Snow Man 佐久間大介が辿る、 ブレゲの聖地巡礼

  • 写真:新村真理
  • スタイリング:渡邊奈央
  • ヘア&メイク:横山雷志郎(Yolken)、御幸 剛
  • 文:柴田 充
  • コーディネート:鈴木桃子
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佐久間大介●1992年、東京都生まれ。アイドルグループSnow Manのメンバー。俳優、声優、ラジオパーソナリティーとしても活躍している。テレビアニメ初主演となる『風を継ぐもの』、映画『ナイトフラワー』、単独初主演を務める映画『スペシャルズ』(2026年公開予定)など、話題作への出演が続く。アニメやゲームにマニアックに精通するほか、腕時計への情熱は専門家も舌を巻くほどだ。11月5日に新アルバム『音故知新』をリリース。

以前からブレゲを愛用しているSnow Manの佐久間大介。今年創業250周年を迎えたブレゲの歴史と軌跡を辿るべく、ブランド発祥の地、フランス・パリへと降り立った。ヴァンドーム広場にあるブティックをはじめ、パリに点在するブレゲの聖地を巡礼し、メゾンの真髄に触れる。

1. ブレゲ ブティック パリ

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やわらかな光に満ちたブレゲ ブティック パリの店内は、壁面の展示を中心に落ち着いた雰囲気があふれる。2階にはミュージアムが併設。


パリ本店で、歴史と名作に触れる

日本の人気アイドルグループ、Snow Manの佐久間大介とスイス時計屈指の名門・ブレゲ。一見無関係な両者だが、実は佐久間は熱烈な時計愛好家であり、ブレゲも複数本を愛用している。メゾン発祥のパリでの聖地巡礼は、まさに念願だったのだ。

まず表敬訪問したのは「ブレゲブティック パリ」だ。"パリの宝石箱"とも呼ばれるヴァンドーム広場に位置し、1933年に時計ブランドで初めてこの地に出店した。その由緒から2階にミュージアムも設け、100本以上の歴史的な名作や創業時からの顧客台帳を所蔵する。創業者のアブラアン-ルイ・ブレゲは、「時計の進化を200年早めた」と言われるほどの天才時計師で、トゥールビヨンや永久カレンダーの発明をはじめ、革新的な機構を次々に生み出した。その精神を体感できる場に、佐久間も目を輝かせる。

「ここを訪れること自体が僕にとってもうステータスです。展示されているアーカイブや新作を見ると、ヘリテージを重んじつつ、革新的な時計づくりを続けるブレゲの哲学を強く感じますね。時計の魅力はロマンにあり、ワクワクする高揚感だと思います。ブレゲは歴史や技術が奥深く、知れば知るほど鳥肌が立つくらい。時計の時間を見ながら歴史を読み解くような感覚で、子どもの頃の冒険みたいに心躍るんです」

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自身が愛用する「クラシック スースクリプション 2025」の原形である懐中時計を発見。思わず笑みがこぼれる。
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右:1950〜60年代に民間用につくられたパイロットウォッチ「タイプ XX」のオリジナル。 左:1780年代に開発された最初の自動巻き機構「ペルペチュエル」。
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厳重に閉じられた書庫には歴代の顧客台帳が保管される。リストにはナポレオンやジョセフィーヌ皇妃の名を発見。
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店内には1850年製の彫金装飾旋盤が動態保存されている。説明を受け、実際にギョーシェ装飾に挑戦する。その繊細さに感動していた。
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錚々たるラグジュアリーブランドが並ぶヴァンドーム広場に、1933年からオープンしたブレゲ ブティック パリ。ジャケット¥2,029,500、ジップニット¥677,600、タートルネックニット¥242,000、パンツ¥128,700/すべてゼニア(ゼニア カスタマーサービス TEL: 03-5114-5300) 腕時計は本人私物

ブレゲ ブティック パリ
住所:6 Pl. Vendôme, 75001 Paris, France
TEL:+33-1-47-03-65-00
営業時間:10時30分〜19時

ブレゲの詳細はこちら

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2. パリ工芸博物館

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パリ工芸博物館には、ブレゲにまつわるものも多く展示される。ブレゲ家は5代目のルイ-シャルル・ブレゲより航空機事業に乗り出す。写真は彼が1911年に製作したR.U1複葉機40号機。


ブレゲ一族の発明を、時を超えて伝える

パリ工芸博物館は1794年に設立され、科学器具や産業機械、通信技術など数千点の発明品を常設展示する。

初代ブレゲの複雑時計をはじめ、発明家として名を馳せた3代目ルイ-クレマンが製作した電信受信機、のちのパイロットウォッチの開発にもつながる5代目ルイ-シャルルの手掛けた航空機なども展示されており、ブレゲ家の発明の系譜を見ることができる。

「展示を見ると、発明精神に驚かされます。一族は時計にとどまらず、発想を広げて社会に還元するとともに、それを再び時計につなげてきたことがわかります」と佐久間も感嘆。

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「R.U1複葉機40号機」は、パリ工芸博物館の順路のクライマックスに展示されている。
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左:ルイ-クレマンが1850年に発明したふたつの信号表示器を備えた電信受信機。当時の最新鋭の通信技術も、どこか置き時計を思わせる。 右:1785年頃の初代ブレゲ作の懐中時計No.92は、ダブルフェイスにミニッツリピーターはじめ、複雑機構を満載。
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パリ工芸博物館
住所:60 rue Réaumur 75003 Paris
TEL:+33-1-53-01-82-63
開館時間10時〜18時(金は21時まで)
休館日:月
www.arts-et-metiers.net

3. ケ・ド・ロルロージュ

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奥に見える建物が初代ブレゲの工房跡地。シャツ¥210,100、パンツ¥161,700、ベルト(参考商品)/すべてエトロ(エトロ ジャパン TEL: 03-3406-2655)


創造性と文化を育んだ、初代ブレゲの工房跡地

初代のブレゲは、1775年にパリ中心部シテ島に工房を構えた。周辺にある司法宮に掲げられた大時計に由来し、ケ・ド・ロルロージュ(大時計河岸)と名付けられた通りの39番地に位置する。

セーヌ川に面し、観光客で賑わうパリを代表する一等地であり、ブレゲのタイムピースに宿る、洗練された文化とラグジュアリーの本質もここから生まれた。現在はギャラリーなどが入居するが、建物の佇まいは当時と変わらない。かつての時計師たちも眺めたであろう河岸からの風景に佐久間も思いを馳せる。

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「ケ・ド・ロルロージュ」の通りの名の由来となった大時計。1371年にシャルル5世によって設置された。

4. エッフェル塔

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ブルゾン¥643,500、Tシャツ¥36,300、パンツ¥146,300、シューズ(参考商品)/すべてエトロ(エトロ ジャパン)


パリ随一のランドマークに刻まれる、ブレゲの名

パリを代表するエッフェル塔は、1889年に開催されたパリ万国博覧会のシンボルモニュメントとして建てられた。

国家の威信を懸け、世界一の高さを実現するため、鉄骨を用いた当時最先端のトラス構造や技術を駆使した建造物であり、その一部にはフランスを代表する科学者や数学者、発明家など72名の名字が刻まれている。そこにはブレゲの名もあり、第一展望台のバルコニー下に見ることができる。

「BREGUET」の名前は、初代ブレゲへの敬意とともに、通信技術を発明した3代目ルイ-クレマンのことを指しているというのが定説だ。

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エッフェル塔の北西、南西、南東、北東の4面に18名ずつ名前が刻まれ、ブレゲの名は北東面の左から8人目にある。

ブレゲの詳細はこちら

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ブレゲCEOと佐久間大介が語り合う、初代とメゾンへの想い

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グレゴリー・キスリング●ブレゲCEO 1976年、スイス生まれ。マイクロエンジニアリングを学び、ジュネーブ経営大学院卒業後、2004年にオメガ入社。製品開発責任者、同担当副社長を経て、昨年、現職に就任。技術への深い造詣と戦略的ビジョンを併せ持つ。
佐久間大介:ジャケット¥309,100、シャツ¥97,900、パンツ¥121,000、チーフ¥24,200/すべてエトロ(エトロ ジャパン☎03-3406-2655) ブーツは私物

聖地巡礼を通して、ブレゲの歴史を体感した佐久間大介。この冒険の終わりに、メゾンのいまと未来を司る、グレゴリー・キスリングCEOと対談をした。

キスリング ブレゲを理解するためにも佐久間さんにはぜひパリに来ていただきたかったのです。理由はまず発祥の地ということ。そしてもうひとつ、当時は発明の時代でパリでは科学者をはじめ多くのアカデミックな交流があり、そのなかで初代ブレゲは革新的技術を生み出した。これがいまもメゾンに息づいています。

佐久間 僕がブレゲに惹かれたのは、時計の歴史を200年早めたという話にロマンを感じたからです。確かにパリに来て、縁のある場所を巡ると、重厚な歴史とともに常に革新を続ける発明家精神があったことがわかりました。

キスリング 初代ブレゲは天才時計師であり、デザイナーであり、ビジネスマンでもあったのです。その象徴が佐久間さんにもご愛用いただいている「クラシック スースクリプション 2025」のオリジナルです。王侯貴族からのオーダーメイドが一般的だった時代に、新興ブルジョワジー向けの予約申し込み制を取り入れ、時計としては当時珍しかった広告を出し、より広くアピールしました。

佐久間 時代を切り開く新しい発想をとても感じます。この時計を見てみんな驚くんですよ。「どうやって見るの?」とか。現代の人にも新鮮さを感じさせるのはすごいことです。「見づらくない?」と聞かれた時には、「いや、僕は1日の時間をゆっくり捉えたいんだ、そうすると心が豊かになるから」って答えるんですよ。

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互いの腕時計を見ながら、時計談義に盛り上がる。メゾンに魅せられたふたりの交友は、これからも続く。
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佐久間は愛用のブレゲ2本をパリに持参した。左:「クラシック トゥールビヨン・メシドール 5335」。佐久間が初めてブレゲを手に入れた記念すべき1本目だ。右:「クラシック スースクリプション 2025」は250周年記念モデルの第一弾。

キスリング 時計の歴史を振り返ってみれば、教会時計から始まり、13世紀にイギリスでつくられた時計は針が1本でした。つまりもともと1本の針というのがすべての時計の起源であり、それに対するオマージュを表現しているのです。それはブレゲらしさであり、時計の象徴でもあるのです。

佐久間 時計は短針と長針が追いかけたり追い抜かれたり、せかせかするイメージもあります。でも1本だったらずっと〝ゴーイングマイウェイ〟でいける。僕が最初に購入したブレゲは「トゥールビヨン・メシドール」。トゥールビヨンはひと目でわかる技術の結晶であり、技術に詳しくなくても魂で惚れられる。そこから好奇心が湧き、知識を掘り下げ、理解が深まっていくのが楽しいですね。

キスリング 1801年6月26日にブレゲはトゥールビヨンの特許を取得し、この日はフランス革命時代の共和暦第9年メシドール(収穫月)7日に当たります。これに敬意を表し、モデル名にしました。ではなぜブレゲはトゥールビヨンと名付けたか。現在では竜巻のような気象現象に解釈されがちですが、18世紀の辞書を調べると天文学の単語であり、惑星と恒星の関係が原義だったのです。

佐久間 確かに「メシドール」のミステリートゥールビヨンは天体の動きをイメージします。これをさらに発展させた新作、ブレゲ初のフライングトゥールビヨンを搭載した「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」は、天空の世界観がより強調されていますね。見た瞬間の第一声はまさに「宇宙だ!」でした(笑)。

キスリング 250周年を迎えるに当たってまず考えたのは「私たちはどこから来て、どこへ向かうのか」。いちばん大切なことは、創始者アブラアン-ルイ・ブレゲがなにをやったのか、どういう気持ちだったのか、それを深く考えることでした。もし彼が2025年に生きていたら、どんな素材で、最新の技術でなにをつくったか。わたしたちはこれを〝レガシーエモーション〟と呼び、その情熱や創造性を将来に向けてつなげていきたいと思っています。

佐久間 長い歴史の中で、ずっと同じ熱量を持ち続けるのは相当難しいことだと思います。新しいものを生むことはできても、それだけでは培ってきたものを軽んじてしまう危険もあります。歴史に立ち戻りつつ、新しい感性や先進技術を注いで前進していくのは、とてもブレゲらしくて、僕もそこが大好きなんです。

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250周年を祝う、珠玉の記念モデル

クラシック トゥールビヨン シデラル 7255

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クラシック トゥールビヨン シデラル 7255/自動巻き、18Kブレゲゴールドケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約50時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、30m防水、世界限定50本。¥31,966,000

トゥールビヨンは初代ブレゲが発明し、1801年に特許を取得した。その偉大な発明に敬意を示し、ブレゲ初のフライング・トゥールビヨンへと昇華。まるで宙に浮いたように見えるミステリー機構、星空の煌めきを思わせるアベンチュリンエナメルダイヤルによって、初代ブレゲとも縁の深かった天文学の世界観を再現する。


マリーン オーラ・ムンディ 5555

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マリーン オーラ・ムンディ 5555/自動巻き、18Kブレゲゴールドケース、ケース径43.9㎜、パワーリザーブ約55時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、100m防水、世界限定50本。¥14,806,000

1815年に初代ブレゲがフランス王国海軍時計師に任命された歴史を継承し、航海と探求の精神を現代に伝える周年モデル。夜の地球を捉えたNASAの航空写真「ブラック・マーブル」にインスパイアされたダイヤルは、ゴールド製ベースとギヨーシェの二層文字盤の上に発光するエナメル画を重ね、都市の灯を浮かび上がらせる。


タイプ XX 2075

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タイプ XX 2075/手巻き、18Kブレゲゴールドケース、ケース径38.3㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、カーフストラップ、5気圧防水、世界限定250本。¥6,402,000

この日、キスリングCEOが着用していたモデル。2023年に発表された「Cal.728」をベースに、毎時3万6000振動のハイビートのフライバッククロノグラフ機構を、そのまま手巻き式に変更した。ケースは新開発のブレゲゴールドを採用し、同色で統一したムーブメントのプレートには、1930年に大西洋横断を成し遂げた「ブレゲXIX」とその飛行経路を彫金。

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ブレゲ

TEL:03-6254-7211
www.breguet.com