プレミアムSUVというジャンルを開拓した、イギリスの「レンジローバー」がフルモデルチェンジ。2021年10月に本国で発表され、エレガントでかつ力強く、かつ個性ゆたかなスタイリングをもつ。日本では今年1月にお披露目され、またたく間に大きな話題に。
レンジローバーは初代が1970年に登場。英国版ジープともいえるランドローバーは高い機能で愛されたのに対して、優美さを感じさせるスタイリングと、快適性がちゃんと盛り込まれた室内など、他に類のないキャラクターを確立。いまにいたるまで、世界で最もぜいたくなSUVといえるポジションは揺らいでいない。
第5世代となる新型レンジローバーのデザインを統括したのは、ジャガー・ランドローバーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるジェリー・マクガバン氏。
「私たちはモダニズムのデザイン哲学を持っており、ファッションやトレンドを追いかけることはしません。余計なディテールを排除することで、モダンさを表現しながらも魅力に溢れ、新しいレベルで感情的に訴えかけるクルマが完成しました」
レンジローバー発表にあたってのプレスリリース(メディア向けの解説文)には、上記のようなマクガバン氏の言葉が紹介されている。
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新型レンジローバーは、貴金属のアクセサリーのように、ボディにほとんど凹凸をもたないことが印象的。ボディ外板はパネルとパネルのつなぎ目にほぼ段差はなく、自動車用語でいうと、徹底したフラッシュサーフェス化を実現している。
「ひとつの塊を削りだしたような洗練された外観」こそが、レンジローバーの真骨頂。点灯するまでその存在に気づかないリアコンビネーションランプなど、フラッシュサーフェス化は驚くほど。
「世界で最も目の肥えたお客様に世界で最も魅力的なラグジュアリーカーを提供するクリエイターになることを目指すという、当社のビジョンを見事に体現しています」
これは、ジャガー・ランドローバーの最高経営責任者(CEO)である、ティエリー・ボロレ氏の言。
息をのむようなモダンさと優雅な美しさ、洗練されたテクノロジー、シームレスなコネクティビティ、それに7人乗りのパッケージが、メーカーが掲げる新型の特長だ。
「私たちはモダニズムのデザイン哲学をもっており、ファッションやトレンドを追いかけることはしません。余計なディテールを排除することで、モダンさを表現しながらも魅力に溢れ、新しいレベルで感情的に訴えかけるクルマが完成しました」
そう語るマクガバン氏は、いくつもの自動車メーカーでめざましい実績を残してきた経歴をもつ。2004年にランドローバーでアドバンストデザイン(プロトタイプを含めた先進的なデザインを手がけるスタジオ)のディレクターとして就任。
ポジションは上がり続け、やがてランドローバーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したのち、2020年からはジャガーとともに、グループ全体のデザインを統括する立場に。同時に、アートの分野で世界最高峰のロンドンRCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)で教鞭もとって後進の育成にも熱心だ。
マクガバン氏は、ロンドンのサビルローにある老舗テイラー、ヘンリー・プール(Henry Poole & Co.)のスーツを着こなし、建築やインテリアなど、クルマ以外の工業デザインの造詣も深い。ゆえに、新しいレンジローバーのデザインを語る際、氏の言葉は一語ずつ重みを感じさせる。
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東京での発表会では、「LEADERS' TALK 挑戦の足跡、その先へ」のタイトルの下、デザインオフィス「nendo」を率いる佐藤オオキ氏が動画で登場。「すごくシンプル、すごく洗練されているというのが印象的」と感想を語った。
シンプルなデザインがいちばん難しい、とする佐藤オオキ氏。インテリア、プロダクト、グラフィックと多方面で活躍をするデザイナーだけあって、その感想には説得力が感じられる。
新型レンジローバーは、環境適合性が強く求められる世界にあって、環境負荷の低いクルマであるべく、まったく新しく「MLA-Flex」という、パワートレイン縦置きを前提としたプラットフォーム(車両の土台)を採用。
パワートレインは高効率なマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドを含む3種類。ボディタイプは標準ホイールベースとロングホイールベース。パッケージは贅沢な4 人乗り、一般的な5 人乗り、大人数での移動を可能にする7 人乗りから選べる。
さらに、2024年には、実航続距離80キロのフルEV仕様も予定されているという。「2039 年までに排出ガス実質ゼロの達成の目標に貢献します」とは同社のプレスリリース内の文言だ。
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快適な乗り心地と、高い悪路走破性を両立させるために、電子制御サスペンションを採用しての「インテグレーテッド・シャシーコントロール」を搭載。後輪操舵の「オールホイールステアリング」は、低速域では車体の取り回しをしやすくし、高速道路などではさらに走行安定性を増す技術である。
インテリアの居心地のよさは、レンジローバーが伝統的にもち続けている価値だ。アレルゲン低減とウイルス除去のためのデュアル「ナノイーX」テクノロジーを搭載した「空気清浄システムプロ」や、ヘッドレストに「アクティブノイズキャンセレーション」を搭載。走行中も最も静粛な室内環境を提供するとしている。
「他に類を見ないデザイン、顧客の将来のラグジュアリーニーズに対する並外れた理解、感性に訴えかけるブランド価値、英国の精神」というのが、前出のボロレCEOによる今後の目標。
レンジローバーで具現化された特徴の数々を、カスタマーエクスペリエンスや、ジャガーとともにEV化を図る新しいビジネススキームを、「REIMAGINE(リ・イマジン)」戦略と呼ぶ。
「かつてないほどに独自性を強化し際立たせる」ことをめざしたREIMAGINE戦略で、レンジローバーがさらに新しい地平を目指して進んでいくのをみるのは、クルマ好きの楽しみになりそうだ。
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ランドローバー(レンジローバーは厳密にはランドローバーが手がけるモデル)の「スペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)」が手がける「ラグジュアリ ーとパーソナライゼーションを極めたモデル」(広報資料)として、「レンジローバーSV」なるラインが新設されたのも、今回の特徴のひとつ。
「SVセレニティ」はラグジュアリーさを強調したモデル。ボディ各所に「コリンズブロンズ」のアクセントを配し、ロングホイールベース仕様では「極上の室内空間を提供」とする4人乗りの「SVシグニチャースイートをオプション設定している。
「SVイントレピッド」は個性的でダイナミックさを表現したとされる。外観上は各所のグラファイトアトラスとアンスラサイト仕上げのアクセントが目を惹く。
新型レンジローバーの価格は、ベーシックモデル「D300 SE」標準ホイールベースモデルの1638万円からスタート。標準ホイールベースの頂点は、590馬力(390kW)のV8エンジン搭載「SV P530」の2493万円だ。ロングホイールベースは「P440E SE」の1764万円から、「SV P530」の2775万円までとなる。
現状では、3リッター直列6気筒INGENIUMターボチャージド・ディーゼル・エンジン(D300)、3リッター直列6気筒INGENIUMガソリン・エンジンと105kWの電動モーターを組み合わせたプライグイン・ハイブリッド(PHEV)(P440e、P510e)、4.4リッターV型8気筒ツインスクロールターボチャージド・ガソリン・エンジン(P530)の布陣のなかから選べる。