カルティエからベル&ロスまで、ヘリテージデザインを採用するスクエアケースの銘品3選【Penが薦める腕時計、今月の3本】

  • 写真:渡邉宏基(LATERNE)
  • 文:並木浩一
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1. CARTIER(カルティエ)
サントス デュモン

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手巻き、SSケース、ケースサイズ43.5×31.4㎜、パワーリザーブ約38時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥847,000(予定価格)/カルティエ カスタマー サービスセンター TEL:0120-301-757

20世紀初頭、パリで絶大な人気を誇った飛行家アルベルト・サントス=デュモンのためにルイ・カルティエが創作した、世界初の男性用腕時計の系譜に連なる最新作。1904年に遡るオリジナルのデザインを受け継ぎ、ベゼルやラグの表面に半透明のブラックラッカーを薄く塗り、手作業でポリッシュを施した仕上げが極上のヘリテージ感を醸し出す。

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2. TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
タグ・ホイヤー モナコ スペシャルエディション

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自動巻き、チタンケース(DCL加工)、ケース径39㎜、パワーリザーブ約80時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、100m防水。¥1,039,500/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー TEL:03-5635-7054

1970年代の伝説的なオールブラック仕様の「モナコ」にオマージュを捧げるスペシャルエディション。シックな黒のケースはチタン素材にブラックDLC加工を施したものだ。ダイヤルはブラックサーキュラーのブラッシュド仕上げで、ローズゴールドプレートの針とファセット加工によるアプライドインデックスが映える。

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3. BELL & ROSS(ベル&ロス)
BR 03-92 ヘリテージ

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自動巻き、セラミックケース、ケース径42㎜、パワーリザーブ約40時間、カーフストラップ、100m防水。¥506,000/ベル&ロス 銀座ブティック TEL:03-6264-3989

航空機の計器にインスパイアされたアイコニックなスクエアケースの「BR 03-92」コレクションにラインアップされた、ヘリテージデザイン仕様。マットな色調のブラックセラミックにサンドベージュの夜光インデックスと針が、極上のヴィンテージ感を表現する。白のステッチをアクセントに利かせたストラップは、カーフ革をベースにブランドロゴの焼き印が押された武骨な佇まい。

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スクエアケースは腕時計に特有で、その前の懐中時計の時代にはまず見ることはないデザインだ。針先が描く軌道が円弧であることから合理的なラウンド型は、ジャケットやジレのポケットから出し入れする際にも引っかからず適していた。しかしその常識を、腕時計はあっさりと覆したのだ。

スクエア型は、もはやポケットを居場所としない近代的デバイスの意思表明ともいえるデザインだった。そもそも最初の腕時計は、空を飛ぶ時にポケットから時計を引っ張り出すことを疎んじた冒険家のために創作されたものだ。それは空のパイオニアが、悠長に空を泳ぐ飛行船から、比較もできないほど速く駆ける、発明されたばかりの飛行機に乗り換えた時期に重なる。腕時計の黎明期が始まった、20世紀初頭の物語である。

そうしたヒストリーに想いをめぐらせるのが、ヘリテージデザインを採用するスクエアケースの銘品たちである。世界初の男性用腕時計として誕生し、いまもレガシーとして遺るカルティエの「サントス」には、時代を超えてきたクラシックの強さが宿る。タグ・ホイヤーの「モナコ」は、1969年に世界初の自動巻きクロノグラフを角形で仕上げた歴史的なタイムピースだ。ベル&ロスは航空機のコックピット計器にルーツをもつスクエアケースに、灼けたようなベージュの夜光針とアワーマーカーでヴィンテージ感を漂わせる。

優れたヘリテージデザインには角形が似合うし、逆もまた真なり。それは旧くて新しい、腕時計のセオリーなのである。

並木浩一

1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。

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※この記事はPen 2023年2月号より再編集した記事です。

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