告発でありレクイエムでもある、注目すべき作家のデビュー短編集

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)

Share:

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『マナートの娘たち』

02.jpg
ディーマ・アルザヤット 著 小竹由美子 訳 東京創元社 ¥2,420

窓から飛び降りる女。表題作はそんな衝撃的なシーンで始まる。交互に語られるのは、アラブ系移民2世の私と波乱の人生を送った叔母の物語。どの短編も独特のアングルで切り取った映画のようだ。語り口の多彩さと言葉の切れ味に惹き込まれる。ゲイであることをカミングアウトしない男性。ハラスメントを受けた女性。マイノリティであるがゆえに受難の生を生きざるを得なかった者たちに寄り添い、告発する。その死は、その過ちは彼らのせいなのか。シリアで生まれ、アメリカで育った著者のデビュー短編集。

関連記事

※この記事はPen 2023年7月号より再編集した記事です。