【小山薫堂の湯道百選】第八三回“湯は、和の価値の気づきとなる。”

  • 写真:アレックス・ムートン
  • 文:小山薫堂
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〈熊本県熊本市〉
湯屋水禅「浴司」

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JR水前寺駅より、徒歩12分。プライベートサウナ「浴司」、大浴場&サウナ「大湯」、コワーキングエリア「会所」も併設。宿泊者以外に、日帰りの利用も可。

女将がこの風呂に込めた想いを一言で表現するなら「和敬清寂」なのである。和=日本の美を五感で愛でる。敬=互いに尊び礼を尽くす。清=身も心もととのえる。寂=時の流れの美しさを受け入れる。これらに、一期一会の相客に心して接する、という定めを加えて「水禅五則(すいぜんごそく)」と名付けた。

およそ350年前、熊本細川藩の大名庭園として築庭された水前寺成趣園。そのすぐかたわらに佇む「松屋別館」の大浴場を、この春リニューアルして誕生したのがLuxury Sauna & Spa「湯屋水禅」。

「水禅五則」はルールではなく、推奨する心構え。五則を意識しながら湯に浸かれば、日本という国の価値を再発見するきっかけになる、と女将は考えた。そもそも千利休とも縁の深い細川家と縁のある湯主が、日本の文化や心を継承するきっかけをつくりたいと思ったのは、歴史の必然だったのかもしれない。細川家の協力によって持ち込まれた数々の装飾品や美術品が、施設のあちこちにさりげなく展示されている。

さて、熊本はとにかく水がいい。阿蘇の伏流水を地下から汲み上げたミネラルウォーター。これを存分に堪能するため、茶室風のサウナが設けられた。汗を流し、天然のミネラルウォーターと人工ラジウム泉の交互浴を繰り返す。地元の檜を贅沢に使った和の設えによって心に慎みが生まれ、それがひいては心地よさに変わる。

湯道の精神を体現するこの場所に、「湯道温心」という湯道始まりの言葉を揮毫(きごう)したことは言うまでもない。

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永青文庫所蔵、江戸時代のお抱え絵師の書いた『水前寺庭中之図』が、大湯のラウンジに展示されている。

 

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エレベーターを降りてすぐ、家元が揮毫した、かけ軸がある。

湯屋水禅「浴司」

住所:熊本県熊本市中央区水前寺5丁目5-1 松屋別館 2F 
TEL:096-213-1331
料金:¥10,000(120分)~
※貸切・完全予約制 
www.matsuyahonkan.com/suizen

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※この記事はPen 2023年9月号より再編集した記事です。