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その服の裏側に流れる文脈を知っているか? スタイリスト・池田尚輝が、ファッションを異なる視点から読み解く

  • 写真:青木和也
  • スタイリング:飯垣祥大
  • 文:行方 淳 (The VOICE)

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ファッション文化が成熟し、ものがあふれる現代において、その服に託されたメッセージや文脈を理解することは、服の真価を判断する上で必要な感覚と言える。表面的なデザインだけでなく、つくり手の意図やモチーフに込められた時代的な背景など、その奥に隠されているストーリーを読み取れば、服を着こなす楽しみはきっと増幅するはずだ。

ドリス ヴァン ノッテンのボンバージャケット

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MA-1といえばアメリカの印象が強いが、実はスキンズのメンバーがユニフォーム的に着用していたなど、ロンドンファッションにおいてもアイコン的なアイテムなのだ。「デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテンはロンドンファッションに精通する人物であることを考えると、これは80年代ロンドンのファッションにインスピレーションを得たものと考えることができる。ならば足元にはドクターマーチンを合わせてみようか……というふうに考えるのも面白そうです」

素材  │ ナイロン
色   │ ネイビー、グリーン
価格  │ ¥170,500
問合せ │ ドリス ヴァン ノッテン TEL:03-6820-8104

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アニエスベーのデニムジャケット

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日本でも80年代に一世を風靡した同ブランド。このアイテムにはそのヒストリーが見て取れる。「かつてフランスで起きた『5月革命』は自由を求める学生運動に端を発するのですが、アニエスベーを手がけていたアニエス・トゥルブレもその運動に参加。そこでユニフォーム的に着用していたのがデニムの服だったそう」。アニエスベーにとってもデニムがアイコニックなものだというのは意外と知られていない事実だ。自由を象徴するデニムをフレンチ目線で楽しみたい。

素材  │ コットン
色   │ インディゴ
価格  │ ¥47,300
問合せ │ アニエスベー TEL:03-4355-0110

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コム デ ギャルソン・シャツのパッチワークシャツ

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1981年にパリコレクションに参加し、世界に衝撃を与えたコム デ ギャルソン。既成概念を壊し、新潮流を生み出したブランドだ。このシャツはチェックの生地を裏に当て、一部を切り抜くことで数字を表現したもの。「東京がファッション都市として認識されているのはコム デ ギャルソンに由来するところが大きい。メイド・イン・フランスのこのシャツは、僕の中で象徴的な存在。ブランド設立当時から貫く哲学を濃く感じる服に、改めて注目したい」

素材  │ コットン、ウール
色   │ ブルー、レッド
価格  │ ¥107,800
問合せ │ コム デ ギャルソン TEL:03-3486-7611

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サカイとショットのライダースジャケット

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前身頃がキルティングで袖がレザーのジャケットに、レザーのベストを重ねたレイヤードデザインのライダースジャケット。「ショットはアメリカで1969年に公開された映画『イージーライダー』で着用されたことでも有名になったアイテム。当時の自由を求める姿勢や不良性に、レイヤードで遊び心を添えたり、裾からキルティングをのぞかせたりしてモダナイズ。そんな手法であえていまリバイバルさせるところにサカイのボキャブラリーの豊富さを感じます」

素材  │ レザー
色   │ ブラック
価格  │ ¥297,000
問合せ │ サカイ TEL:03-6418-5977

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ファッションはいま、成熟期を迎えていると言っていい。素材や縫製、パターンにおいて、多くの服が一定のクオリティを超え、手頃な値段で買えるようにもなった。表面的なデザインや品質という視点で言えば、必要十分なものばかり。しかしファッションの価値は本来、それだけではないはず。飽和状態にも見える現代において、改めて新鮮な気持ちでファッションを楽しむためには、デザインの文脈を読む力が必要だ。

「ぼんやりとデザインを眺めているだけでは理解できない、ものの本質的な面白さ。それをキャッチするだけでもっと楽しくなるはずです」と語るのは、ファッションの歴史や背景に詳しいスタイリストの池田尚輝。今回着目したのは、80年代にひもづくアイテムだ。

「Y2Kとか90年代トレンドというワードをよく目にしますが、探っていくとその源流は80年代にあることが多いように感じます。80年代はさまざまなカルチャーが誕生した黎明期。読者の中にも、その時代にファッションの原体験を得た人は多いのではないでしょうか。ファッションの文脈を理解するとしても、うんちく親父になれ、というわけではありません。ただ、背景にある“ストーリー”が見えたほうがファッションは楽しいし、着こなす時のヒントにもなる。この視点が秋冬のもの選びの一助になればと思います」

池田尚輝

スタイリスト。1977年、長野県生まれ。ファッション誌をはじめ幅広いフィールドで活躍。近年は、伝説のブランド、アダム・キメルにフォーカスした「アダム・キメルとNYの美学展」や「Stylist’s stylist Ray Petri と ‘80年代 ロンドンのファッションエディトリアル展」など、ファッションを深掘りするイベントも主催する。

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※この記事はPen 2022年11月号「最旬アイテムを厳選 2022年秋冬名品図鑑」より再編集した記事です。

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池田尚輝

ファッションスタイリスト

Penでも度々スタイリングを手がけ、メンズファッションを主軸に幅広い分野をカバーしながら2000年よりフリーランスで活動を続けるスタイリスト。'05-'06はNYCに滞在し見聞を拡げた。ファッションに限らず、アート、工芸、建築も大好き。アウトドアとDIYにも足を突っ込む。

池田尚輝

ファッションスタイリスト

Penでも度々スタイリングを手がけ、メンズファッションを主軸に幅広い分野をカバーしながら2000年よりフリーランスで活動を続けるスタイリスト。'05-'06はNYCに滞在し見聞を拡げた。ファッションに限らず、アート、工芸、建築も大好き。アウトドアとDIYにも足を突っ込む。