「背中を見ろ」だけではない、現代における職人と弟子との関係性

  • 文:印南敦史(作家/書評家)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方』

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井上理津子著 辰巳出版 ¥1,760

職人と弟子と聞いて思い浮かぶのは、「師匠の背中を見て覚える」といった関係性だ。しかし、そこには変化も起きているようだ。まず「一子相伝」だけでなく、血縁以外にも門戸が広がっている。たとえばテレビ番組を見てその仕事に感銘を受けた青年は、刀鍛冶になるべく鍛錬所の門を叩いたという。また、江戸木版画彫師が「私は弟子にコツを口で伝えています。そのほうが早く習得するから」といい切るように、受け入れる側も柔軟だ。旧来的な“常識”とは違っても、伝統の本質は継承されているのだ。

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※この記事はPen 2023年8月号より再編集した記事です。