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5世代続く最上級SUV「レンジローバー」、革新の歴史を振り返る

  • イラスト:小林達也(miltata.)
  • 文:サトータケシ
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オフロード車と高級サルーンを融合するという、画期的なコンセプトで登場して半世紀以上が経つレンジローバー。いつの時代も最上級SUVとして君臨してきた、5代にわたる歴史を振り返る。

7月28日に発売されるPen9月号「レンジローバーで走れ!」から一部を抜粋して紹介する。

1970年 Range Rover 1st

誰もが認める、ラグジュアリーSUVのオリジン

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初代レンジローバー

1970年に発表された初代レンジローバーは2ドアだった。ボディが長くなると悪路で“亀の子状態”に陥ることから、ランドローバー(現在のディフェンダー)にしろジープにしろ、オフロード性能を高める当時のクルマは、短いボディの2ドアが主流だったのだ。ロードローバーやコンセプト・オイスターと呼ばれたプロトタイプ(下)も2ドアで設計されていた。

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開発者であるチャールズ・スペン・キングが唱えた「ランドローバーの悪路走破性能と、ローバーの快適性を融合する」という斬新なコンセプトが支持され、一躍人気者となった。

当初は自社製の6気筒エンジンを搭載する予定だったものの、開発陣は大柄なボディには力不足と判断。米国GMから製造権を買い取った3.5lのV型8気筒エンジンを搭載した。4段マニュアルトランスミッションとの組み合わせで、最高速度は155km/hを誇った。

フルタイム4WDシステムや4輪ディスクブレーキなど、当時の最新技術を採用、ストロークの長いサスペンションは快適な乗り心地を提供した。71年には「工業デザインの模範的作品」としてルーヴル美術館に展示された。

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1995年 CLASSIC Range Rover

たぐいまれなる個性で、高級車市場とパリダカを席巻

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クラシック・レンジローバー

4ドアモデルの登場は1980年代に入るまで待たなければならなかった。
興味深いのは、4ドアモデルを導入した経緯だ。

スイスの高級車ディーラーでスペシャルモデルの製造も行っていた「モンテヴェルディ」という企業は、76年のジュネーブモーターショーでサファリという4ドアの高級SUVを発表した。クライスラー製V型8気筒エンジンを積んだサファリは好評で、モンテヴェルディの主力モデルとなる。諸説はあるが、レンジローバーの4ドアモデルも、サファリが好評を博しているという情報を受けて、開発が加速したとされる。

こうして81年に4ドアモデルが加わると、レンジローバーは基本的なスタイルを維持しながら、90年代までの長きにわたって進化を続けることになる。基本的にはより快適に、より贅沢になる方向に進んだが、パリ・ダカールラリーの4輪車部門で2度の優勝を飾ることで、過酷な環境でのタフさもアピールしている。

94年に2代目レンジローバーが発表されたが、初代の生産終了を惜しむ熱烈なファンの声に応えて、96年まで「クラシック・レンジローバー」の名で生産が続いた。

History of CLASSIC Range Rover

1970年 初代レンジローバー登場
1981年 4ドアモデルを追加する
1982年 4段MT仕様に加えて、3段AT仕様が設定される
1984年 高級仕様のヴォーグを設定
1985年 ATが3段から4段に進化、エンジンを電子燃料噴射式に変更
1993年 日本専用豪華仕様のヴァンデンプラの導入
1994年 2代目レンジローバーを発表
1996年 初代モデルの生産終了

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1994年 Range Rover 2nd(P38A)

初代から正常進化した、角目が特徴の第2世代

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2代目レンジローバー(P38A)

四半世紀近い長寿モデルだった初代に続いて登場した2代目の通称セカンドレンジ。はしご型フレームを用いた構造やサスペンション形式、フルタイム4駆システム、そしてV型8気筒エンジンなど、基本的なメカニズムは初代モデルから踏襲している。

一方で2ドアがなくなり、4ドアに一本化。マニュアルトランスミッションも廃止されてオートマチックのみになるなど、より高級化路線を強め2002年まで生産された。

History of Range Rover 2nd

1994年 2代目レンジローバーが発表される/ローバー社がBMWに買収される
1999年 マイナーチェンジ
2000年 30周年記念モデルを発表
2002年 日本専用のロイヤルエディションを発表

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2002年 Range Rover 3rd(L322)

波乱の時代に登場した、マニア注目の第3世代

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3代目レンジローバー(L322)

自動車会社の合従連衡という大きな波に揉まれたのが3代目。当初は1994年に親会社となったBMWが開発を主導したが、2000年にランドローバーはフォード傘下となり、フォードが3代目の開発を引き継いだ。結果、3代目レンジローバーの前期型モデルはBMW製エンジンを搭載するので、いまでも「BMWエンジンの第3世代」を探すマニアが多い。フレーム構造からモノコック構造へ変更したことも大改革だった。

History of Range Rover 3rd

2000年 親会社がBMWからフォードに
2002年 フルモデルチェンジを受け3代目へ移行
2005年 ジャガー製エンジンへの変更を発表
2011年 オートバイオグラフィ アルティメット エディション追加

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2012年 Range Rover 4th(L405)

電動化の先鞭をつけた、新素材で武装した4代目

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4代目レンジローバー(L405)

2012年に登場した4代目の大きな話題は、SUVとして世界で初めてオールアルミニウムのモノコックボディを採用したこと。これにより従来型比で約4割、400kg以上のダイエットに成功、運動性能や燃費性能が劇的に向上した。

デビュー50周年のタイミングではアニバーサリーモデルが世界限定1970台で生産された。この数字はデビューした1970年にちなんで。プラグインハイブリッドが加わったのも4代目の後期型からだ。

History of Range Rover 4th

2012年 フルモデルチェンジで4代目へ移行
2017年 初のプラグインハイブリッド車(PHEV)を設定
2019年 マイルドハイブリッド仕様を追加
2020年 レンジローバー50周年記念モデルを発表

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2022年 New Range Rover 5th(L460)

未来を見据えた変身で、レンジローバーは新時代へ

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新型レンジローバー(L460)

5代目となる新型レンジローバーは、「MLAフレックス」と呼ばれる新しい基本骨格を採用した。この骨格は電動化と自動運転を見据えたもので、PHEVとマイルドハイブリッド車が設定されるほか、2024年には初となるバッテリーEVが登場する予定。

標準仕様と、ロングホイールベース仕様をラインアップ。後者には後席2人乗りの豪華仕様と、レンジローバー初となる乗車定員7名の3列シート仕様が設定される。

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※この記事はPen 2022年9月号「レンジローバーで走れ!」特集より再編集した記事です。
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