「他人のテスラを解錠できた」気付かず運転した男性と本来の持ち主、円満解決もお互い動揺

  • 文:青葉やまと
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鍵を掛ける習慣がなかったり、ある程度共通のものが使われていた大昔ならまだしも…(写真はイメージです) jetcityimage-iStock

<取り違えてしまった別のモデル3を解錠し、運転までできたとの事例が報じられている>

自動運転の不具合が相次ぐテスラだが、新たな問題が報告されている。リモートで車両の機能にアクセスする「Tesla アプリ」について、他人のテスラ車を解錠できてしまう不具合が北米で報じられている。

この深刻な不具合を経験したのは、カナダ西岸バンクーバーに住む2人のテスラオーナーだ。互いが所有する似た車両同士が偶然並んで駐車する形になっていたところ、取り違えが発生した。

通常ならば自らが所有する車両しか解錠できないため、ドアを開けることなく間違いに気付くはずだ。しかし、アプリを使って間違った車両のドアの施錠が解除されたほか、誤りに気付かないまま運転して走り去ることができてしまったという。

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フロントガラスに走る見慣れない傷

誤って他人のテスラ車を運転してしまったのは、バンクーバーでコンサルタントとして活動しているラジェッシュ・ランデヴさんだ。自らの不注意とはいえ、こうしたことができてしまった事態に動揺しているようだ。米有力紙のワシントン・ポストは、事の経緯を次のように報じている。

3月7日、いつものように子供を学校に迎えに行くため、ランデヴさんは愛車のテスラ・モデル3を走らせていた。だが、走り出してから15分ほどが経とうという頃、なにかがおかしいと感じ始めた。フロントガラスをよく見ると、付けた覚えのない小さな傷が走っている。

51歳のランデヴさんは、カナダのグローバル・ニュースに対し、妻が傷を付けたのかとも疑ってしまったと語っている。だが、妻にも心当たりはなかった。

傷だけなら場合によると、不注意で知らぬ間に生じていたのかもしれない。だが、センターコンソールに置いてある携帯の充電ケーブルに手を伸ばすと、あるはずのケーブルがそこにない。まるでよく似た別の車両に乗っているかのようだ。

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似通ったモデル3同士の取り違え

そのとき、ランデヴさんの携帯電話に、見知らぬ番号からショートメッセージが届いた。「テスラをお持ちですか?」「たぶん車を間違えていると思います」

本来の持ち主からのメッセージだった。こうしてランデヴさんは初めて、他人のテスラ車を運転していることに気付いたという。振り返れば発車前、ランデヴさんが乗り込んだ白のテスラ・モデル3のほかに、まったく同じ白のモデル3が路肩に並んで駐まっていた。迎えの時間に間に合わせようと急いでいたランデヴさんは、不注意で別の車両に乗り込んでしまったようだと語っている。

本来の持ち主は、テスラをUberドライバーとして使用しているマームード・エシーさんだった。当時車を使っていたのは、マームードさんから車を借りた弟のモハメッドさんだ。モハメッドさんは、駐車したはずの場所に戻ると、車がなくなっていて慌てたという。兄から借りた車が盗まれたと思い、アプリの遠隔ロックを試すが、効かなかったと述べている。

モハメッドさんがあたりを見渡すと、よく似た車両が残されていた。試しにキーカードで解錠を試みると、なぜかドアが開く。こうして車内から電話番号の書かれた書類を発見し、ショートメッセージで無事連絡を取ることができたという。

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笑顔の二人だが、兄は不安を訴える

グローバル・ニュースは、二人は笑顔を交わし、互いに不満がないことを確認した上でそれぞれ元の車両に戻って別れたと報じている。だが、車両の持ち主である兄のマームードさんは、いまも気が気でないようだ。ワシントン・ポスト紙に対し、「もしランデヴさんが事故に遭っていたら、あるいは車に乗り込んだ誰かが犯罪に使っていたら.....」と恐怖を語っている。

米自動車ニュースサイトの「ドライブ」は、大昔であれば車に鍵を掛ける習慣が少なく、鍵もある程度共通のものが使われており、他人の車に乗り込むことはあり得たと説明している。だが同記事はまた、「しかし、高度に洗練されたキーフォブやキーレスエントリーシステムがある現代、このようなことが起こり得るのは驚きだ」とも指摘する。

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他人のテスラ車を運転してしまった男性と間違えられた男性、笑顔で肩組む。Global News-YouTube

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今回の事例は北米の大手メディアや自動車関連サイトで報じられており、ハンドルの落下など不具合が相次ぐテスラの安全性に新たな疑問を投げかけるものだと指摘されている。一方、ランデヴさんはアプリで解錠したと証言しているものの、一部の視聴者や読者は、互いのキーフォブを車内に置き忘れていた場合に施錠されないことは起き得るとも議論している。

テスラは公式に声明を発表していない。ワシントン・ポストとグローバル・ニュースは、テスラにコメントを求めた。だが、広報部門が活動を停止しているテスラからは、メールボックスが一杯なのでメッセージを受け取れないとの自動返信が返ってきただけだったという。

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※この記事はNewsweek 日本版からの転載です。