毎年繰り返される「今年“も”猛暑」というフレーズ。うんざりしつつもつい口をついて出てしまう毎日。
暑すぎる夏に、涼し気な色をまとうことで乗り切る方法もある。しかし逆に原色、まさに「夏色」の中に飛び込むのも愉快で爽快かもしれない―― そう思わせてくれるビビットカラーのインスタレーションがドイツ・ベルリンにお目見えし、欧州アート界で話題だ。
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エストレル・ベルリン（ホテル）の前に常設展示として作られたこのパビリオン「Filtered Rays（漏れそそぐ光）」を制作したのはイギリス・ロンドンを拠点に活躍するアーティスト＆デザイナーのインカ・イロリ。
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鮮やかな色を巧みに使い、視覚的効果を最大限に発揮した作品を次々に発表している。現在、気鋭のクリエイターとして大注目されている。
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イロリの作品は、色と大胆なデザインのコラボが特徴だ。ユニークな幾何学模様や格子縞等のパターンに、彼にしか選べない絶妙な色を差し込こんでいる。
斬新なのに、どこかレトロ。ハッとするのに、どこかなごむ。一目見て「これはイロリの作品」「彼にしか作れない」と言わしめる独自の表現を作り出し、その世界観に多くの人が魅了されている。
これまでイロリが発表してきた作品の一部（主に近作）を下記に紹介。陽気で香ばしい彼のデザインを見ているだけで、暑気払いとなり「夏を思いっきり満喫したい！」という気持になれそうだ。
〇アフリカンプリントX椅子のアップサイクル
イロリの原点ともいうべき椅子のアップサイクル。イギリスのカフェ等でよく見かける中古の椅子をペイントし、アフリカンプリントのファブリックでシートの布張りを変えてアップサイクルしている。
両親がナイジェリア出身であり、アフリカンプリントのファブリックは彼のルーツを表現するアイテムのひとつ。この作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館の永久収蔵品（パーマネントコレクション）に選ばれた。
〇「Forest of Eyes」（2022年）
LG協賛のもと、「ロンドン・クラフトウィーク」中にコンランショップで展示されたインスタレーション。各ウィンドウには目の形をした木箱の中にLG社の「OLED evo TV」スクリーンが設置され、花の開花にインスパイアされたパターンが写しだされている。色鮮やかなグラデーションとフォルムが道行く人の足を止めた作品。
〇「Listening to Joy」（2021～2022年）
V&Aダンディ（ビクトリア＆アルバート博物館のスコットランドにある分館）のコミッションワークとして展示された、カラフルでインタラクティブな「遊びの空間」。色鮮やかな模様、音楽、色彩を用い、誰もが楽しめる場所を作り上げた。ジッパー式メッシュの壁は、開閉可能な迷路のようになっており、空間の構造を変化させることも可能。2つの円形の木琴を使って、音作りの実験もできる。
〇「The Blue Rider café at Superblue」（2021年）
マイアミにあるミュージアム「Superblue」のカフェを、イロリのデザインで万華鏡のようなワンダーワールドに変化。ナイジェリアにインスパイアされた壁のデザインに、ポップな色の柱や家具をコントラスト。よく見ると複雑なパターンだが、一目見て「楽しい！」と引き込まれるのがイロリの魔法だ。
〇「Bring London Together」（2021年）
2021年のロンドン・デザイン・フェスティバルとロンドン市の「Let’s Do London」スキームがタッグを組み、ロンドン中心部にある18カ所の横断歩道がイロリ・カラーのデザインに変化した大好評プロジェクト。コロナ規制の緩和が進んでいた時期でもあり、ブライトカラーの横断歩道は、人々に「ロンドンに“再び”活気がよみがえる」象徴として受け止められた。
〇「Launderette of Dreams」（2021年）
レゴ社のコミッションワーク。ロンドン中心部からやや東、ベスナルグリーン地区にあるコインランドリーをレゴブロックを使って子供たちのプレイゾーンに作り替えた。大胆な模様の壁や床、絶妙の色使いのブロックがあしらわれた家具や洗濯機により、ごく普通のコインランドリーが「夢の場所」に。このインスタレーションにレゴブロックは何と20万個使われた。
〇通販で買える小物も多い
イロリは衣料品や生活雑貨もデザインしており、検索すると日本からも手軽に購入できる商品も多い。こんなランチョンマットがあると、夏の食卓が楽しくなりそうだ。
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近作を紹介するだけでも枚挙にいとまがない、今もっとも旬なアーティストと言えるイロリ。今後ますます目が離せない存在だ。
次ページ：インカ・イロリの作品が見られる動画はこちらから。
「Forest of Eyes」のTVスクリーンに映し出されたアニメーション↑。グラデーションの妙が映える、キッチュなデザイン。可愛くてずっと見てしまう。
「Listening to Joy」↑で遊ぶ子供たち。何とも楽しそう！
「Launderette of Dreams」を紹介したLego社のYoutubeチャンネル↑。子供たちの楽しそうな笑顔が印象的だ。