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【試乗レポート】新型レンジローバーをナパ・バレーで試乗、 その走りが表現する新しい世界とは?

  • 文:大谷達也
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サンフランシスコの郊外を流れるように走るレンジローバー。ジャガー・ランドローバーのジェリー・マクガバン率いるデザインチームが描いた車体はきわめてシンプルで、モーターショーのコンセプトモデルのようだ。

SUVの頂点に君臨するレンジローバーの新型が、いよいよ日本に上陸した。ひと足先にアメリカで試乗したモータージャーナリストの大谷達也が報告する。

初代の誕生から51年を数えた2021年、5世代目のレンジローバーが発表された。ひと世代当たり約10年というサイクルで進化し、育まれてきたレンジローバー。つまり新型は今後10年間の未来を見据えて開発されたモデルだ。

今回、「MLAフレックス」と呼ばれるまったく新しい基本骨格(アーキテクチャー)が誕生。エンジンモデルやマイルドハイブリッドに加え、プラグインハイブリッドやEVまで対応できるのは、このアーキテクチャーによるものだといって間違いない。

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かつてはイギリスの貴族が所有する広大な農園を回った後、タキシードに着替えてそのままパーティ会場に乗りつける際に使われたというレンジローバー。カリフォルニアの牧場でも優れたオフロード性能を体感できた。

アメリカ・カリフォルニア州のナパバレーで試乗した直列6気筒3ℓディーゼルにマイルドハイブリッドを組み合わせた「D350MHEV」でもアーキテクチャーの効果は表れていて、先代に比べて車内が格段に静かになった上に、走りの精度がケタ違いに進化していた。いままでは柔らかな乗り心地を確保するがために足まわりのコンプライアンスが大きめで、この影響で微妙な進路調整がやや苦手なように感じられたが、新型はステアリングを握る手のわずかな動きにも正確に反応。それこそ針の穴に糸を通すかのごとく、精度の高い操縦が可能だ。乗り心地もこれに合わせて引き締まったが、荒れた印象を一切与えないあたりは、元祖ラグジュアリーSUVの矜持でもある。

直6ディーゼルは静かでなめらかなだけでなく回転上昇が素早く、スポーツ派にも歓迎されるはずだ。日本に導入される「D300」にも期待したい。

新型レンジローバーは、モダンラグジュアリーなライフスタイルを見据えてデザインされたという。国際試乗会のプログラムには、ナパバレーの「ボンド」というワイナリー訪問も組み込まれていた。最高峰の畑で育てたブドウだけで醸造する“グラン・クリュ”の定義を突き詰め、日当たりや土壌の違いを味で表現する彼らのワインは、細部にまでこだわるレンジローバーにも通ずる。

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左:ボンドでは、5つの畑から手作業で収穫されたブドウを醸造。畑の違いによって「メルバリー」「クエラ」「セントエデン」「ベシーナ」「プルリバス」の5つのラインアップでリリース。 右:カベルネ・ソーヴィニヨンは適切なエージングによって最高の味となる。その違いを体験。 

Range Rover HSE D350 MHEV SWB(レンジローバーHSE D350 MHEV SWB)

●サイズ(全長×全幅×全高):5052×2047×1870mm
●排気量:2997cc
●エンジン:直列6気筒ディーゼルターボ MHEV
●最高出力:350HP/4000rpm
●最大トルク:700Nm/1500-3000rpm
●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
※日本未導入モデル

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シャットライン(ボディパネルのつなぎ目)を極力減らす処理で美しいプロポーションを際立たせた新型レンジローバー。写真はゴールドにペイントされたV型8気筒のガソリンエンジン車。
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左:ロングホイールベースの5シーターのリアシート。座席が大きくリクライニングするほか、オットマンに加え、左右独立したモニターも装備可能。 右:モダンラグジュアリーを体現したコックピットは水平な直線を基調としたシンプルなもの。細部にまでこだわったデザインと最上級の素材がラグジュアリーな世界観を醸し出す。

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試乗会の会場には最上級グレード「SV」も展示されていた。今後、このモデルではオーナーの好みに合わせて、デザインのディテールや素材を選択して特別な1台に仕上げるビスポークプログラムを導入予定。写真は「SVセレニティ」。

国際試乗会でハンドルを握ったもう1台は「P530」というV型8気筒4.4ℓガソリンエンジンを搭載したモデル。乗り味は先代に似て鷹揚かつ快適だが、はるかにシャキッとした操縦性になり、運転する喜びを満喫できる。エンジンは力強いだけでなく官能的とさえ呼びたくなるなめらかさも実現している。

「SV」と呼ばれる最高峰グレードには、「イントレピッド」と「セレニティ」というつのデザインテーマが用意されている。さらにビスポーク(パーソナライゼーション)プログラムを導入予定なので、好みに応じた一台を創造することが可能だ。新型レンジローバーは乗り味だけでなく、室内空間からもモダンラグジュアリーの極みを体験できる。

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左:ボディカラーは標準色に加えてSVビスポークサンプル照合カラーを用意。さらにビスポークプログラムを用いれば、実質的にどんなカラーにもペイントが可能。 右:レンジローバーSVでは工芸品を思わせる仕上げのウッドや白いセラミックノブなども選択可能。個性的なインテリアを創造できる。

Range Rover FIRST EDITION P530 LWB(レンジローバー・ファーストエディションSV P530LWB)

●サイズ(全長×全幅×全高):5265×2005×1870mm
●排気量:4394cc
●エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
●最高出力:530PS/5500-6000rpm
●最大トルク:750Nm/1850-4600rpm
●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
●車両価格:¥23,400,000〜
●ランドローバーコール 70120-18-5568
www.landrover.co.jp

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※この記事はPen 2022年9月号「レンジローバーで走れ!」特集より再編集した記事です。
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