独自の乗り味がさらに進化した贅沢な英国製SUV、レンジローバーを堪能

  • 文:小川フミオ

Share:

  • Line
カリフォルニアで試乗した4.4リッターV型8気筒ガソリンの「P530」

新型レンジローバーに北米で試乗した。日本では2022年1月に受注開始されて以来、贅沢なSUVを好む層から熱い注目を集めている第5世代のレンジローバー。ジャーナリスト向け試乗会の場所は、カリフォルニア州ナパバレーだった。

RR_SV_INTREPID_RYEW_001のコピー.jpg
「INTREPID イントレピッド」というダイナミックさを追求した仕様

モダンラグジュアリーと謳われる新型レンジローバーと、超高価なワインをつくる人と、新進気鋭とが混在し、伝統と革新のなかで常に動いているナパバレーとは、どこかでイメージが重なる気がする。

北米、なかでも太平洋岸のカリフォルニア周辺が大きなマーケットのレンジローバー。沿岸部、山岳路、ナパのワイン畑、ソノマのヒールズバーグという小さいけれど洒落た町のレストラン前、サンフランシスコ市内のラグジュアリーホテルのクルマ寄せ……いろいろなシチュエーションで観察した実車は事前に画像などで見た印象より、はるかに審美性が高い。

もうひとつ、ナパバレーでドライブしてよかったのは、レンジローバーでのドライブに適したコース。ゆるやかなワインディングロードもフリーウェイもあり、4月下旬の陽光を浴びたブドウ畑のなかの道はまことに気分をよくしてくれるのだった。

RR_22MY_FE_P530_SWB_01_ON-ROAD_07042022のコピー.jpg
あたりのソフトな乗り心地と、トルクたっぷりの動力性能がキャラクター

新型レンジローバーは(例によって)バリエーションが豊富だ。ホイールベースは「スタンダード」と「ロング」。座席は4人乗り、5人乗り、それに3列の7人乗り(今回新設定)がある。そしてエンジンは、プラグインハイブリッド、V型8気筒ガソリン、マイルドハイブリッド仕様の6気筒ディーゼルなどと豊富だ。

私が運転したのは、4.4リッターV型8気筒ガソリンの「P530」と、3リッター6気筒ディーゼル「MHEV D300」。ロングホイールベースの「P530 LWB」は後席を楽しませてもらった。日本では、おおざっぱにいうと、この3モデルが中心だ。

ディーゼル「MHEV D300」は、トリムレベルが「SE」「HSE」「AUTOBIOGRAPHY」でホイールベースは標準のみ。いっぽう「P530」は、標準ホイールベースとロングホイールベースの2種類から選べ、トリムレベルはともにぜいたくな「SV」の選択も可能。発表以降、全世界で想定を大幅に上回るオーダーが集中しており、現在はバックオーダーの軽減のために、モデルは5つにしぼられるという。

感心させられたのは、2つのポイントだ。ひとつは、パワフルでありつつ、ややソフトな独特の乗り心地。これはレンジローバーが50年以上培ってきた独特のテイストで病みつきになる。もうひとつは、上質なインテリア。標準ホイールベースでも2997ミリ、ロングホイールベースにいたっては3197ミリもある。それだけに室内空間には余裕があり、その空間の仕上げかたが、他に類のないものなのだ。

RR_22MY_FE_P530_SWB_04_INTERIOR_07042022のコピー.jpeg
モニター位置を下に下げるなどしてクリーンな印象を創りだしたコクピット

レンジローバーを気に入っている人は、先刻ご承知だと思うが、素材の組合せ、色づかい、それに装備の選び方などは、このクルマならではの世界観で構築されている。

ラグジュアリーなものもあれば、スポーティなものもある。かつ、サステイナブルを意識したノンレザー素材も用意されている。家具にも使われる「ウルトラファブリックス」の湿式ポリウレタンレザー と、「クヴァドラ」のプレミアムウールブレンドテキスタイルといった先進的なシート地も選べる。こちらもいい雰囲気だ。

RR_22MY_FE_P530_SWB_06_INTERIOR_07042022のコピー.jpeg
「シグネチャースイート」のリアエグゼクティブクラスシートはフル電動で、かつアームレストにもヒーターがそなわるなど快適装備は至れり尽くせり

さらに、4人乗り仕様では、2名分の後席シートが完全に独立式。「シグネチャースイート」なる仕様では、コントローラーでシートバックが最大40度までリクラインする。

サンフランシスコ空港で日本から訪れた私(たち)をピックアップしてくれたのがSVモデルのロングホイールベースモデルだったので、市内までの30分の移動を快適な姿勢で過ごすことができた。

ほとんどの装備が電動化されているのも驚きで、バックレストを寝かせると足を載せるオットマンが電動で出てくるし、ボタン操作で折り畳み式の後席用テーブルが展開するのは一見の価値すらある。

ほとんどの操作に力を必要としないのだ。これがぜいたくなクルマの価値なのだと再認識させられる。

RR_22MY_FE_P530_SWB_05_STATIC_07042022のコピー.jpg
突起物をほとんどなくしたエクステリアは斬新だがひと目でレンジローバーとわかる

先に2つのポイントで感心させられたとしたが、もうひとつ大事なことを忘れていた。デザインだ。ひと目でレンジローバーとわかる要素がちりばめられつつ、突起物がほとんどない、リダクション(削ぎ落とし)というデザインテーマはじつに斬新。

ピラーをブラックアウトしたフローティングルーフというデザインをはじめ、後ろで上下も左右もぎゅっとしぼったようなリアスタイル、アクセントとして目をひくフロントドアのサイドベント、それにグリルとヘッドランプなど、どれも新しいデザインだ。

RR_SV_SERENITY_RYEW_019のコピー.jpg
車体色と、ルーフ色とドアに設けられたサイドベントと色の組合せで個性がでる

事前に画像で見るかぎり、あまりにもなめらかすぎて、ちょっとやりすぎでは、と思っていたものの、実車はかなりいい。ボディと4つの車輪の関係であるプロポーションにおいて均整がとれている。デザインを統括するチーフ・クリエイティブ・オフィサーのジェリー・マクガバン氏も「そこはおおいにこだわったポイント」と、試乗会で教えてくれた。

「かつて自動車の業界で、デザイナーの仕事は、フラワーアレンジメントなんて言われたこともありました。エンジニアがつくったプロダクトを見栄えよくするのが仕事だと。でもレンジローバーはちがいます。まず、デザインコンセプトがあり、そのあと、各部署が共同で、理想のプロダクトづくりに取り組んだのです」

全長が異なる、スタンダードホイールベースとロングホイールベースともに、見た目の印象がほとんど変わらない。これがデザイナーのこだわりだったそうだ。いっぽうで技術陣からすると、求められる技術的要件が異なるため、デザイナーの要求は厳しかったそうだ。

「このこだわりこそがレンジローバーなんだ、ということで合意したのでチーム全員が、必死になって納得いくプロダクトを完成させようと取り組みましたよ」

ランドローバー社のブランド・ディレクター、デイビッド・スティール氏は、(多少の苦笑いを交えつつ)そう語っている。先進技術が盛り込まれているが「それをあからさまに見せたくない」というマクガバン氏の要望も、マーケティングチームにはキツいものだったかもしれない。しかし共通の目標をしっかり見据えて、完成にもちこんだのだ。

RR_GMD_BOND_10_270422のコピー.jpg
ボンド・ワイナリー前に並んだ試乗車は壮観

私たちがいたのは、Bond Winery(ボンド・ワイナリー)というカルトワイナリーのゲストハウス。2階から眺めると、ボンドを特徴づけているカベルネソービニヨンのブドウ畑を背景に、なめらかなボディを輝かせているレンジローバーの試乗車が、何台も駐車されているのが目に入った。

ハーランエステートのオーナーが、最善のワインを求めてつくったボンド・ワイナリー。こだわりというキーワードで、レンジローバーとボンドを結びつけることができるかもしれない。以前からの”らしさ”を継承しつつ、新しいものを生み出してきたレンジローバー。ランチの場所としてこのワイナリーをレンジローバーが選択した理由は、こだわりという点で共通の価値観を提示したかったからかなと私は思った。

RR_GMD_BOND_20_270422のコピー.jpg
Bond Wineryは5つの単一畑(エチケットが色分けされている)で育てるカベルネソービニヨンだけに特化したカルトワイン

最大で23インチ径、実寸にして内径約580ミリもの大径タイヤを履きながら、狭い場所や小さなカーブでの取り回し性を向上させるために後輪操舵機構も組み込む。競合車と同等の装備はすべてそなえ、かつその上をいこうというレンジローバーの開発陣の努力は大変だったろう。

走りは、そのおかげで、印象的だ。先にもちょっと触れたとおり、レンジローバーのキャラクターがちゃんと引き継がれている。先代を知っている人なら、すぐに、それがわかるだろう。

やや大きめの径をもつステアリングホイールと、比較的ロールを許す足まわりのセッティング。慣れないまま速度を上げてカーブを走り抜けようとしたときは、やや不安を覚えないでもないけれど、すぐに慣れる。そして、ふわりと車体が動くような乗り心地が気持ちよくなる。

エアサスペンションに、電子制御でロールをコントロールするアンチロールバーも組み合わされている。なので、その気になれば、スポーティな走りを特徴とする競合SUVなみの走りも可能だったろう。レンジローバーの開発陣は個性を守ることを選んだようだ。

RR_22MY_HSE_D350_SWB_14_ON-ROAD_07042022のコピー.jpg
フリーウェイでの走行は、快適で安逸。豊かな乗り味でやみつきになる

4.4リッターV8エンジン(最高出力390kW/530ps、最大トルク750Nm)でも、3リッター直列6気筒ディーゼル(221kW/300ps、650Nm)でも、共通するのは、ふわりとした独自の乗り味と、トルクがたっぷりあって走らせやすい操縦性なのだ。

V8エンジンの「P530」は、トルクのかたまりとでも表現したくなるぐらい力強い加速が味わえる。日本でもレンジローバーはV8、というファンが少なからずいるというのもわかる。最大トルクが1800rpmから発生するので、アクセルペダルはあまり踏み込まなくても、ほとんどの場面で満足いく走りが体験できた。

3リッター直6ディーゼルの「D300」は、マイルドハイブリッドシステムを採用。ごく低速域からも扱いやすい。アクセルペダル足を載せるだけで、余裕あるサイズのクルマが軽々と動く感じだ。

しかも、カーブではすっと鼻先が内側に向いていくような、フットワークの軽快さも印象的だった。ディーゼルエンジンは、カラカラ音も感じないし、上の回転域まですっと回る印象で扱いやすいのだ。

RR_22MY_FE_P530_SWB_06_OFFROAD_07042022のコピー.jpg
後輪ステアもそなえているのでオフロードの小さなカーブもラクにこなす

日本で展開されるパワートレイン別ラインアップは下記を予定(すべて税込)。現在バックオーダー軽減のための受注制限がかかっているモデルもあるようだ。

PHEV(ガソリン3.0リッター 直列6気筒+モーター440ps)1761万円~
PHEV(ガソリン3.0リッター 直列6気筒+モーター510ps)1890万円~ 
ディーゼル MHEV D300(3.0リッター 直列6気筒300ps)1687万円~
ガソリン V8 P530(4.4リッター V型8気筒 530ps)1885万円~

新型レンジローバー SV P530 LWB(ロングホイールベース)

サイズ(全長×全幅×全高):5258x2209x1870㎜
排気量:4395cc
エンジン:V型8気筒ターボ
最高出力:390kW(530ps)/5500〜6000rpm
最大トルク:750Nm/1800〜4600rpm
車両価格:¥28,580,000~(税込)
問い合わせ先/ランドローバーコール
TEL:0120-18-5568
www.landrover.co.jp

※寸法はすべて欧州仕様値です。

新型レンジローバー SE D300 MHEV SWB(ショートホイールベース)

サイズ(全長×全幅×全高):5052x2209x1870㎜
排気量:2997cc
エンジン:直列6気筒ディーゼルターボ
最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
最大トルク:650Nm/1500〜2500rpm
車両価格:¥16,870,000~(税込)
問い合わせ先/ランドローバーコール
TEL:0120-18-5568
www.landrover.co.jp

※寸法はすべて欧州仕様値です。

Hot Keywords