任天堂、建築、料理の三本柱で織りなす話題のホテル「丸福樓」で、唯一無二の滞在を。

  • 文:小長谷奈都子

Share:

  • Line
デコラティブな装飾に風格漂う正面エントランス。

2022年4月にオープンした丸福樓は、いま京都で最も注目度の高いホテルのひとつ。その魅力は、1930年築の旧任天堂本社社屋をリノベーションし、館内のそこここで任天堂の歴史を感じられること。歴史ある建物に新築棟を融合させた安藤忠雄建築を楽しめること。そして、人気料理家・細川亜衣さんの料理がオールインクルーシブで一日中いただけること。運営するのは、国内外でその地域の特性を活かしたホテルやレストランを展開するPlan・Do・Seeだ。

場所は、鴨川と高瀬川に挟まれ、かつて「五条楽園」と呼ばれた花街として賑わったエリア。正面通から北に向かって3棟の既存棟が連なり、その間に新たに増築した新築棟が融合している。アールデコ調の既存棟を設計したのは増岡熊三と田中義光で、今回その既存棟の修復と新築棟の設計監修のすべてを安藤忠雄氏が手がけた。

marufukuro_exterior_all.jpeg
写真左から、事務所棟、新築棟、住居棟、倉庫棟と連なる。

---fadeinPager---

marufukuro_interior_2.jpg
4棟は、任天堂の前進である「丸福」の主力商品、トランプにちなんで、スペード棟、ダイヤ棟、ハート棟、クローバー棟と呼ばれる。

---fadeinPager---

風格漂うエントランスの鉄扉を開けると、市松模様の大理石の壁やタイル貼りの床、受付カウンターなど当時の意匠をそのまま残した空間に、歴史の積み重ねをひしひしと感じられる。チェックインは、元応接室だったというラウンジで。実際にここで使われていたという艷やかな革張りのイスに座って、シャンパンや京都のクラフトビール、ジュースなどから好きなドリンクをいただきながらの手続きとなる。

marufukuro_interior.jpg
当時の意匠を残した大理石やタイルがレトロ。鷺のオブジェは造形作家の玉田多紀による、改修時に出てきた大正時代の壁紙を再利用した作品。

---fadeinPager---

marufukuro_lounge.jpg
応接室として使われていた部屋がラウンジに。一角にディスプレイされているレゴで造った丸福樓の模型は必見。

---fadeinPager---

泊まった部屋は、それぞれ趣きの異なる18室の中でも人気が高いという「ジャパニーズスイート」。創業家である山内家が暮らしていた住居棟にあり、洋室のベッドルームに、唯一和室と露天風呂を備えた客室だ。和室には木彫りの欄間や床の間などが大切に残され、旅館のようにほっとくつろげる。洋室と和室をつなぐ吹き抜けの間に備えられた浴槽は、ゆったりした大きさ。灯籠を飾った小さな庭付きで開放感があり、何度も湯浴みしたくなるほどだ。

japanesesuite.jpeg
和室と洋室をつなぐ吹き抜け空間に露天風呂を設置した「ジャパニーズスイート」。床の間に飾られているのは寒川義雄の作品。

---fadeinPager---

Marufukuro suite.jpeg
広々したルーフトップテラス付きの「丸福樓スイート」は既存棟と新築棟の両方を楽しめる唯一の部屋。館内に多用されている深緑は山内夫人が愛した色とも、花札の裏からとった色とも言われる。

---fadeinPager---

residential_suite.jpg
ミニキッチンやランドリーを備えた「レジデンシャルスイート」。安藤建築の特徴であるコンクリートの壁には、安藤氏のサインが書かれている。

---fadeinPager---

夕食と朝食は、倉庫棟に位置するレストラン「carta.」へ。熊本を拠点に活動する料理家、細川亜衣さんが料理のみならず、店名から内装、照明、器などすべてのプロデュースを手がけ、彼女の世界観が詰まった空間となっている。この日の夕食のメニューは、レバーペースト、カルパッチョ、クリームコロッケ、ビーフシチューなど。白いエプロンドレスに身を包んだスタッフが、一皿一皿運んでくれる料理は、吟味した旬の食材を丁寧に調理した、カラダが喜ぶやさしい味わい。シンプルな調理のなかにも発酵調味料やスパイスのアクセントが効いていて、驚きや楽しさがある。ドリンクメニューは料理に寄り添うような国産のナチュラルワインを中心としたラインナップ。オールインクルーシブのため、少しずついろんな種類を試したい、というリクエストにも快く対応してもらえるのが嬉しい。

marufukuro_restaurant.jpg
レストラン「carta.」へは一度ホテルを出て専用の入口から入る。福岡のガラス作家、横山秀樹の照明が空間を優しく照らす。

---fadeinPager---

Marufukuro dinner.jpeg
コースで提供されるディナーの一例。熊本の赤牛のもも肉を柔らかく煮込んだビーフシチューに、大分の姫人参のローストを添えて。ビーフシチューの器は細川護光の作。メニューは2か月ごとに一新される。

---fadeinPager---

朝のレストランは東に面した窓からたっぷり光が入り、また格別な気持ちよさ。朝食はおにぎりやお味噌汁、青菜のごま和えなどの和食と、小豆スープ、ハムサンド、チーズ卵などの洋食から選べる。さらにアラカルトで、発酵させたイーストを使ったふわふわのパンケーキ、旬のフルーツとヨーグルトソースのオープンフルーツサンドなども。コーヒーは出町柳にあるオオヤコーヒー焙煎所のもので、すっきりとした後味の朝用ブレンドは清々しい朝食の仕上げにぴったりだ。

marufukuro_breakfast.jpeg
朝食の洋食コース。小豆のスープ、ハムサンド、チーズ卵、グリーンサラダ、厚切りバタートースト、甘酒果実ヨーグルト。気に入った料理はお代わり可能。

---fadeinPager---

朝食後、すぐ近くの鴨川へ散歩に行くと、鷺が舞い降りたり飛び立ったりする様子や水遊びをする鴨の眺めに心が和む。ホテルに戻ったら館内散策を。任天堂創業者・山内家がプロデュースし、山内家の解釈による任天堂の歴史や創業の理念を表現した空間「ライブラリー dNa」を訪れたり、グラフィカルなステンドグラスやレトロなエレベーター、壁に残された分電盤など、当時の意匠をあちこち発見するのも面白い。

marufukuro_library.jpg
「ライブラリーdNA」には美術作家の小坂学がケント紙で制作した初代ファミリーコンピュータやライゾマティクスによる花札をモチーフにした映像作品なども。

---fadeinPager---

marufukuro_interior_4.jpg
倉庫棟には貨物運搬用の旧式のエレベーターや分電盤がレトロな雰囲気を醸し出す。

---fadeinPager---

marufukuro_interior_3.jpg
任天堂の前身で、かるたやトランプ、花札を製造販売していた丸福の金天狗 花札を額装。任天堂の来歴を感じさせる演出がそこここに。

---fadeinPager---

チェックアウトは12時だが、太っ腹なことにチェックアウト後もラウンジでカレーライス、シーフードパスタグラタンといったランチをいただける。夜にはお茶漬けやうどんといった夜食、そして常にフライドポテトやチーズの盛り合わせなどの軽食が用意され、ドリンクもシャンパンやビール、コーヒー、お茶などが揃う。それらをゲストはラウンジやテラス、客室でと思い思いに楽しむことができるのだ。「好きな時に、好きなように、好きなだけ」とHPにあるように、自宅のようにくつろげるのがなによりの贅沢といえる。レストランには個室があるし、スタッフがみな親切なので、小さな子ども連れでも快適に過ごせそうだ。

任天堂の歴史やDNAを感じながら、伝統建築とスタイリッシュな建築の融合に身を浸し、カラダに優しい料理で元気になる。他のホテルでは味わえない豊かな時間がここにはある。

marufukuro_lounge_food.jpg
ランチメニューの一例、ほろほろの熊本の赤牛を贅沢に使ったビーフカレー。ドリンクメニューには京都醸造のクラフトビールなども。

---fadeinPager---

dininglounge_2.jpeg
ラウンジではお茶やランチ、夜食などをいただける。手前のスペースには安藤忠雄氏の設計図や、安藤氏が注目する若手アーティストの作品を展示。

---fadeinPager---

0079.jpg
歴史を感じさせる看板がいまも外壁に残る。ルームキーはこちらを模したもの。

丸福樓 Marufukuro

京都府京都市下京区正面通加茂川西入ル鍵屋町342
tel: 075-353-3355
全18室
料金:¥100,000〜
※1室2名利用時の1室料金(朝食・夕食・飲物・軽食、サービス料、宿泊税込)
¥70,000〜
※1室2名利用時の1室料金(朝食・飲物・軽食、サービス料、宿泊税込)
https://marufukuro.com

レストラン「Carta.」が毎月数日限定で宿泊客以外の外来予約の受付を開始、
毎月15日にインスタグラムで翌月の解放日を告知。

Hot Keywords