のハイビートを刻む「キャリバー9SC5」を搭載し、パワリザーブは約72時間という実用性を確保。
---fadeinPager---
3. BR-03 ブラック スティール
今回選んだスニーカーは、2005年創業のフランス・パリ発のサステナブルブランドであるVEJA(ヴェジャ)と、CFCLによる初のコラボレーションモデル。
ベースとなったのは1990年代のオールドスクールな佇まいを持つヴェジャの定番「V-90」だが、本作はそこから大胆な「引き算」がなされている。アイレットを裏側に隠してシューレースを収納し、ロゴの主張も極限まで抑制。アッパーには耐久性と上質さを兼ね備えたリVEJA独自開発の素材「NOLYN(ノーリン)」を採用し、素材そのもののテクスチャーを際立たせた。B Corp 認証企業同士のコラボレーションだけに、その素材選びには一切の妥協がない。
この足元に合わせたいのは、同じくフランスにルーツを持ち、1994年に創業したベル&ロスの「BR-03 ブラック スティール」だ。コックピットの計器をそのまま手首に移植したような「四角の中に丸」というデザインコードは、ブランドの絶対的なアイコンである。2023年のアップデートにより、ケースサイズを41㎜へと縮小。ラグを細く調整することで、現代の都市生活になじむ装着感を手に入れた。一方で、ブラックの文字盤とコントラストの効いたホワイトのインデックスは視認性が高く、プロフェッショナルのためのツールとしての矜持に満ちている。
---fadeinPager---
4. 1815
アディダス不朽の名作「スタンスミス」。1973年の命名以来、「世界で一番売れたスニーカー」としてギネスブックにも認定されたこのコートシューズは、スポーツ出自でありながら、ジャケットスタイルにもなじむ極限のミニマリズムを体現している。 アッパーのスリーストライプスをベンチレーションホール(通気孔)に置き換えるという大胆な「引き算」。クリーンなトゥに、シュータンのアイコニックな肖像画。特にヒールタブまで「ホワイト」で統一し、そこに「ゴールド」のロゴを配した今回のモデルは、定番のグリーンよりも一層ドレッシーで、無垢な気品さえ漂わせる。
この足元に合わせたいのは、ドイツ時計の最高峰、A.ランゲ&ゾーネの「1815」だ。ブランド創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲの誕生年を冠したこのモデルは、ザクセンの時計づくりの伝統を最も純粋な形で継承するドレスウォッチである。 視認性を極めたアラビア数字、外周を走るレイルウェイ・ミニッツトラック、そして美しい「ゴールド750」の針。これらすべての要素が、ただ「時間を告げる」という機能のために研ぎ澄まされている。一見すると控えめなホワイトゴールドのケースだが、その裏側には「4分の3プレート」や「ハンドエングレービング」といった、狂気的なまでの手仕事によるムーブメントが潜む。34㎜のケースサイズは抑制の効いたエレガンスを一層引き立てる。
---fadeinPager---
5. エルメス H08
ヴィンテージの趣とメゾンの矜持が交差するスニーカー、エルメス「マスター」。1970年代以前のクラシックなランニングシューズの面影を宿しながらも、熟練の職人技によって洗練を極めた「現代のスポーツシック」へと昇華された一足だ。
最大の魅力は、大地をダイレクトに捉えるような「超薄型ソール」。極限まで削ぎ落とされたプロポーションが軽快なフットワークをもたらすと同時に、足元のシルエットをこの上なくスマートに引き立てる。アッパーに採用された「ヴォー・スープル(柔らかな牛革)」が、アクティブな佇まいのなかに、隠しきれない気品と極上のフィット感を添えている。
この洗練された足元に合わせたいのが、2021年の誕生以来、現代のしなやかな男性像を象徴してきたエルメス「エルメス H08」である。特筆すべきは、メゾンが誇る革新的なマテリアル使いだ。編み込まれたグラスファイバーにアルミニウム加工とスレートパウダーを施した独自の「コンポジットケース」は、驚くほどの軽量性と強靭さを両立。サテン仕上げを施した漆黒のセラミックベゼルが鈍く硬質な光を放つ一方で、メゾンのアイデンティティである「オレンジ」のラバーストラップが、ストイックなモノトーンの世界に鮮烈な遊び心を打ち出す。