【小山薫堂の湯道百選】第八一回“湯は、街と人を和(あ)える。”

  • 写真:杉本 圭
  • 文:小山薫堂

Share:

〈大分県別府市〉
竹瓦温泉

1-KS100208.jpg
JR別府駅から徒歩約10分。竹屋根葺き建物が瓦葺きとなったことからこの名になったと伝えられている。

「湯を知り、街を知り、人を知る……」別府八湯(はっとう)温泉道のサイトの冒頭に書かれている言葉である。源泉数・湧出量ともに日本一を誇る別府温泉。日本一の温泉地ということはつまり世界一。奇跡の海上都市と称されるベネツィアと同じくらい、別府は他に類を見ない奇跡の温泉都市なのだ。そんな別府には8つの温泉郷が存在し、その中の約150の温泉施設の中から88湯を巡った湯の求道者には「温泉道名人」の称号が与えられる。それが別府八湯温泉道である。入湯修行は、パスポートならぬスパポートというスタンプ帳に記念印を集めていくスタンプラリー方式で行う。湯を目的に街を巡り、そこで地元の人たちと語らい触れ合う。そこに湯を味わうだけでは終わらない湯を介した幸福感が生まれる。しかも観光客集めだけが目当てではない点が素晴らしい。地元住民も進んでこれに参加し、我が街のことを理解しながら観光客とも交わることこそがこの企画の真骨頂なのである。

竹瓦温泉は、別府八湯温泉道を象徴する施設。開業は明治だが、改築を重ね現在の姿になったのは1938(昭和13)年。荘厳な唐破風(からはふ)造の屋根をもつ登録有形文化財は入湯者の心をときめかせる。一階の脱衣場で服を脱ぎ、階段を降りてアーチ型の湯船に向かう。先客は常連らしき老人と観光の若者たち。少しだけ熱めの湯に浸かっていると、いつの間にか自然と会話が生まれるから不思議だ。

いい湯は街と人、人と人を和(あ)える。ポカポカしたのは身体だけではなかった。

---fadeinPager---

3-KS100229.jpg
男湯と女湯で源泉が違うので泉質も違う。源泉温度は、男湯が約48.8℃、女湯が約48.9℃と高温なので入湯者が水を足して調節。
2-KS3B0284.jpg
砂湯(別料金)は、浴衣を着て砂の上に横たわると、砂かけさんが温めた砂をかけてくれる。

竹瓦温泉

住所:大分県別府市元町16番23号
TEL:0977-23-1585
営業時間:6時30分~22時30分
料金:¥300
休業日:第3水曜日(祝日の場合は翌日)
https://takegawaragroup.jp
※砂湯は別料金

関連記事

※この記事はPen 2023年7月号より再編集した記事です。