「靴と腕時計」Vol.9
スタイルの要となる“靴”と“腕時計”——。両者のベストなマッチングを考える。今回は、過酷な環境を乗り越えるオーバースペックを持ちながら、それを都会的なエレガンスの内に秘めたオンとロンジンの名作を合わせる。
洗練されたシルエットに潜む、圧倒的なパフォーマンス
今回選んだスニーカーは、スイス生まれのブランド、オンの「クラウドモンスター ヴォイド」だ。 ベースとなった「クラウドモンスター」は、ブランド史上最大級のクッショニングを誇るパフォーマンスランニングシューズである。そのボトムユニットの極上の履き心地はそのままに、デイリーユースへと昇華させたのが本作だ。アッパーには立体的なエンジニアードメッシュを採用し、シュータンにはマイクロファイバーと人工スエードを配置。氷山と錫(スズ)を意味する「Iceberg / Tin」というシックなグレートーンの配色が、モンスター級の機能性を極めて洗練された都会の足元へと中和している。
この足元に合わせたいのは同じくスイスの名門、ロンジンの「レジェンドダイバー」だ。 最新鋭のシューズに対し、こちらは1959年に水中探査用として誕生した傑作をルーツに持つ、レトロな佇まいが魅力の歴史的ピースである。ダイバーズウォッチでありながら武骨な外付けベゼルを持たない。潜水時間を計る回転ベゼルを風防の「内側」に配置し、ふたつのリューズで操作するヴィンテージ特有の構造により、ドレスウォッチのような流麗なシルエットを保っているのだ。39㎜径のスマートなケースに、ブラックラッカー仕上げの艶やかな文字盤。しかしその内部には、シリコン製ヒゲゼンマイを備えた約72時間のパワーリザーブを誇る高精度ムーブメントが潜み、30気圧という本格的な防水性能を備えている。
このふたつをつなぐのは、「極限のスペックを日常の美学で包み込む」というスイス・デザインの矜持だ。長距離を走り抜く最先端のハイテクソールと、深海300mに潜るレトロな防水構造。誕生した時代はまったく異なる両者だが、本来であれば主張が強くなるはずのプロユースの機能を、オンは緻密な素材使いとカラーリングで、ロンジンは内転式ベゼルという構造的アプローチで、それぞれエレガントに隠し持っている。グレートーンの最先端スニーカーに、クラシックなブラックダイヤルのダイバーズを合わせる。それは、内に秘めた圧倒的なポテンシャルをひけらかさない、本質を知る人のためのスタイルである。
ロンジン レジェンドダイバー/自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径39㎜、パワーリザーブ約72時間、30気圧防水。¥541,200
