オペラとダンスが融合した究極の美の世界を現出させた舞台『オルフェオとエウリディーチェ』が、新国立劇場のオペラパレスにてまもなく開催される。勅使川原三郎の美学に貫かれ、生と死、光と闇を自在に行き来し、緊張感とダイナミズムに満ちた美しい舞台は、2022年の初演時に大きな称賛を浴びた。待ちに待った再演が12月4日から幕を開ける。
音楽とダンス、美術、照明すべてが一体となった究極のアート作品『オルフェオとエウリディーチェ』は、世界的舞踊家・勅使川原三郎が演出・振付・美術・衣裳・照明を務め、コロナ禍の2022年5月に初演され、オペラファンや舞踊ファンにとどまらず広くアートファンの心をつかみ、大きな反響を呼んだ。初演に立ち会えなかった多くの舞台ファンからも、再演が待ち望まれていた作品だ。
『オルフェオとエウリディーチェ』の原作は、毒蛇に噛まれて死んでしまった愛妻エウリディーチェを連れ戻しに詩人オルフェウスが冥界へ降りて行く、ギリシャ神話のオルフェウス伝説。「地上に出るまで決してエウリディーチェの顔を見てはならない」という約束に反して思わず振り返ってしまい、愛する妻は地獄の闇に消え去ってしまういう悲しい物語だ。

この著名なギリシャ神話をオペラ作品に昇華したのが、“オペラの改革者”として知られる18世紀の作曲家グルック。音楽と演劇の融合を目指したグルックが劇的緊張感に満ちたオペラとして完成させ、その演劇的な面白さにより、現在まで上演頻度の高い人気作となっている。グルックの音楽には「精霊の踊り」「エウリディーチェを失って」など、耳になじみのある名曲も含まれ、愛と疑念、そして生と死の狭間で揺れ動くオルフェオとエウリディーチェの物語が歌手と合唱、オーケストラ、そして変幻自在なダンスによってダイナミックに綴られる。
このたび上演される『オルフェオとエウリディーチェ』では、注目のオルフェオ役にはバロック音楽のスペシャリストで、現代最高峰のアルト歌手サラ・ミンガルドが新国立劇場初登場を飾る。指揮は日本屈指のオペラ指揮者として躍進する園田隆一郎が担当。勅使川原からも信頼の厚い佐東利穂子やアレクサンドル・リアブコの初演メンバーに加え、オフィーリア・ヤング、ハビエル・アラ・サウコらの超絶技巧のダンスも注目だ。

勅使川原三郎の世界観を、実力派のキャストがかたちにする


勅使川原三郎は独自のダンス・メソッドと、光・音・空気・身体への美意識、そして独創的な身体表現が高く評価されるダンサー、振付家、演出家。自身の活動拠点カラス・アパラタスでの「アップデイト・ダンス」シリーズの上演を続けるとともに、パリ・オペラ座バレエ団、フランクフルト・バレエ団、バイエルン州立歌劇場バレエ、オランダ国立バレエなど世界各地の著名カンパニーから振付に招聘されている。
また、エディンバラ・フェスティバル、フェニーチェ歌劇場、エクサンプロヴァンス音楽祭などではオペラも演出。造形美術家、映像作家としても世界各地に招聘され、インスタレーションや映像作品を発表している。『オルフェオとエウリディーチェ』はその勅使川原三郎の音楽・身体・美術表現すべてが結晶した舞台であり、大規模な勅使川原作品が日本で体験できる貴重な機会でもある。
指揮は特にイタリア・オペラを中核に、日本屈指のオペラ指揮者として活躍する園田隆一郎が担当。新国立劇場でこれまでオペラ鑑賞教室公演の指揮を重ねてきた園田にとって、今回がシーズン公演デビューとなり、期待の声も高まる。
注目のオルフェオ役には現代最高峰のアルト歌手サラ・ミンガルドが新国立劇場に初登場。初演ではカウンターテナーが務めた同役がいかに変貌するのかも楽しみのひとつだ。エウリディーチェにはイタリアの新星ベネデッタ・トーレが、アモーレ役には実力派メゾソプラノの杉山由紀が出演する。
ダンサーは、初演でも圧倒した佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコに加え、勅使川原三郎作品へ出演を重ねるオフィーリア・ヤング、ハビエル・アラ・サウコが出演。勅使川原の信頼厚いダンサー陣が精霊として、また人物の影のような存在となって、全編に渡り舞台をリードしていく。
オペラとダンスが融合した究極の舞台作品を、ぜひこの機会に体感してほしい。

『オルフェオとエウリディーチェ』
会場:新国立劇場 オペラパレス
公演日時:2025年12月4日(木)、6日(土)、7日(日)、全日14時
TEL:03-5352-9999
www.nntt.jac.go.jp