ブランパンを代表するドレスウォッチの「ヴィルレ」が魅力を一新した。創業地から名づけられたコレクションにふさわしく、ブランドの歴史と伝統を継承しつつ、変化することなく進化を続ける。そこにタイムレスエレガンスが香り立つ。
1735年、時計職人ジャン=ジャック・ブランパンがスイスのジュラ山脈に位置するヴィルレで工房を設立した。今年創業290年を迎えた、現存する世界最古の時計ブランドであるブランパンの始まりだ。超薄型や複雑機構を得意とし、いち早く製造の近代化にも取り組み、マニュファクチュールとして一族の経営は200年近くにわたった。1950年代以降もダイバーズウォッチをはじめ、スイス時計の技術革新の中核を担ったが、クオーツ式時計の台頭で一時休眠状態へ。1983年に満を持して復活を遂げたのである。
同年に発表され、ブランドの技術復興を象徴したコンプリケーション「シックス・マスターピース」のデザインを継承するのが、「ヴィルレ」という名称で2003年に誕生したコレクションだ。その正統派ドレスウォッチのスタイルは、ブランドアイコンとして高く支持されている。その約20年振りの刷新とあって熟考が重ねられたことはいうまでもないだろう。


発表されたモデルは、「コンプリートカレンダー」「ウルトラスリム」「デイト ムーンフェイズ」の3型。ケースサイズは以前と同じ40㎜と33.2㎜で、見た目の印象もこれまでとほとんど変わらない。搭載するムーブメントも同じだ。しかし、細部を見ていくにつれ、その違いが明らかになる。
共通する変更点がまずローマ数字のインデックスだ。12時位置には創業者のイニシャルであるJBを掲げ、それぞれの数字もセリフを省いたシンプルなタイポグラフィを採用する。時分針のリーフ針はよりシャープなフォルムになり、従来のスケルトンからスーパールミノバ加工に変更した。ドレススタイルには珍しい実用的な仕様だ。
コレクションを象徴するダブルステップベゼルは幅を抑え、その分、広さが増した文字盤をオパリンとゴールデンブラウンの2色で飾る。やわらかな乳白色のオパリンと豊穰を感じさせるブラウンゴールドの絶妙な色合いが風格を醸し出す。
ムーンフェイズは、シンボルであるムーンディスクがセラミックの地板にレリーフ状のゴールドの月を備え、より立体的になった。開口部も両端をより下げることで29.5日間の月相を表示し、円の連なる美しいフォルムはポインターデイトのユニークなサーペント針のカーブとも調和する。また3針では、従来の40㎜径の自動巻き仕様ではアワーリングとセンターサークルに段差をつけたモデルもあったが、新作はフラットに仕上げ、オパリンの細かなグレインの質感を際立たせている。
「ヴィルレ」の新作はモダンな熟成進化といえるだろう。かつてブランド再興の証しとなった「シックス・マスターピース」が伝統的な懐中時計のスタイルを再現し、初代「ヴィルレ」がこれを範とした。そして今回、腕時計としての再解釈を施したのである。細部のデザインは洗練を増し、さらにクイックチェンジシステムのストラップや、日付修正がいつでも可能なセキュリティ機構など実用性も向上している。ケースは装着感を増し、重厚感を損なうことなく、軽快感が味わえる。それこそが現代のドレススタイルであり、掲げたJBのロゴにも時代を超える王道の自負が漂うのだ。
ブランパン ブティック 銀座
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