温泉が、イノベーションを刺激する。城崎の注目デザインスポット5選

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    古くは奈良時代から温泉地として親しまれている城崎温泉。京都、大阪などの関西圏では冬になると松葉ガニを求めて多くの人が訪れることでも有名だ。城崎はまちなかに7つの「外湯」と呼ばれる風呂があり、旅館の内湯でなく外湯に入りに行くという文化があるのも特徴。まち全体をひとつの宿と捉え、そこに泊まる感覚で楽しめる。

    そんな城崎温泉が近年変わりつつある。ワーケーションのためのスポットが誕生したり、老舗旅館がデザイナーを起用し客室をリニューアルしたりと、新たな魅力をつくりだしている。今回はそんな城崎温泉で注目したいデザインスポットを紹介しよう。
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    WORKATION IN TOYOOKA @KIAC

    舞台芸術を中心とした創作活動のための滞在制作を行うアーティスト・イン・レジデンスとして、2014年に開館した「城崎国際アートセンター」。この施設内のエントランスホールに22年4月、テレワーク拠点のスペース「ワーケーション イン トヨオカ アットキアック(WORKATION IN TOYOOKA @KIAC)」が誕生した。

    都内のワーケーションスポットに比べ安いのも魅力。1時間以内なら500円、それ以上は最大1000円で利用可能だ。デザインを担当したのはスキーマ建築計画。イベントなどを行う際にスペースを設けられるよう、机や棚などはすべて可動式になっている。

    城崎国際アートセンターに長期滞在するアーティストは、稽古や制作の合間に城崎温泉街の外湯に入り行くと、いいアイデアが生まれるという。朝湯を楽しんだ後にキアックで仕事をして、午後は観光をする、そんな過ごし方もおすすめだ。

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    椅子はイトーキのバーテブラを導入。オフィス家具のため長時間座っても疲れにくいのが嬉しい。photo: Mitsuyuki Nakajima

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    ちょっとした休憩にも使える半屋外のテラス席。photo: Mitsuyuki Nakajima

     

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    兵庫県立城崎大会議館という宿泊型の会議・研修施設だったものを豊岡市が譲り受け、2014年にリノベーションし現在に至る。世界各国からアーティストが訪れ、作品制作やリサーチを行っている。photo: Mitsuyuki Nakajima

    WORKATION IN TOYOOKA @KIAC

    住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島1062 城崎国際アートセンター内
    TEL:0796-32-3888(受付9~17時)
    営業時間:9~17時
    定休日:火、年末年始 ※祝日の場合は翌日休み
    料金:¥500〜 ※1時間以内は500円、1時間を超える場合は1,000円(最大料金)。個室利用は、+200円×時間
    ※ウェブサイトもしくは電話から要予約
    https://airrsv.net/wit-kiac/calendar
    http://kiac.jp/article/1156

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    こぢんまり

    客室数2室と、城崎温泉で最も客室数が少ない宿「こぢんまり」。設計事務所イマが、ふたつの客室と1階の売店スペースをデザインしている。

    イマが手がけた客室も、ワーケーションを想定して設計されている。本や紙などの資料を広げやすい大きなデスクスペースが設けられているのが嬉しい。寝室とデスクスペースが区切られているため、集中して仕事に取り組めそうだ。 

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    大柳並木に面した部屋。あえて窓の半分を隠し外らの視線を遮っているのも集中力を高めてくれそうだ。出窓の隣にはソファーベンチも。photo: Mitsuyuki Nakajima
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    目の前にある端は辨天橋。城崎温泉のちょうど中心に位置している。

     

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    「お風呂」をコンセプトに設計された1階の売店スペース。風呂桶のカウンターや浴衣のディスプレイされ、中川政七商店がセレクトした商品が並ぶ。

    こぢんまり

    住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島257
    TEL:0796-32-2570
    料金:¥13,750〜(税、サービス料込み、1室2名利用時1名料金)
    www.kojinmari.com

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    三木屋

    創業300年の「三木屋」は、志賀直哉が宿泊したことでも知られる老舗旅館。大正2年、志賀が30歳の時に怪我の養生のため三木屋を訪れ、ここで短編「城の崎にて」を執筆している。その後も気に入り何度か訪れていたそうだ。

    建物は何度か建て替えられており、現在は昭和2年築(一部昭和20年代建築)の木造建築。志賀が宿泊した部屋もほぼ当時のまま残されている。また2013年から、建物の一部を二俣公一 / ケース・リアルによるリニューアルがされている。

    かつて皇族も宿泊したという特別室など、二俣が手がけた客室や貸し切り風呂に注目したい。三木屋の伝統を受け継ぎつつ現代に合うようにデザインされた空間で過ごすと、かつて志賀が三木屋で「城の崎にて」執筆をしたように、新たなアイデアや作品が生まれるかもしれない。

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    三木屋の中で最も広い特別室「22号室」。和室と洋間、各1部屋からなる和洋折衷の客室としてリノベーションしている。

     

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    ロビー横のラウンジスペースにライブラリーあるライブラリー。本のセレクトはブックディレクターの幅允孝によるもの。

     

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    内湯と呼ばれる貸切風呂。外湯とはまた違った魅力を楽しめる。三木屋にはもうひとつ内湯がある。

     

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    国登録有形文化財の宿。

    三木屋

    住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島487
    TEL:0796-32-2031
    料金:¥24,200〜(税、サービス料込み、1室2名利用時1名料金、 朝夕食付)
    https://kinosaki-mikiya.jp

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    小林屋

    2022年にリニューアルした旅館「小林屋」。築約100年という建物を、サポーズデザインオフィスが手がけた。1階のライブラリーには幅允孝によるセレクトされた本が並ぶ。

    創業者、吉右衛門の名を配した客室「吉右衛門スイート」は、大きな窓から城崎らしい大谿川の風景を眺めることができる。この客室も、ワーケーションを想定しデスクスペースが設けられている。

    さらに小林屋には3つの貸切風呂もあり、空いていれば自由に入ることもできる。仕事の途中で休憩がてら風呂に入ったり、ライブラリーの本を読んだりとリフレッシュしながら仕事を進めることができそうだ。

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    「ことば」と出会うをコンセプトに幅がセレクトした本棚が、エントランスにある。

     

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    吉右衛門スイート。左が寝室、右の窓からは大谿川の風景を眺めることができる大空間。

     

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    吉右衛門スイート。デスクスペースとリビング、寝室と空間が分かれている。

     

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    大谿川の護岸に植えられた柳は、六代目の井上吉右衛門が北但大震災後のに植樹したのが始まり。

    小林屋

    住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島369
    TEL:0796-32-2424
    料金:¥88,430〜132,430(税、サービス料込、1室2名利用時1名料金、最上階スイートルーム「吉右衛門」の場合)
    https://kobayashiya.co.jp

     

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    玄武洞公園

    城崎からクルマで10分ほどの場所にある、玄武洞公園。ここも2022年に二俣公一 / ケース・リアルがリニューアルに携わっている。

    国の天然記念物「玄武洞」は、玄武岩の名前の由来になったと言われている場所。江戸時代の文化4年(1807年)に「玄武洞」と命名され、景勝地として愛されてきた。

    二俣は「洞」を鑑賞するためのスペースを中心に、公園全体のリニューアルを計画。この地のランドスケープを生かし、あまり手を加えずにデザインしたという。大迫力の玄武岩の石柱を眺めると、自然が生み出した美しさに圧倒されるはずだ。

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    洞の前にある柵や腰掛けられるスペースを二俣がデザイン。舞台のようなスペースが広がる。photo: Mitsuyuki Nakajima

     

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    六角形の無数の玄武岩が積み上げられている。現在は採掘できないが、採掘が行われていたため「洞」のようになった。photo: Mitsuyuki Nakajima

     

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    サインなどのグラフィックはブートレグが担当。敷地内には玄武洞の成り立ちがわかるパネル展示も行われている。photo: Mitsuyuki Nakajima

    玄武洞公園

    住所:兵庫県豊岡市赤石1347
    TEL:0796-22-4774
    営業時間:9時~17時30分 ※入園は閉園30分前まで
    定休日:12月29日〜翌年の1月3日 ※臨時の休園日あり
    料金:一般¥500
    https://genbudo-park.jp

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    実は羽田空港から城崎温泉の最寄りのコウノトリ但馬空港まで最短で2時間10分。城崎の街全体を楽しむように、ワーケーションを楽しんでみてはいかがだろうか。

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