噴水のように湧き上がる、新宿の新ランドマーク【今月の建築ARCHITECTURE FILE #09】

  • 文:佐藤季代

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透明な水と白い水飛沫の重なりを表現した約225mの超高層タワー。VRを用いて室内や遠方からの見え方を検証しながら設計された。 photo: DAICI ANO

シネシティ広場を中心とする再開発計画が進められていた東京・新宿歌舞伎町。今年4月には、同広場に面する新宿トウキュウミラノ跡地に、「東急歌舞伎町タワー」が完成した。地下5階、地上48階建ての建物内にライブホール、劇場、映画館、宿泊施設などが入る。オフィス機能のないエンターテインメントに特化した、国内最大級の超高層複合施設だ。

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街路樹が囲む開放的な低層部。アルミキャストで制作したアーチ窓の高さや色彩は、かつてあった旧新宿トウキュウミラノから着想している。 photo: Yuko Nagayama & Associates

建築設計は久米設計・東急設計コンサルタントJVが手がけ、外装デザインと内装の一部を、指名コンペで選出された永山祐子が担当している。

かつて沼地で川が流れ、現在も弁財天が祀られている歌舞伎町の歴史を汲み取り、タワー全体で巨大な“噴水”が湧き上がるさまを表現。建物の中~上層部を覆うのは、光を反射させる約4000枚の折半ガラス。屋外側には日本の伝統的な“青海波”文様をモチーフにした277パターンにも及ぶグラフィックがセラミックプリントされている。淡く美しいグラデーションで、エンターテインメントの儚さを象徴するかのような繊細な表情をつくり上げた。

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ホテル「ベルスタートウキョウ、アパンパシフィックホテル」の1階ウェルカムラウンジ。17~47階にはふたつのホテルとレストランが入る。 photo: DAICI ANO
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劇場「シアターミラノ座」のホワイエ。煌びやかな壁面はアルミキャストとパイプで制作した。屋内外ともに照明演出も見どころのひとつ。 photo: DAICI ANO

また低層部は同じ青海波をアレンジしたレースのような透け感のあるアーチ窓が並ぶ。かつてあった新宿トウキュウミラノから発想を得たデザインだ。周辺エリアに開かれ、広場から西武新宿駅へとつなぐアーケードが新たな人の往来を呼び込んでいる。

構想7年を経て完成した新宿の新たなランドマーク。都内屈指の繁華街が、再び賑わいを取り戻し始めている。

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ガラスのパターンは室内からの眺望を遮らないよう数ミリ単位で調整。プログラミングで全277パターンを永山の事務所で内製した。 photo: Tomoyuki Kusunose

東急歌舞伎町タワー

住所:東京都新宿区歌舞伎町1-29-1 
TEL:店舗によって異なる 
開館時間:店舗によって異なる
定休日:不定休
www.tokyu-kabukicho-tower.jp
【設計者】(外装)永山祐子建築設計
代表の永山祐子は、1975年東京都出身。青木淳建築計画事務所勤務を経て2002年に独立。最近の代表作に「2020年ドバイ国際博覧会日本館」など。今回、おもに外装と内装の一部を担当した。

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※この記事はPen 2023年7月号より再編集した記事です。